第15話「空の旅と水着の話」
お読みいただきありがとうございます。猫型ロボットのユーです。
無事、魔法都市の危機を救ったエルティモ一行。
空を飛ぶ姿は、それはもうきれいだったよ。でも本当の狙いは
たとえ実験が失敗しても精霊王に許してもらう、っていう作戦でもあったんだ。
どちらにしても許してもらえたんじゃないかと思うさ。
さて、今回からは大樹の国のお話だけど、どうやらまっすぐ行かずに寄り道をするようだよ。
クララさんが体を張って頑張る第15話。
気張っていきましょう~♪
魔法都市を、いよいよ離れる日が来た。
姉セシリーが、桟橋まで見送りに出てくれた。
「もう行ってしまうのね。、、、たまには手紙くらい寄越しなさいよ。」
「はい、姉上。お世話になりました。」
国王セドリックからも、わざわざ城の使いが訪れ、丁重な礼の言葉を預かった。一国の王にそこまでされると、こちらが恐縮してしまう。
さて、次の目的地は大樹の国だ。馬車を仕立て、街道を行こう――そう考えていた、まさにそのときだった。
「エルティモ王子。精霊王が、王子に話があるそうだ。」
セドリックの使いが、そう告げてきた。
(、、、話? いったい、何だろう。)
呼ばれるまま、私たちは再び、あの砂浜へと向かった。
海面がゆっくりとふくらみ、王冠を戴いたイルカが姿を現す。精霊王だ。
「よく来たな。、、、なに、大した用ではない。あの夜の、見事なショーへの礼がしたくてな。少々、やり返したくもあってな。」
「礼など、とんでもない。、、、こちらこそ、お許しをいただいた身です。。。やり返す?」
「よいから聞け。そなたら、これから大樹の国へ向かうのであろう。我にできる最高の礼を用意した。ーーー空を見よ。」
エルティモたちは空を見上げる。そこで空飛ぶクジラがこっちに向かってくるのを目にした。
どんどん大きくなる。とんでもないスピードで海に突っ込んできた。なんとーー
どぱーんと海に入水する、水しぶきが上がり、びしょぬれになる一行。
「つ、つまり、クジラが私たちを送ってくれるということでしょうか。」
「そうだ、空飛ぶ人間には、ちょうどよかろう。ふっ、はっはっは。」
すごい、そんな経験できるなんて、これは最高のお返しだ。
「ありがとうございます。これは旅がますます楽しみになってきた。」
「そうであろう、そうであろう。しかも五日かかる距離を、一日で到着できるぞ。」
クジラに乗る経験だけじゃない、時間までもらえるなんて。
そうして今、私たちは、空飛ぶクジラの背に乗っている。
眼下には、雲の海。風を切る感覚すらなく、ただ景色だけが、ぐんぐんと後ろへ流れていく。
「すごいはやさだな。」
クララが、髪を押さえながら声を上げた。
「お、落ちたり、しませんよね、、、?」
クリスは、私の袖をきゅっと握って離さない。
「大丈夫だよ。精霊王の結界が、私たちを包んでくれている。風は通しても、落ちることはないだろう。」
「わかってはいるんですが、、、怖いぃ。」
「ただ、、、日差しだけは、どうにもならないね。少し、暑いな。」
雲の上の太陽は、思いのほか、近い。
やがて、はるか前方に、それが見えた。
天を衝く、一本の大樹。
「、、、見えたぞ。あれが、大樹の国だ。」
見上げても頂が霞むほどの巨木が、地平の彼方に、悠然とそびえている。あんなものが、この世にあるのか。、、、いつまでも、眺めていられそうだ。
「降りる準備をしよう。、、、精霊王から、聞いている。結界を割れば、降りられる、と。」
私は意識を、研ぎ澄まして集中して周囲を見た。
これほど強力な結界にも、よくよく見れば、ほころびがある。、、、あそこだ。
腰のレイピアを、すらりと抜く。狙いを定め、その一点へ――突く。
パリン、と。
澄んだ音を立てて、結界が割れた。
次の瞬間、クジラが「うぉぉぉぉぉん」と腹の底から声を上げ、降りる頃合いとばかりに、まっすぐ大地へと突っ込んでいく。
「「「うわぁぁぁぁぁ!」」」
ばちゃーん、と。
着水した先は、深い湖だった。、、、深くて、助かった。しっかし今日はよく濡れる日だな。。。
大樹の国にほど近い、湖のほとりの村。
そこに、私たちは、全身びしょ濡れで降り立った。
幸い、ここまでの道のりは、順調そのものだった。おかげで、皆まだ余裕がある。
ふと、私は提案した。
「、、、しばらく、この村で休んでいこう。」
ここから大樹の国までは、馬車で半日ほど。クジラのおかげで、予定より、ずいぶん早く着きすぎてしまった。少しくらい、骨を休めても、罰は当たるまい。
「賛成! やっと、のんびりできるわね。」
「うれしいです、、、!」
二人とも、ぱっと顔を輝かせた。
* * *
季節は、夏の盛り。湖は、泳ぐにはちょうどいい。
ならばと、皆で水遊びに繰り出すことに、せっかくなので水着も購入することにした。
クリスは上下がつながっている一枚タイプのワンピースを選択した。
