月明かり
日が落ち、空は月光に照らされていた。
閉まる30分ほど前の食堂、宏斗は1人食事をしていた。
「1人で食べてて寂しくないの?」
背後からリリサが話しかけてきた。
宏斗は振り返り顔を見ると、すぐに正面に向き直った。
「そっちこそ、こんな時間に1人で大丈夫か?」
「ふふふ、私も宏斗君と同じ。ずっと補講を受けてたの。となりいい?」
「別に。」
リリサは宏斗の隣に座る。
「1人で飯食ってるやつのことみて馬鹿にしに来たのか?」
「そんなことないよ。私だって、みんなと時間が合わないときは1人で食べるときあるよ。それより、背中が寂しそうだったから…。」
「別に寂しくなんかないよ。俺はただ、周りに合わせて生きるのが苦手なだけだ。」
「へー、じゃあ私と一緒だね。」
宏斗は目だけでリリサを見る。
頬杖を突き、月明かりを反射した彼女の群青色の瞳に心を奪われた。
その瞳の中にある月は、まるで蒼穹に浮かぶ太陽のようである。
気づけば宏斗は彼女にくぎ付けになっていた。
リリサは宏斗を見る。
宏斗は目が合い、思わず顔を背ける。
「何見てたの?」
見惚れてしまっていた気恥ずかしさで、それ以上リリサの顔を見ることができない。
「大丈夫?すごく耳赤いけど。」
宏斗は深呼吸し、気を落ち着かせた。
「いや別に。」
宏斗は食事を続ける。
「さっきから別にしか言ってないけど、本当に大丈夫?」
「気にしないでくれ。少し疲れてるだけだ。」
宏斗は平静を装うのに必死で、そっけない態度をとってしまう。
先ほどのリリサの顔が頭から離れない。
「そういえば、宏斗君はお祭りどうするの?」
「お祭り?」
「ほらこの大学、1年に2回ルーフェス祭っていうお祭りがあるじゃない。」
「…?」
「あれ知らない?結構有名な祭りだから知ってると思ってたんだけど。」
「祭りにはあんまり興味ないからな。それに、人込みは苦手だから。」
「そっかぁ。でも、一回だけでもいいから参加してみたら?結構楽しめるかもよ?」
「お前は?」
「私はもう誘われちゃったから。けど、2日目なら空いてるよ。」
「…誘ってるのか?」
「どうでしょう。」
「わかった。行ってみる。」
「よかった。」
「よかった?何がよかったんだ?」
「これで宏斗君が寂しくなくて済むから。」
宏斗はまた心臓が高鳴った。
その夜、宏斗はあまり眠れなかった。
ルーフェス祭 ハルクヴァール魔法大学のもう1人の創設者ルーフェスの名前を冠する祭り。彼女の死後、ダガールによって彼女の誕生日と命日に行うように取り仕切られている。




