家族、友情、仲間
「よお、ずいぶん顔色悪いな。」
見上げると、オルトルが空に浮いている。
「この状況ならそうなるのも仕方ないか。」
ヴァームラスはダスタールに向け攻撃を仕掛ける。
「フォルターナ!」
ダスタールの目の前で、強烈な雪煙が立つ。
そこには、ヴァームラスの腕を抑える巨人の姿があった。
「な、なんで…。」
「男がくよくよすんなよ。」
「抑えてろー!」
オルトルは大槌を手元に呼び戻すと、からだを大きくそらし構える。
「俺たちが長く生きてこられたのは運もあるが、それだけじゃあ魔法のない時代は生き残れなかった。ただ長生きしてるわけじゃないんだよ!」
大槌をふるうと、ヴァームラスの半身が吹き飛んだ。
ダスタールは大量の血しぶきを浴びて、その場にへたり込んだ。
その目の前に、オルトルが降り立つ。
「大丈夫か?腰、抜かしたみたいだが…。」
ダスタールは何も言えず、ただうつむいたまま口を閉ざしていた。
「俺も、若かった頃はよく怖いことから逃げていた。魔法なんてなかったから、火を起こすのも水を飲むのも、自分たちでやらないといけなかった。虐げられたことを俺は恨んじゃいない。母が同じだったように、俺はお前らを恨んだことは一度もない。みんな初めてのことには怯えるもんだ。俺ですら、イヂゴ大戦の時は怖くて何もできなかったんだ。それに比べれば、さっきあったことは小さなことかもしれない。生まれて初めてで臆することがないなんて、悪魔じゃないんだから。お前もまだまだこれからだ。失ったものばかりに目をやってると、新しいことが得れなくなる。生きてりゃ間違うことなんていくらでもある。問題はそれをどう活かすかだ。」
オルトルは右手を差し出す。
「血のつながりがなくても、信じられなくても、俺はお前たちの味方だ。」
ダスタールはオルトルの手を握り、立ち上がる。
「すまない、不甲斐ない私のせいで。」
「気にすんな。」
「ところで、あの悪魔はどこに行ったのかしら?」
取り残された宏斗とゾラは、2人の強さに感嘆していた。
「魔法なしであんな強さなんて…。」
「私じゃ手も足も出ないわね。」
話している間に、背後に迫る影に2人は気づいていなかった。
「危ない!」
ゾラは反射的にそれに気づくと、とっさに宏斗を庇う。
「はあ…、はあ…、うっ…。」
宏斗が気づいたころには、ゾラは左目から大量に出血していた。
「お、おい。」
「くそが、邪魔すんじゃねえ!!」
引き返してきた悪魔が、再び宏斗を襲おうと仕掛ける。
瞬間、巨大な魔力の揺らぎと殺意が全身に走る。
両者の間に雪煙が立ち込める。
悪魔は空を見上げる。
そこには、怒りの形相で睨むシューイチの姿がある。
「くそっ、またかよ。」
悪魔は姿を消した。
「大丈夫か?」
「俺は…、でもこいつが。」
宏斗はゾラの顔をシューイチに見せる。
すると、シューイチは傷口に手を当て魔法を唱える。
『テルファルスレイ』
ゾラの左目は眼球まで治った。
(1回の回復魔法!?シューイチさんはこんなことまで…。)
「見えるか?」
「あれ?私左目をえぐられたんじゃ。」
「俺が魔法で治した。ところで、オルトルはどこにいる?」
フォルターナ 本名ボースアル・フォルターナ・ディ・ヴァランタナ。オルトルの妻。イヂゴ大戦を生き延びた巨人。正確には人間と巨人の間に生まれた子。体長6メートル。




