第12話「僧侶クリスの看病」Ver 1.01
お読みいただきありがとうございます。猫型ロボットのユーです。
どうやらエルティモは今回も得意の技術力で問題をなんとかしようとしているね。
どんな難問もやる前から無理とは考えず、根拠はないけど、自分ならなんとかできるだろうという自信が内にあるんだ。
だからこそ、解決のアイデアを思いつくことが出来る。
人は出来ないと思った時点で思考を停止してしまうから、そこがエルティモの強みだったりするんだ。
今回は体調を崩した僧侶クリスの看病をする第12話。
お大事に~♪
精霊王との対面を終え、私が腰を落ち着けたのは、姉セシリーが手配してくれた一軒家だった。
宿屋ではなく一軒家を借りられたのは、ありがたい限りだ。
台所も寝室も揃っていて、長旅で疲れた仲間をゆっくり休ませることが出来る。
ただ、、、その、ゆっくり休ませたい相手の容体が、思っていたよりも芳しくなかった。
「クリス、入るぞ。具合はどうだ。」
声をかけて部屋に入ると、ベッドの中でクリスがぐったりと横たわっていた。普段は穏やかに微笑んでいる童顔が、今は青白い。
「も、申し訳ありません、、、まだ、起き上がるのが。。。」
弱々しい声だった。船酔いから始まった不調が、ここにきて尾を引いている。
クリスは普段、リベル国のダンジョンと児童養護施設を行き来するだけの暮らしだ。たまに国内のダンジョンにお手伝いする程度、これほどの長旅は初めてだったのだろう。
慣れない移動の疲れが、一度にのしかかったに違いない。
回復魔法はあくまで傷を癒すもので、こうした疲れそのものには効かない。ならば、人の体を内側から立て直す方法は一つしかない。
「気にしないでくれ。せっかくなので栄養のあるものを作らせてもらうぞ。台所を借りる。」
学院時代、何かと周りに助けられてばかりだった私は、せめてもの礼にと料理を覚えた。あのときの練習が、こんなところで役に立つとは。
(それに、、、明日彼女には、大事な役目を頼むことになる。今は、まず元気になってもらうのが先だ。)
私は町に出て、必要なものをどっさりと買い込んできた。看病も兼ね、彼女の部屋の調理場を借りることにする。
買ってきた食材を調理台に並べていく。
マンドラゴラ、何かの魚の目玉、紫色のパウダー、米、聖水、そして特上の魔法回復薬。
それを見たクリスの顔から、さらに血の気が引いていくのがわかった。青白かった顔が、今度は土気色だ。
「あの、、、王子、、、それは、いったい何なのでしょう。。。」
「街に売ってた滋養強壮にいいものばかりを買い込んできた。安心しろ。」
安心できる要素が一つもない、という顔をしている。クリスはおもむろに胸の前で手を組み、静かに目を閉じて、神への祈りを捧げ始めた。
(まだ何も口にしていないのに、覚悟を決めるな。)
調理を進めること、しばらく。出来上がったのは、見た目はごくありふれた、白いおかゆだった。
「消化のことを考えて、おかゆにした。胃に負担をかけず、栄養だけを取り込めるようにしてある。これを食べて、元気になってくれ。」
一人で食べさせるのも気が引ける。私はもう一人の仲間を巻き込むことにした。
「そうだ、クララも呼んで一緒に食べよう。」
ところが、テーブルの上には書置きが一枚残されていた。
『情報収集のために街に出ます。帰りは遅くなるかも、いえ、帰ってこないかもしれません。あとはよろしく。クララ』
クリスが、ぼそりと呟いた。
「逃げましたね、あの人。」
同感だ。あの抜け目のない吟遊詩人のことだ、この食材を見た瞬間に身の危険を察したに違いない。
逃げ場を失ったクリスは、それでも断れるはずもなく、震える手で匙を取った。ごくり、と喉を鳴らし、意を決して一口。
「、、、あれ?」
目を見開いた。
「とても、、、おいしい。」
「だろう? 食材はあれだが、味はやさしく仕上げてある。」
クリスは一口、また一口と、ゆっくり匙を進めていった。食べ終えるころには、少しだけ頬に赤みが戻っていた。
その夜は念のため、私は椅子に腰かけたまま、彼女の様子を見守ることにした。熱がぶり返さないか、呼吸が乱れないか。
そんなことを確かめているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
朝の光で目を覚ますと、、、すぐ目の前に、クリスの顔があった。
(うわっ。)
声には出さなかったが、心臓が跳ねた。どうやら向こうも私の寝顔を覗き込んでいたらしく、目が合った瞬間、「ひゃっ」と小さな悲鳴を上げて飛び退いた。
「お、起きてらしたんですね、、、! その、ち、近くてすみません、、、!」
顔を真っ赤にして、わたわたと距離を取る。
「いや、こちらこそ。寝ずに見ているつもりが、寝てしまったようだ。すまない。」