露出は控えめで彼女らしいが、胸元にフリルがついており、ささやかにかわいらしさを主張していた。
それとは対照的に、クララは水着なのか紐なのかわからない、正直正視できないものを選んでいた。
商品名はーーー【あぶない水着】。いや、改名する、【紐水着】と名付けよう。
「クララ、すごいな。驚愕したぞ。」
思わず感想を言ってしまった。
「ふふ、王子には刺激が強かったか。」
クリスが、ええーって顔で見ている。
「まさか、その水着の防御力が普段の装備より高いなんてな。」
魔力を帯びており、簡単な刃ではダメージを負わないのは見ればすぐわかる。
「そこぉぉ。」
「大樹の国までそれでいこうか。」
「流石にほどほど羞恥は持っている。。。」
クララは日陰の下で読書を楽しむことを決めたようだ。
「ところで王子、、、私、泳げないのよね。」
クリスから相談を受ける。
「それはいざというとき、命にかかわるな。せっかくなので教えようか。」
私は大事な仲間が溺れないように、手ほどきをすることにする。
一通り、どこまで出来るか見せてもらったが、水に対する恐怖心があることが原因だとわかった。
「まずは水の中で目を開けるところから始めよう。」
「そんな難しいことをするんですか。」
「うん、目をつぶったまま泳ぐと怪我をするからね。」
練習を徐々に難しくしていき、最終的にはそれなりに泳げるようになった。
淡水のこの湖で泳げるなら、体が浮きやすい海ではなおのこと心配ない。これで十分だろう。
クララから声がかかった。
「王子~、面白いものが売っていたからこれでゲームをやろう。」
鉄球ぐらいのサイズの果物が用意されていた。
これを目隠しで遠いところから割るそうだ。
まずは私の番だが、これは難しいのか。。。
目隠しをして、棒を構える。、、、私には、見えずとも、わかる。
ものの在処も、その形も。
すたすたと歩み寄り、ひと振り。、、、すぱん、と、見事に真っ二つだ。
「ちょっと、それ、ずるくないですか!?」
クララが、なぜか抗議していた。
* * *
その夜、食堂で。
「今日は、本当に、楽しかったです。」
「ありがとな、王子。」
二人に、そう礼を言われた。、、、悪い気は、しない。
「日ごろの疲れは、温泉で、とことん癒すといい。」
この村には、ありがたいことに、温泉が湧いていた。
私が、男湯で湯に浸かっていると、、、仕切りの向こうから、二人の話し声が、ぽつぽつと漏れ聞こえてきた。
「、、、王子って、意外と、筋肉ないんですねぇ。」
クリスの、のんびりした声だ。
「あれはね、むきむきじゃないだけ。しっかり鍛えてあるのよ。無駄を、そぎ落としてある。」
クララが、したり顔で語っているのが、目に浮かぶ。
「、、、って、私たち、どこ見てたんですか!」
「やだ、ほんとだわ!」
きゃっきゃと、笑い声が弾ける。
(、、、なんの話を、しているんだ?)
私には、さっぱり、わからなかった。
その夜は、皆、泥のように眠った。
* * *
翌朝。一人、早くに目を覚ました私は、日課の鍛錬を始めた。
小さなリングを、いくつも紐で吊るす。それを、レイピアの先で、はじいていく。
すぱ、すぱ、すぱ、と。
リングの穴を、一つずつ、寸分の狂いもなく、通していく。
学院時代に編み出した、この鍛錬。狙うのは、威力ではない。、、、途切れさせない、集中の持続だ。
三十分ほど続けて、ふぅ、と、ひと息。、、、うん、満足のいく仕上がりだ。
部屋へ戻ると、クリスもクララも、もう起きていた。武器や道具を並べ、念入りに点検をしている。足りないものは、買い足しに行くらしい。
そうだ。こういう、地味な積み重ねの差こそが、いざというとき、人との差になって表れる。
、、、この二人は、本当に、最高の仲間だ。
そして、出発の時刻。
しっかりと、羽を休めた。体は、軽い。、、、最高の状態だ。
馬車は、大樹の国を目指して、ゆっくりと走り出した。
お読みいただき、ありがとうございました。onecaratです。
今回はいろんな要素を詰め込んだ、伏線と水着の回となります。
当初は話を分ける予定でしたが、水着の回というのが本当に難しいことが分かりました。
理由は大小二つです。
小さいほうの理由は、世の中の漫画や小説の中でネタとなるものはやりつくしていることです。
何を書いてもどっかで見たことがある。そうなると新しいことを創造する必要があります。
大きいほうの理由は、私が現実で小さいころを覗くと、海に泳ぎに行ったことがない、ということです。
新しいことを創造するネタがないんですね。
海に行かないでパソコンの前でプログラミングをやっていたようなやつです。
リア充イベントなんて、とてもとても。前回の倍以上時間がかかりました。。。
次回もお読みいただけると嬉しいです。
小説に使用しているエディタ:https://onecarat.dev/




