運命
世界の融合が止まってからも、世界は混乱を極めた。
国連の本部は、崩壊に巻き込まれずに済んだが、世界の要人たちはすぐに、その困難に直面した。
いったい何が起きたのか、これからどうしていくか、話はまとまらず、お互いの不安のぶつけ合いとなっていた。
そんな時、議会の扉が勢いよく開いた。議長が何事だと声を張り上げると、警備員に囲まれながら、大柄な男が入ってきた。
「話をしようと言っているのに、こんな待遇を受けるとは。随分と追い詰められているようだな。」
「何者だ。」
言い知れぬ緊張感が、議会に広がる。
「私の名はダガール。ハルクヴァール魔法大学学長である。」
魔法という言葉を聞いた瞬間、その場は言葉を失った。
「魔法だと、こんな緊急事態に何をふざけたことを言っている?」
議長の疑問にダガールは、冷静に答える。
「理解できないのも無理はない。我々も混乱している。だからこうして、あなたたちと話し合いに来た。」
「ふざけるな!」
怒号とともに、発砲音が鳴り響いた。
焦りと不安からか、警備員の1人が、ダガールに向けて売ってしまったのだ。
「血迷ってしまうのも無理はない。しかし、この場は利己的に動いていいところではない。」
そういうと、その警備員から手も使わず、銃を奪うと、目の前で粉々に破壊して見せた。
それを見て、その警備員は失神してしまった。
「これで少しはわかったかだろう。そう悠々と話し合っている暇はないんだ。」
国連は、ダガールとの話し合いの末、魔法に関する理解と、その共有を約束した。
とあるビルの屋上、ダガールは復興に歩みだした街を見下ろしていた。
そこに1人の男が現れた。
「イギか、そちらは無事だったか?」
「ええ、日ごろから防御魔法の授業をしていた甲斐がありましたよ。」
「そうか、お前にはわかるんだろ、これをやったやつを。」
「…はい。しかし、いまだその素性はつかめていません。やはり、ハファイルさんを殺した者と同じだとは思いますが…。」
そう語るイギの顔は、怒りに満ちていた。
「イギよ、お前の怒りはわかる。お前の家族を殺したのも、そいつだということも。しかし、何の前触れもなく、いきなり世界を壊され、家族や友人をも奪われたのは、お前だけじゃない。私だってそうだ。」
イギはゆっくりと息を吐き、気持ちを落ち着かせた。
「わかってます。今は、そんな余裕がないことは。だから、奴は、俺が殺します。」
落ち着いたとはいえ、そのさっきは抑えられていない彼に、ダガールは告げる。
「宗一の血を頼ろう。世界に適応した彼の血なら、どうにかなるやもしれん。」
「まさか、確かに彼は魔法界においては例外的な存在ですが、彼の家族までもそのような可能性は考えられません。」
「わかっている。だが、手荒な手段だがお前にならそれができると私は思う。彼はこちらの世界に子供を残していたといっていた。ならば、その子孫は生きている可能性がある。」
「成功したとしても、世界が変わるとは思えません。」
「だとしてもだ。何もせずに、ただやみくもに突っ込んでいくだけでは無駄死にだ。お前にしか頼めない。頼むイギよ。」
イギは、深くため息をついた。
「わかりました。精一杯やってみます。」
そういうと、彼は去っていった。
ダガール 本名ダガール・ディボ・マルヘズ・セゴーテル。2000年前、魔法大学を創設、魔法に関する知識を広めた人物。
ハルクヴァール魔法大学 現ロシア南部に位置する。世界に5つある魔法大学のうちの1つ。攻撃・防御・回復の三転魔法のほか、結界魔法や構築魔法、防御魔法なども学ぶことができる総合魔法学科がある。
イギ 本名イギ・ハヴァール。防御魔法を専門とする、リストエイリッヒ魔法大学の学長。深紅の瞳を持つ。
宗一 本名 御阪宗一正蔵。700年前、融合前の世界から転移してきた日本人。世界に適応し、圧倒的な力で、70歳ほどになるまで生きた。




