学び
ゾラはあの後、別の場所へ移動し、宏斗は一人大学に帰った。
「次はどこに行けば?」
「いや、次はここでお前に必要なことを学んでもらう。」
「必要なこと?」
「今回、あなたの授業を担当します。クールド・リズ・ヴァ欄です。気軽にリズ先生って呼んでね。」
宏斗は冷めた顔でリズを見る。
「こ、こほん。えー今回は、回復魔法について教えていきます。宏斗君もご存じの通り、魔法にはいくつか種類があります。特に、私たちの世界では攻撃防御回復の3つを主に使用し、ほかには結界、構築など様々も使われています。本来は、防御魔法から教えていくのだけれど、あなたは従5位まで使用できるということなので、今回は回復魔法に重点を置いて教えていきます。」
回復魔法には10~1回までの階級に分けられ、1回になると失われた部位(臓器や四肢など)を治すことができる。
イーダルトヴァッス魔法大学において、それらすべてを習得できるように教育課程が敷かれている。
ハルクヴァール魔法大学では、3回までの回復魔法を習得でき、実践的な活用ができるようになる。
しかし、回復魔法にはかなり資質が求められ、それがない者は7回までしか使えない。
そのほか、結界魔法の使用時に応用でき、結界内で常時回復し続けることができるようになる。
「まずは、あなたの資質を図るため、階級を少しずつ上げていきます。最初は『クラスト』をやってみよう。これは10回の魔法で、出血のないかすり傷程度のけがを治すことができます。ここに、人を模した人形があります。性質はかなり人に近いので、けがの度合いを限りなく本物に近づけて再現できます。」
リズは人形に傷をつける。
「ここにやってみて。」
『クラスト』
言われたとおりにやってみると、人形に着いた傷はきれいに消えた。
「先生、これぐらいの魔法なら、自分でも使ったことありますよ。」
「まあまあ、待ちたまえよ。こういうのは段階を踏まなきゃ、可能性を失ってしまう。何事も、一つずつ進めていくのがカギよ。」
「6回までは順調にできたわね。でもここからよ。資質があるといっても、ここらへんで行き詰まる人が多い。」
宏斗は、扉から誰かがのぞき込んでいることに気付いた。
「…?学長?どうされたんですか?」
ダガールが中に入ってくる。
「いやすまない。少し気になったのでな。」
「何か問題でも?」
「いや、…回復魔法か、私も昔習得しようとして、行き詰まったことがあった。」
「学長が…?」
「この大学を創る前、いくつか魔法を習得できる場所があった。私はあるものと競い合いながらそこに通い、魔法を習得していた。回復魔法はそのうちの一つ、神医塾と呼ばれる場所で教わった。だが、私にはその素質がなかった。5回以降を習得できず、彼女との勝負に後れを取った。」
「彼女?…もしかし、北門にある像の女性ですか?」
「そうだ、彼女は私よりも魔法の素質が高く、唯一勝てたのは攻撃魔法だけだった。」
「その方は、大学創設時のもう1人の学長だとお聞きしていましたが…。」
「ああそうだ、しかし、病気には勝てなかったらしい。早くに亡くなってしまった。私は彼女の意向をくんで、こうして魔法を教えている。亡くなった者たちの意思を告げるのは、今を生きる私たちだけだ、宏斗、お前には荷が重いかもしれない。だが、お前の父はお前を守るためにわが身を捨て戦った。お前も愛する者のために、戦えるようにならなければならない。わかってくれるな。」
「はい。」
北門の像 ダガールの幼馴染で、彼とともにハルクヴァール魔法大学を創設したが、70歳余りで病気により亡くなった。眼帯をしているが、ハヴァールのような特殊な目であったわけではない。




