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第18話「大賢者エレイザの素行調査」

お読みいただきありがとうございます。猫型ロボットのユーです。


今回の恋のお話、その裏側はなんと国家戦略の一環なんだ。話が大きくなりすぎだよね。


エルティモ視点だと、普通に出会って、好きになって、プロポーズして、、、そんな素敵なお話に見える。


でも裏側では、大樹の国のベッキーと、魔法都市の長女セシリーが手を結び、リベル国と弟の幸せのために動いている。さらに自国であるリベル国も含め三カ国がかりの大仕事なんだ。


彼女たちはエルティモの姉だけあって、頭もいい。何も考えずに嫁いだりは、しないんだよ。


今回もクララ視点で物語は進んでいくよ。ついにエレイザ様の素行調査が始まる、第18話。



差し脚抜き足忍び足~♪

ベッキー様からエレイザの素行調査の承認をもらった私は、そろそろ起きているであろうクリスがいる宿へ向かった。


「クリス、ベッキー様から許可はとったぞ。」


クリスはしっかり起きており、身支度を整えていた。


「本当ですか。じゃあ今日は、、、徹底的にやりましょう。」


普段は穏やかなはずのクリスの目が、今日に限って妙に据わっている。


聞いた予定はこうだ。


午前中、エルティモは自身の鍛錬にあてる。エレイザは森へ散歩を楽しむとのこと。そして午後からは、二人でデートだという。


「、、、クリス。森に散歩って、なんです?」


「だな。怪しいよな。」


そもそも、大賢者ともあろう人が、わざわざ人気のない森へ一人で出向く理由がわからない。何かある。私の勘がそう告げていた。


「じゃあ午前中はエレイザの調査、午後はふたりのデートを尾行する。」


「「えいえいおー!」」


握りこぶしを天に突き上げ、私たちは意気揚々と宿を飛び出した。



エレイザが向かった森に、私たちも遅れて到着した。


「クリス、これを羽織るんだ。」


「なんです、この羽織は?」


「隠密の羽織だ。こちらから動かない限り、相手に察知されない、という代物でな。」


「え、すごいじゃないですか。ずいぶん高価な品では?」


「昔、とある貴族の演奏会に呼ばれてな。えらく気に入られて、愛人にならないかと口説かれた。丁重にお断りしたが、そのとき贈られた品の一つだ。」


「なるほど、、、私たち一般人には、縁のない代物ですね。こんなものが簡単に手に入ったら、世の中、犯罪だらけになってしまいます。」


「違いない。効果は十八時間。今日一日は保つだろう。さあ、使うぞ。」


「はい。」



エレイザは、すぐに見つかった。彼女の歌声が森じゅうに響いていたからだ。声をたどれば、居場所は一目瞭然だった。


幸い、森の中は身を隠すにはちょうどいい。私たちは木陰から、そっと様子をうかがう。


発声訓練も兼ねているのか、強弱をつけて歌っている。


「クララさん、これって、、、。」


「すごいな。まるで、動物たちのための演奏会だ。」


彼女の声に魅入られたのか、森じゅうの動物たちが集まり、彼女をぐるりと取り囲んでいた。小鳥も、リスも、鹿までもが、うっとりと聴き入っている。


「本当に、いい声ですね。」


「私もそう思う。生まれつきの分も、多少はあるだろう。だが、、、これは間違いなく訓練の賜物だ。毎日、血のにじむような努力を重ねてきたんだろうな。」


「ええっと、、、美人で、体つきも整っていて、胸も大きくて、そのうえ努力家、と。、、、また一つ、形容詞が増えましたね。」


そのとき、エレイザが、足を痛めた一羽のウサギを見つけ、駆け寄った。


すっと右手をかざすと、どこからともなく僧侶の杖が現れ、回復の魔法を唱える。、、、初級スキルのはずなのに、光量が尋常ではない。


みるみるうちにウサギの傷は癒え、嬉しそうに彼女のまわりをぴょんぴょんと跳ねてみせた。エレイザは、その頭を、心底愛おしそうに撫でている。


「クララさん、、、あの回復魔法、私の十倍は効いてます。私、リベル国では五本の指に入る僧侶のはずなんですが、、、。」


「大賢者は伊達じゃない、ってことか。努力家に続いて、動物に優しい、超回復魔法も追加だな。」


「あれ。でも、そろそろ王子との約束の時間では? 間に合うのかしら。」


そんな心配をよそに、エレイザは動物たちに別れを告げ、自分の歌声で、自分自身にスピードアップのスキルをかけてみせた。


そして、街へ向かって一気に駆け出していく。、、、速い。私のスピードアップなど、せいぜい三倍がいいところだが、あれは十倍は下らないだろう。いや、もともと足が異常に速いだけ、という線もあるか、、、。


