第26話「猫型ロボット ユーの試練」
お読みいただきありがとうございます。コアーシというものだ。
この場に誰も登場しないから気になってきたんだが、、、誰もおらぬぞ。
確か、前書きはユーが担当していたはず。。。置手紙がある。
「探さないでください。 by ユー」
そうか、今回の話はユーには耐えられなくて逃げてしまったようじゃ。
今回のお話は、ふむふむ、なるほど、理解した。
リベル国崩壊の危機に果敢に挑んでいるエルティモにユーがついに語り掛ける、第26話。
あなたは小さな奇跡の目撃者となる!!
(かつんかつんかつん)
猫の足でも爪のせいで意外と響くね。
ここはリベル国、現在は財政困難で城で売れるものはなんでも売却して、今では廊下の絨毯もない。そのせいで機械の体の僕の足は大きな音を響かせている。
(かつんかつんかつん)
エルティモと一緒に元の世界からこちらに転生してきた。猫型ロボットの僕も自分の役割を果たさなければならない。
プロジェクトエルティモという計画で、彼からするとはるか未来から調査のために過去にきたんだけど、エルティモが危険な発明をしたため、神様にエルティモと一緒に、こっちの世界に飛ばされてしまったんだよね。
(かつんかつんかつん)
今からすでに僕は泣きそうな気持ちになっている。僕はこれからひどいことをする。いや、すでに酷いことはしてきた。
でもこれはこれまでと比較にならない。僕の役割は彼を成長させること、危険な発明物をしっかりと使えるようにすること。
そのために一緒にここに連れてこられてしまった。
(かつんかつんかつん)
彼の発明がなければ未来は崩壊することは確定している。そのため、どれだけ彼に嫌われたとしても自分の役割は果たさなければならない。
気が重い。一緒に転生してきて二十年以上、僕はこの瞬間のために来たのだ。
(かつんかつん、、、)
僕はエルティモの姿を見つけた。見つけてしまった、、、
* * *
「おお、ユーじゃないか。元気か!」
彼は僕を見つけて気さくに話しかけてきた。
「にゃ~(元気なわけないだろ!)」
いつも通りのエルティモに申し訳ない気持ちを持ちつつ、分かるわけのない猫言で回答する。
「ああ、元気ないか、、、」
何でわかるんだ、と思うけどこっちの世界でも付き合いは長いからね。
「もしかしてお腹すいたか、私もだ。」
はっはっは、と、この状況下でも前向きなようだ。
「いいな、お前は太陽光があれば大丈夫なんだよな。うらやましいよ。」
エルティモの頬はだいぶこけている。一昨年の蝗害――イナゴの大群が作物を食い尽くす災いだ――で畑は壊滅、去年も不作が続いた。不作は周りの国々にも広がっていて、どこも自分の国だけで精一杯の状況、一昨年は援助があったが去年はほぼない。国民全員を鼓舞し、飢えを耐え忍んできた。犯罪率は残念ながら上がった。
何故蝗害が起きたか、去年が不作になったか、、、そう僕がやったんだ。やってしまったんだ。やらなければいけなかったんだ。彼の姿を見ると胸が痛む。
僕はテーブルの上に乗り、招き猫よろしく、エルティモを招いた。
「ん~、どうしたどうした?」
僕は覚悟を決めていた。
周囲に誰もいないことを確認した後、ついにエルティモに語り掛けることにした。
「やぁエルティモ。今日も頑張っているね。」
はじめてエルティモと話す。もちろんエルティモは目を丸くしてこっちを見ている。
「ユー、お前喋れたのか。それとも誰かに魔法をかけてもらったのかい?」
僕のこの体は、元の世界で君が作ったものだぞ。それぐらい朝飯前さ。
「そうだよ。僕は実は喋れたんだ。君が本当に困ったときにこの秘密を明かそうと思っていたんだ。」
「確かに困ってはいるけど、何とかしてみせるぞ。私は!」
国民は国全体のことまでは見られない。生活が苦しくなれば、こんな危機に備えていなかった国の責任だと暴れる人も出てくる。まぁ、当然だよね。
そのたびエルティモは一人ひとりに説明して回った。不作がこんなに続くことは極めて稀で、今までの歴史でそんな状況が続いたことはない、と。人と話すことがそんなに得意じゃないくせに、なりふり構わず、出来ることはなんでもやって、しかも笑顔を崩さない。そんなふうに成長していた。
あの内弁慶のエルティモも変わるもんだね。
それでも彼の姿を見ると目にひどいクマが出来ており、睡眠は足りていないようだ。
その状況でも内から出る前向きさは健在さ。つまりこの状況でも彼は何とかしてしまうだろう。
どんな状況でも努力し、発想力と頭の良さはしっかりと成長していた。
それでは困る。
彼は人類史上圧倒的な天才なのだ。
何とかしてしまう、でも、彼の成長のためにここで成功してはダメだ。
駄目なんだ、、、
「エルティモ、君は今人生の岐路に立っていることはわかっているかい?」