「ずっと、見ていてくださったんですか。。。」
クリスは少し驚いたような、それでいてやわらかい表情になった。
「体調はどうだ。」
「はい、おかげさまで、、、もう、すっかり。あのお食事が、本当によく効きました。ありがとうございます。」
頬の赤みも戻り、声にも張りがある。よかった、もう大丈夫そうだ。
「では、体を拭きたいので、、、少しの間、一人にしていただけますか。」
「ああ、そうだな。ゆっくりしてくれ。」
部屋を出て、扉を閉める。すると中から、小さく息をつく音が聞こえた気がした。
* * *
しばらくして、街から戻ったクララと合流し、私は二人にあらためて昨日の顛末を話した。
精霊王のこと。空飛ぶブーツの実験で、海の生き物にまで負担が及んだこと。そして、、、与えられた猶予が、たったの三日であること。
「三日って、、、それ、かなりまずいんじゃないですか?」
クララが眉をひそめる。クリスも不安そうだ。だが、私はいつも通りの調子で答えた。
「まあ、なんとかなるさ。」
その一言と、私の顔を見て、二人はほっと息をついたようだった。(いや、なんとかする当てが、ちゃんとあるからこそ言えるんだけどね。)
私は昨夜から、ずっと一つのことを考えていた。
精霊王の要求は、ただ一つ。今後二度と、あのような事故を起こさないと証明すること。
事故の原因はもうわかっている。魔法都市は、必要なときに必要な分を、海から直接、しかも一気に引き出していた。その急激さが、海に無理を強いたのだ。
ならば答えは単純だ。普段から少しずつ魔法力を蓄え、使うときはその蓄えから使えばいい。蛇口を直接、川につなぐのではなく、一度、池に溜める。
魔法力を、形のあるものとして蓄えて、必要なときだけ取り出す。そんな器を、どう実現するか。
このヒントを、目の前の僧侶は持っている。
「クリス。一つ、頼みがある。」
「は、はい?」
「君の持続回復魔法、、、あの光の球が、どういう仕組みでできているのか、詳しく教えてほしい。」
クリスは少し戸惑いながらも、自分の魔法について語ってくれた。
「ええと、、、まず、自分の中に魔法力を溜めて、それに『定義』を与えるんです。」
「定義?」
「はい。『魔法力が、一か所に集まる』という習性を持たせるんです。それで、あの球体になります。そして、果たすべき役割があれば、そこへ向かって動いて、役目を果たす、、、たとえば、傷を癒したり、魔の気配を祓ったり。アンデッドに効くのも、その仕組みのおかげなんです。」
聞きながら、私の頭の中で、ばらばらだった情報が一気に集約されていく感覚があった。脳が痺れるような、あの快感だ。
溜める。定義する。役割に応じて放出する。
「ありがとう、クリス。想像通り、君が答えを持っていた。」
「え? わ、私、何かしましたか、、、?」
きょとんとするクリスに、私は思わず笑ってしまった。
それだけではない。あのは、溜まった魔法力が多ければ大きく、少なければ小さくなる。
つまり、球体の大きさを見れば、今どれだけの魔法力が使えるのか、ひと目でわかるということだ。器であると同時に、目盛りにもなる。
これなら、海から直接、無理に引き出す必要はない。普段から蓄えた分だけを、安全に使える。空飛ぶブーツのときのような暴走は、原理的に起こりえない。
「方針は決まった。」
私はこめかみを、とん、とん、と軽く叩いた。
「魔法都市の技術と、クリスの魔法。これを組み合わせて、『魔法力を蓄える器』を作る。それを精霊王に示せば、必ず納得してもらえるはずだ。」
「おお、なんだか難しそうだけど、、、王子がそう言うなら、いけそうな気がしてきたわ。」
クララが頼もしそうに笑う。クリスも、こくりとうなずいた。
残された猶予は三日。ぐずぐずしている暇はない。
「実験室へ向かおう。ここからが、本番だ。」
お読みいただき、ありがとうございました。onecaratです。
より上手に小説を仕上げることができるのか、いろいろと考えますが、エルティモ同様、技術でなんとかしようと私も考えてしまいます。
小説執筆機能のあるエディタを改良して不便なくやれるか、エディタを修正して試す。
そしたら不具合で書き溜めていたものが消える。泣きそうになりました。
※自動保存機能が一部の条件で機能しなかった。
まあ、話の流れは頭に入っているので書き直せるのですが。。。
次回もお読みいただけると嬉しいです。
小説に使用しているエディタ:https://onecarat.dev/
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― 改訂履歴 Ver 1.01 ―
・「クララ再合流」直前に場面転換記号 * * * を追加(広い空行を集約)
・表記統一:?/!を全角化(6行・計9字)




