第13話「魔法力維持の実証実験」
お読みいただきありがとうございます。猫型ロボットのユーです。
前回、クリスさんと良い雰囲気になったけど、エルティモはとても鈍いんだよね。
学院に通ってたとき、アプローチは少なくなかったけどそれに気が付かない、言葉にしない限りそれを認識できないようなんだ。
物事を何でも熟考して、一度定義したものは変えない。
クラスメイトは一緒に学業に励み己を高めあう仲間と定義して、そこから外れることはなかった。
今回は精霊王に安全を証明するための実験回の第13話です。
安全第一~♪
魔法都市の研究棟、その最奥にある実験室へと通された。
重い扉を開けると、中ではすでに大勢の魔法工学技師たちが待ち構えていた。十数人はいるだろうか。
国王セドリックが、私のために国でも指折りの腕利きを選りすぐってくれたのだ。
「揃えておいたぞ。皆、この国の宝とも言える者たちだ。存分に使うがいい。」
わざわざ国王セドリック自らが見送りに来ていた。これは、相当な力の入れようだ。
それだけ、精霊王との一件が国の命運を握っているということだろう。
ずらりと並ぶ技師たちの視線が、いっせいに私へ集まる。チクチクと痛い。だが、今はそんなことを言っている場合ではない。
「短い時間でお集まりいただき、感謝します。早速ですが、、、クリス。」
「は、はいっ。」
名を呼ばれたクリスが、びくりと背筋を伸ばした。船酔いから復活したばかりだが、もう顔色は悪くない。
「君の持続回復魔法を、皆に見せてやってくれ。」
クリスは少し緊張した面持ちで杖を掲げる。やわらかな詠唱とともに、宙にぽうっと、淡い光の球が浮かび上がった。
「おお、、、」
技師たちから、感嘆の声が漏れる。
百の言葉より、一つの実物だ。これから作ろうとしているものの手本が、目の前にある。それだけで、話がぐっと早くなる。
僧侶が扱うこの魔法は、魔法工学とは溜まる魔法力の質が違うらしく、技師たちにとっては未踏の領域なのだという。
だからこそ、見せる意味があった。
「クリスに、この球の仕組みを聞いた。まず、自分の中に魔法力を溜める。次に、それへ『一か所に集まる』という定義を与える。すると、あの球になる。そして役割があれば、そこへ向かって放出される。」
今回必要なことは魔法力を一か所にためることだから、一か所にとどめるように魔法式を定義すること、それを指定した場所に魔法力を送る仕組みを作ること。この2点で足りるはずだ。
「皆さんの中で転写集の技術にかかわった人はいますか?」
半分ほどがかかわっていることが分かった。そこで、チームを二つに分け、その転写集の技術を応用して指定した場所に魔法力を送る仕組みを担当。
残りは魔法力をとどめる魔性式を定義するチームに分けた。
「今回は『球体維持の魔法式を定義すること、適切な指定位置に魔法力を送ること』を、魔法工学の術式として組み直す。それが今回の目標です。」
プロジェクトを進める際に一つだけ、条件をつけた。
「全部できてから見せる、というのはやめてください。三割でよいです。三割組めたら、すぐ私のところへ持ってきてください。」
私には、組まれた術式を見た瞬間に、その善し悪しを見抜く目がある。早い段階で道の良し悪しがわかれば、無駄な時間をまるごと削れる。
ほどなく、最初の三割が上がってきた。一目見て、筋は悪くない。
「大丈夫です。このまま進めてください。次は、七割になったら。」
両チームに七割まで詰めてもらうと、さすがに見ただけでは判断がつかなかった。
「ここまで出来たのでしたら、実際に実験してみましょう。」
しかし、時刻はすでに深夜で睡魔に襲われ始めているメンバーも少なくない。
「クリス、目覚めの魔法を自分たちも含めて、みんなに定期的にかけててほしい。」
こっそりとそんなことをお願いした。
「それはいいですけど、魔法をかけなくなってから、、、みんな倒れますよ。」
「構わない、この三日にすべてをかける。あと君には特上の魔法回復薬を実は食べてもらっているんだ。魔法力が尽きることはないはずだよ。」
「あれを食材にしていたのはそういった理由だったんですね。」
「念のためだよ。体にもいいからね。」
実験に入る前に、皆へ一つだけ伝えておく。
「この術式は、ただ魔法力を溜めるだけのものです。空飛ぶブーツのように、一度に大量の魔法力を吸い上げることはありません。人が無理なく扱える範囲しか使わない、、、それ自体が、何よりの安全装置になっています。」
これなら、海へ無理を強いることはない。精霊王が最も恐れた、あの暴走は、原理上、起こりようがないのだ。
技師の一人が、試しに組んだ術式でスキルを発動する。
宙に、青黒い球体が、ゆらりと姿を現した。
「おおっ、、、!」
歓声が上がる。だが、、、それも束の間だった。球体は、霧が晴れるようにふわりとほどけ、跡形もなく消えてしまった。
「、、、維持ができていませんね。」
私はこめかみを叩きながら、消えた球体の残像を、頭の中で何度も再生する。
「術式そのものに問題はない。なら、原因は外側だ。、、、魔法力を送り続けている、本人の体。あのわずかな揺れが球体に伝わって、形を乱しているんじゃないか。」
仮説を立てたなら、あとは試すだけだ。
「すみません、術式を担当する魔法師の体を、動かないように固定してみてください。がっちりと。」
ほどなく、椅子に縄でぐるぐる巻きにされた、気の毒な魔法師が出来上がった。本人は涙目だ。すまない、これも実験のためだ。
「では、もう一度。」
再度の実験。今度は、先ほどよりも明らかに長く、球体が保たれた。
「、、、悪くない。揺れは、確かに原因の一つだった。」
だが、まだ想定には遠い。やがて球体は、力尽きたようにほどけてしまう。
「でも、これだけじゃないのね。」
クリスが、不安そうに眉を寄せた。
「ああ。まだ見えていない原因があるみたいだ。」
私は研究室をぐるりと見渡し、ふと、クリスが最初に掲げた光の球を思い出していた。
「、、、クリス。君のあの球は、もっと高い位置に浮いていなかったか。」
「え、ええと、、、言われてみれば、私の胸より、ずっと上だった気がします。」
「それだ。発生させる高さが、低すぎるのかもしれない。もっと高い位置で結んでみましょう。」
夜が明けても、私たちの戦いは終わらない。
「もう一度。今度は、高さを変えて。」
実験は、まだ、続く。
お読みいただき、ありがとうございました。onecaratです。
ワンカラットワールドはハイファンタジーではあるのですが、そのジャンルの定義をみると下記です。
【現代の地球とは全く異なる、魔法や架空の種族が存在する独自の架空世界(異世界)を舞台にしたファンタジー作品の総称】
ゴブリンも魔法も出ているのでありなのか。
ハイファンタジーとローファンタジーの違いは下記です。
【その世界が私たちが生きる現実と繋がっているかどうか。繋がっていなければハイ、現実をベースにしていればロー】
エルティモがもといた世界は地球によく似た世界と定義しているので、現実と地続きとも言える。
そう考えると、ぎりハイファンタジーでいいのかな。
そんなことを考えました。
次回もお読みいただけると嬉しいです。
小説に使用しているエディタ:https://onecarat.dev/