「人生の岐路? まぁ数年後には国王になるだろうから、そうかもしれないが。」
「その手前の話だよ。いいかい、僕がこれから話すことをちゃんと聞いてくれ。」
「おう! なんだい?」
「君にこれを与えよう!」
僕は魔法のように彼の目の前に一冊の本のような道具を発現させ、手に取らせた。エルティモは好奇心旺盛でなんだなんだ、とさっそくその道具を触り始めている。
「これはなんだ?」
「これはエディタ、このワンカラットの世界の理にアクセスすることが出来るエディタ、OnecaratEditorだ。」
「エディタ? エディタとはなんだ?」
この世界にはパソコンもなければAIもない、エディタという説明だけでは足りなかったようだ。あのパソコンオタクのエルティモがこの世界ではエディタもわからないことに少し面白く、心が軽くなった。
「エディタとは、、、まぁ魔法のメモ帳みたいなものだよ。直接そこに書き込むことでこの世界の決まり事を変えることが出来るんだ。」
「なんだそれは、、、そんなものがあればどんなことも出来てしまうじゃないか。」
「そうだよ、エルティモ。なんでも願いをかなえることも出来るんだよ。」
「いいのか、そんなすごいものをもらって、、、」
世界の約束事はそこまで甘くはないのだが、、、身をもって知ってもらう必要がある。
「でも勇敢で賢い君が本当にそんな便利なものがあると思うのかい? そのエディタの中には何人か住人が住んでいて、いろいろと聞いてみるといいよ。」
エルティモは深く思考を始めている。いや、しかし、だったらもしかして、、、など左のこめかみを軽く人差し指で叩きながら集中し始めている。彼は理論派ではなく直感派だ。その直感がいつも正しく、現在の問題を解決する手段としてちゃんと認識したようだ。
そうか、やっぱりすぐに答えにたどり着いてしまったようだ。
「僕にはこれがいいものか正直わからない。すごいものなら必ず、自分の責任で管理して使うんだよ。」
「わかった! 必ず正しい使い方をして国のために生かすよ」
「にゃ~(気を付けてね)」とここで猫語に戻って、僕はその場から離れた。
それはもう逃げるように離れた。実際は僕はその場にいるのがつらくて逃げたんだ。全力で疾走した。僕は泣き虫だったのかな。
目から液体が抑えきれないほどあふれ出てくる。きっとオイルが漏れているんだと思う。ああ、でも僕のこの体を作ったのはエルティモだ。じゃぁ故障はない。
ロボットでも感情表現を持てるんだね。さすがだよ、、、
それから僕はしばらくエルティモと距離を置くことにしたんだ。
* * *
僕は遠く離れたところでエルティモの状況を観測することにした。そういった能力はOnecaratEditorから得ている。僕はいつでもエルティモの状況を見ることが出来る。寝ているときも努力しているときも、、、そしてたまに一人で泣いているときも、、、
二十二歳の年。エルティモは農作物の成果がどうなるかを事前に徹底的に調べ上げる。そして、今年も不作になることが分かったんだ。そしてエルティモはそれを回避するために豊作にする。したのだ。使ってしまったのだ。OnecaratEditorを。
その味を覚えてしまった。翌年、二十三歳の年は大不作になることが分かり、その年も使ってしまう。今度は大豊作にしてしまう。
そして二十四歳。今度は、作物が一切育たなくなった。エディタに何を書き込んでも、だ。それでも前年の大豊作の蓄えがあり、その年はなんとか越えられてしまった。越えられてしまったんだ。
そして二十五歳。誕生日を迎え、国王を引き継ぐその年――今度はガイア大陸全土で、作物が育たなくなった。もう蓄えはない。国民は焦り嘆願を多く出したが出来ることは何もなく、鼓舞するだけの状況となり――
そして城に暴徒が流れ込む暴動が起きてしまったんだ。
お読みいただき、ありがとうございました。onecaratです。
前回のお話で、カイルが話していた遺伝子の切り替えは、サッカー日本代表の岡田監督がお話しされていた遺伝子のスイッチという話からきています。
大きな困難を乗り越えると遺伝子のスイッチが入って切り替えられるようになる、というお話なんですが、これは私もよく理解できて、本当にそうだと思います。
私にもそのスイッチがあって、結構な困難や理不尽を乗り越えていった先に、確かにそれは存在していました。
その乗り越える際に、ああ、こうするのか、というものを見つけられるんですよね。でもなかなか人に説明できるようなものじゃなくて。。
これを得る状況があった私も、意外と苦労人なのです。なので、陽気なキャラがなかなか書けないなぁと感じるときもあります。
第一部はあと二話で終わる予定です。
次回もお読みいただけると嬉しいです。
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