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勇者はだれ?  作者: 臥亜


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魔王城第一層 ―― 嘲笑の回廊

黒い渦を抜けた瞬間。


重力が消えた。


視界がひっくり返る。


次の瞬間、足が地面を踏んだ。


「……ここが」


リュカが顔を上げる。


紫色の空。


浮かぶ岩。


遠くにそびえる巨大な黒城。


圧倒的な存在感。


魔王城。


背後を振り向く。


転移の渦は、もうない。


帰り道は消えた。


ガルドが肩を鳴らす。


「完全な敵地だな」


ノアは空を見上げる。


「魔力濃度が王都の十倍以上……長期戦は不利」


アルヴァンは城を見つめたまま言う。


「外郭は第一層。城に入る前から試される」


その言葉が終わる前に。


地面が、ぐにゃりと歪んだ。


黒い砂が盛り上がる。


骨のような柱がせり上がり、巨大な門が姿を現す。


門の中央には、不気味な笑顔の彫刻。


ギィ……と音を立て、勝手に開く。


「歓迎、ってこと?」


リュカが小さく笑う。


「罠だ」


ノアは即答。


「でも進むしかない」


リュカは一歩踏み出した。


「最初からそのつもり」


四人は門をくぐる。


中は長い回廊。


黒い石壁が、鏡のように光を反射している。


コツ、コツ、と足音だけが響く。


そして。


クスクス、と笑い声。


上か、横か、分からない。


「ようこそ」


天井から声が落ちてくる。


霧が集まり、人の形になる。


細身の男。


白い仮面のような顔。


口元だけが裂けたように笑っている。


「魔王城第一層――嘲笑の回廊へ」


リュカが剣を抜く。


「四天将か?」


男は優雅に一礼。


「《嗤笑のマルヴァ》。心を折る係だ」


壁の鏡が、一斉に揺れた。


映る。


王都の広場。


人々の視線。


「偽勇者」


石が飛ぶ。


リュカの胸がざわつく。


次の鏡。


ノアが膝をついている。


「計算ミスだ」


仲間を守れなかった未来。


ガルドが倒れている光景。


アルヴァンが再び魔族の鎖に繋がれている姿。


「勇者とは何か?」


マルヴァが笑う。


「選ばれた者か? 強い者か?」


鏡の中のリュカが言う。


「お前じゃない」


胸が締めつけられる。


足が重い。


怖い。


本当に、自分でいいのか?


マルヴァが手を広げる。


「資格なき者は、ここで砕ける」


鏡が割れる。


砕けた破片が形を変え、黒い人影になる。


それぞれの“もう一人”。


影のリュカが剣を構える。


「お前は勇者じゃない」


踏み込んでくる。


ガキンッ!!


本物と影の刃がぶつかる。


重い。


まるで迷いそのもの。


ノアの影は全ての魔法を先読みする。


ガルドの影は守らず、攻撃を選ぶ。


アルヴァンの影は鎖を引きずって笑う。


「戻れ」


混戦。


回廊が闇で満ちる。


リュカは押される。


影が囁く。


「カインの方が相応しい」


心が揺れる。


でも。


後ろで、ノアの声。


「リュカ!」


ガルドの盾が影を弾く。


アルヴァンが炎で道を開く。


自分は、一人じゃない。


リュカは歯を食いしばる。


「勇者かどうかなんて、今決めなくていい!」


影が止まる。


「今は――」


踏み込む。


「守るだけだ!!」


剣が光る。


「ブレイブ・スラッシュ!!」


閃光。


影が真っ二つに裂ける。


同時に、他の影も揺らぐ。


ノアが叫ぶ。


「核は本体だ!」


ガルドが突っ込む。


アルヴァンが炎を纏う。


リュカが前へ。


四人の攻撃が重なる。


「トリニティ・スラッシュ!!」


閃光が回廊を貫く。


マルヴァの仮面に亀裂。


「……面白い」


仮面が砕ける。


霧が散る。


笑い声が消える。


静寂。


回廊の奥に、黒い階段が現れる。


上へ続く道。


リュカは息を整える。


怖さは消えていない。


でも。


一歩、踏み出せる。


「行こう」


ガルドが笑う。


「まだ入口だろ?」


ノアが頷く。


「本番はこれから」


アルヴァンは静かに階段を見る。


「第二層だ」


四人は並び、闇の階段へ足をかける。


魔王城はまだ、牙を隠している。


だが。


第一層は、突破した。


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