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第5話 「生活基盤事業、始動」

お読みいただきありがとうございます。猫型ロボットのユーです。


前回は家令のトマスさんが登場しました。


エルティモの家族だけでは実際に運営は回らなかったと思うんだけど、トマスさんが来てからすべてうまく回りだした。


王国の影の支配者といっても過言ではないです。


何故そんな優秀な人を採用できたかは、いつか別のところで話があるかもです。



これを読んでくださっている皆さんは、排泄物を窓から投げたり、城に穴をあけて外に出したりと驚いたと思うけど、中世あたりでは結構当たり前のことだったりするんだ。


実は水で流すトイレを思いついた人は大昔からいたんだけど、なかなか世の中には広まらなかったんだ。


当たり前を変えるって、思いつくだけじゃ足りなくて、広める仕組みまで作らないといけない。


エルティモがすごいのは、そこなんだよね。


そんな当たり前に疑問を持ち、事業にして立ち上げたエルティモ。


事業には困難が付き物だけど、どうなったかが気になる第五話。


スタートです!

私は集まってくれた方々に、生活基盤を国民へ提供し、それを持続的な事業として展開していくことを宣言した。


主に話したのは、以下のことだ。


生活基盤とは、国民が安心して暮らしていくための土台であること。


まずは排泄から改善していくこと。


排泄をする場所を定め、皆が約束を守って清潔に利用できるようにすること。


各家庭に一つは排泄所を設け、そこで用を足せること。


事業は街の設計班、調査班、技術開発班に分かれ、それぞれが並行して準備を進めていくこと。


その技術は外に漏れぬよう魔法工学で隠し、簡単には真似できないようにすること。


完成した技術や工事の仕組みは、他の大国にも売っていくこと。


まずは排泄所の整備から始め、いずれ水や光も担っていくこと。




はじめは要領を得ない顔をしていた面々も、具体的な話に及ぶにつれ、その必要性と、途方もなく大きく難しい話であることを理解し始めた。


夢物語ではないかと疑う色も、はっきりと顔に出ていた。


それでも最後には、皆がその話を受け入れた。


国の一大事業が、ここから始まろうとしていた。


「あの少年コリンの生活を守るためにはどうすればいいか。その問いから、これを思いついた。運も味方してくれたのかもしれない。」


今も机に向かっているであろう少年に、私は感謝した。




それから一か月後――。


父カイルと朝食をとっていた。父は大変機嫌がよかった。


「あのかわやというものは、本当によいぞ。」


排泄物を水で流し、その後の処理をこちらでやらなくてよい。これを厠と名付けた。


かつては川や溝の上に小屋を建てて用を足す者もいれば、道や溝に汚物をそのまま捨てる者も多かった。


前者の「川の上の小屋」――「川屋」から音だけをもらい、厠という名にした。


父カイルが、この世界で最初の厠の利用者として歴史に名を残した。


「気に入っていただき、何よりです。」


食事中ではあったが、そもそもこの世界に、排泄を汚いものとして忌む文化はない。


事業開始からの三週間は、本当に大変だった。


最初の一週間で、隠ぺい魔法技術を除けば、技術的な課題はほぼ解決することができた。


魔法工学技術で排泄物を特殊な膜で覆い、ボタンを押せば水で流れ、一か所の集中処理施設へ集められる仕組みを作った。


今回は試験の意味合いもあるため、まずは城内に設置し、その後、排泄物を肥料や燃料、魔法素材へと作り変える仕組みを設けた。


ただし、肝となる「膜で覆う技術」と「排泄物を有用な物へ作り変える仕組み」は、他国へ流出させぬよう隠ぺいする、という課題が残った。


次の一週間で、試作機を三日で完成させ、四日で城に設置した。


さらにその次の一週間が地獄だった。


この週は、隠ぺい魔法技術の準備にあてた。これは私が方向性を示し、優秀な魔法工学技士たちに作り上げてもらった。


そのあとは、出来上がった隠ぺい魔法技術に対し、私が解除を試みる。それをひたすら繰り返した。


十七回突破してみせたあとの、彼らの殺意のこもった目は忘れられない。皆、ほぼ寝ずに必死なのだ。


「なぜ解除はできるのに、隠ぺい魔法技術そのものは作れないんですかね。」


ついに言ってしまったか、という空気が流れた。


正直、私が知りたい。


二十四回目で、私はようやく突破をあきらめることができた。歓喜の瞬間である。祝いの席を設けようという話も出たが、皆、三日ほど泥のように眠った。


技術さえ整えば、あとはすべて軌道に乗せられる。


また、試作機ができた段階で、姉たちの嫁ぎ先である魔法都市と大樹の国へ、父カイルから連絡をしてもらった。


すごいものを作ったので見に来てほしい、と視察団を送ってもらったのだ。


視察団は厠に驚愕したあと、強い興味を示し、国に持ち帰って購入を検討したいと言ってくれた。


この時点で事業責任者を立て、事業を引き継いだ。


「わしのところに、あの事業の手紙が届いておったぞ。魔法都市は購入したい、大樹の国は排泄物は大地に返すゆえ不要か、冒険者の国は絶対に買うじゃろうな。」


工事費を別にしても、継続して年間七億から十億金貨は固い。人件費などを引いても、五億金貨は余裕で残るだろう。


これで借金の心配をすることもなくなった。


「あの国に売るかはわからん。あちらから言い出してきたら、値を釣り上げてくれるわ。」


意地が悪いことで。悪い王様がここにいた。


「食事中に話すことではないかもしれぬが……あらためて、エルティモよ。本当に、ようやってくれた。」


父カイルはそう言って、誇らしげに伝えてきた。


「いえ、たまたま幸運が重なっただけです。」


これは本心だった。


「もしかすると、そうかもしれん。しかし、同じ状況で気づきを得て、それを実行できる者は、なかなかおらんよ。」


頑張ったかいがあったというものだ。


「では、そろそろ、王位継承の準備に戻ってもらうぞ。」


少しニヤついた顔で、そう言ってきた。


「はい?」


何を言い渡されるのだろう。


「見聞を広めよ。四大国の王や王女に会い、交流を深めてくるのだ。」


内弁慶の私には、借金返済よりよほど酷なことが言い渡された。


この城が、大好きなんだけどな……。

お読みいただきありがとうございました。onecaratです。


この小説の世界、ワンカラットワールドのガイア大陸は、中世ヨーロッパの世界観をもとに作っています。


そのため、中世ヨーロッパのYouTubeをひたすら見てインプットを続けました。


エルティモが二階から排泄物を投げられるのも、当時は汚物を窓から捨てるのが当たり前で、道を歩く人がかぶってしまうことも珍しくなかった、そんな史実から思いつきました。


書き上げてためていた小説のストックも、半分ほど消化できました。


次回もお読みいただけると嬉しいです。


小説に使用しているエディタ:https://onecarat.dev/

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