第52話 文化祭の幽霊係
文化祭が近づき、2年3組は定番の「お化け屋敷」を出し物にすることになった。
ホラーが得意なCが中心になって企画が進み、教室のレイアウトも生徒のスマホでARで仮組みされていく。
「入って5秒後に音響、15秒後に人影を出す」など、タイミングは動画編集アプリでプランニング。
照明のON/OFFはIoT化されたスマート電球を使って、スマホから操作できるようにした。
「マジで本物っぽいって、ライブ配信したらバズるかもな」
誰かが言った。
当日——。
お化け屋敷は想像以上に好評で、来場者のTikTokにも続々と動画が上がっていった。
そのなかにひとつ、他と雰囲気の違う動画が混ざっていた。
「3年のF先輩が撮った“真の心霊映像”」とキャプションがついた短い映像。
そこには、お化け屋敷の最後の角を曲がるとき、白いワンピース姿の長髪の女がぬるりと現れ、Fのほうに手を伸ばしてくる様子が映っていた。
怖がりながらも笑っていたF先輩が、動画の最後でふと真顔になる。
「……あれ、あの子って誰?」
Cがその動画を見たとき、眉をひそめた。
「え、待って……あれ、誰がやってたの? 白ワンピの女」
他のクラスメイトが口々に言う。
「そんな役、割り当ててないよね?」
「てか、その場所は照明トラブルで立ち入り禁止にしたとこじゃなかった?」
念のため、Cたちは会場内に設置していた防犯カメラのログを確認した。
その場面——例の白い女が映っていた場所には、誰も立っていなかった。
ただ、映像解析アプリの顔認識機能をONにした瞬間、カメラが異常を検出した。
【名前不明の人物1名:補足できません】
その後、F先輩のTikTokアカウントに異変が起きた。
自分が投稿していないのに、深夜に動画が勝手にアップされていた。
タイトルは**「本物の幽霊係さんと会いました」**
その動画は、彼の部屋で撮られたようだった。
カメラは固定されておらず、誰かが持って撮影したようにブレていた。
最後に映ったのは、暗闇のなか、F先輩の寝顔を覗き込むように立つ、白い女の姿。
その顔には、文化祭で使っていたARフィルターの顔追跡エフェクトがなぜか適用され、にやりとした笑みを浮かべていた。
翌日、F先輩は学校を欠席した。
そして、校内の全スマート照明に連動する管理アプリに、誰も登録していないアカウントが1件、追加されていた。
名前の欄にはこうあった。
「幽霊係」