「、、、私たちも戻るか。」


クリスにそう伝えて、振り返った――その瞬間。


森の動物たちと、ばっちり、目が合った。


、、、しまった。視認された。


彼らは私たちを、エレイザに仇なす敵とでも認識したのか、牙をむき、一斉に襲いかかってきた。


「クリス、走れっ!」


私はスピードアップを全力でかけ、クリスの手を引いて、命からがら街まで逃げ帰ることになった。、、、大賢者の調査は、想像以上に命がけだった。


ボロボロになりながら街へ戻った私たちは、息をつく間もなく、今度は王子たちの尾行へと切り替えた。我ながら、仕事熱心にもほどがある。


* * *


王子たちは、外でも食事のできる開放的な食堂で、昼を楽しんでいた。


「、、、王子、なかなかやるじゃないか。いい店を選んだな。」


そういえばあの人は、妙に食にこだわるところがある。


そっと様子をうかがって、私は思わず二度見した。


いつも氷のように冷静な、あのエルティモの顔が、、、ない。代わりにそこにあったのは、完全に浮き足立った、にこにこと、にこにこと、、、ええ、にこにこと、どこまでもしまりのない顔だった。


「クララさん。私、あんな王子の表情、初めて見ました。」


「奇遇だな。私もだ。」


調子に乗った王子は、自分の得意分野――魔法工学について、それはもう熱っぽく語り始めた。


「王子、、、そういう話は、ご婦人は楽しめないぞ、、、たぶん。」


ところが、だ。エレイザは、その話をきちんと理解したうえで、構造的な疑問を、すらりと返してみせた。


「、、、ええっと。頭もいい。知識も広くて、深い。」


「クララさん、もう、完璧すぎて、、、私、あの人が、怖いです。」


「おお。ついに『完璧で怖い』が出たか。、、、いや待て。それって、完全に私たちの主観だよな。私たちの能力が高ければ、怖くもなんともない話で、、、つまり、私たちの問題だな、それ。」


その後、二人はエレイザの案内で街を巡り、やがて、人気のない場所へと足を向けていった。



この頃にはもう、私もクリスも、すっかり彼女を認めていた。なんなら、ぜひ王子と結ばれて、共に国を盛り立ててほしいと、本気でそう願うほどに。


そして、ついに王子が、改めてこう切り出した。


「昨夜と同じ申し出になるが、、、我が国の王妃となって、共に国を盛り立ててくれないか。私は、あなた以外は嫌だ。いや、あなたがいい。いや、、、」


一呼吸おいて、王子は、言い切った。


「あなたを、愛している。」


私とクリスは、もう完全に、王子の応援団だった。その姿を見て、涙が止まらなかった。頑張れ、頑張れ王子、と。


ところが――


「王子。私、あなたに謝らないといけないことが、あるの。」


エレイザはそう言うと、くるりと、ひと回転してみせた。


次の瞬間。彼女の姿は、六十歳ほどの、老女へと変わっていた。


「王子。私の正体は、こんなおばあちゃんなのよ。、、、こんな私でも、いいの?」


、、、なんてことだ。


私の頭に、ある記憶がよぎった。冒険者の国で、女王アグネスがくれた、あの「見た目が若返るレアアイテム」。


そうか。あいつ、あれを使って若さを偽り、ずっと年齢を詐称していたのか――。


私とクリスは、声もなく、ただ立ち尽くすことしかできなかった。

お読みいただき、ありがとうございました。onecaratです。


書きだめていたストックもなくなりましたが、一部の話が終わるまでは二日に一回の投稿を継続できています。


気が付いたら、プログラムより小説を書いている時間のほうが圧倒的に長くなっていて、本末転倒かなと思いつつ、、、いや、書けば書くほど「執筆中にこんな機能が欲しい」が見えてくるので、結局これも開発のうちだと言い聞かせています。


自己満足ですが、やり切りたいなと考えています。

※はやくFable5の再開まってます。。。


次回もお読みいただけると嬉しいです。



小説に使用しているエディタ:https://onecarat.dev/

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