第39話 道の駅のレビュー
今となってはどこまで本当か分からないけど、ネット上で噂されている話がある。
全国各地に点在する“道の駅”のレビュー欄。
Googleマップでも、地域ポータルでもいい。
そこに、ときどき妙な投稿者名が現れるという。
その名前が――
佐藤ツキオ。
レビューの内容はごく普通だ。
「野菜が新鮮だった」「景色が良かった」「トイレがきれい」
どれもありがちな感想文に見える。
ただし、不自然なのはその投稿頻度と場所の移動パターンだ。
月に1〜2回、別々の道の駅に名前を変えず現れる。
しかも、毎回アカウント情報が微妙に異なっている。
IT系のブログを運営しているMは、全国の道の駅レビューを分析していて、
この「佐藤ツキオ」に気づいた。
調べてみると、2016年から現在にかけて、東北から九州まで、合計60以上の道の駅に投稿していた。
投稿内容はすべて異なるが、
必ず「また来られて嬉しいです」「次は誰かと会えるかもしれません」などの含みを持った一文が末尾に添えられている。
そして――最大の違和感は、
この「佐藤ツキオ」のレビューに言及した投稿者たちが、
その投稿を最後に一切のネット活動をやめていることだった。
「今日、佐藤ツキオさんに会いました」
「優しそうな人だった」
「会えたので記念に投稿」
こうしたレビューを書いた人物たちのアカウントを調べると、
その後どこにもログイン記録が残っていない。
SNSもメールも止まっている。
まるで通信を断たれたかのように、突然。
そして決定的だったのが、ある事件との一致だった。
中には実名で投稿していたアカウントもあり、
佐藤ツキオに関して口コミをしていた1人の名前で検索をかけてみた。
すると――ある地方紙の記事にヒットした。
○○町の沢で男性遺体発見 事件・自殺の両面で捜査
本日未明、○○県△△町の沢で、男性の遺体が発見された。
遺体は、〇〇町にある公民館裏手の沢で地元住民によって発見され、通報を受けた警察が午前4時ごろに現場を確認。
身元は、所持していた免許証などから、○○県出身の会社員、**田◯昌◯さん(38)**と判明した。
遺体には目立った外傷はないものの、発見現場の状況や死因などに不明な点が多く、
警察では事件・事故・自殺のいずれの可能性も視野に入れ、慎重に捜査を進めている。
現場は山道から少し外れた場所に位置し、地元住民によると「普段は人が入らないような場所」とされている。
その公民館は「佐藤ツキオに会った」と書かれたレビューの道の駅と同じ地区だった。
掲示板やオカルト系まとめサイトでは、すでにこの話題は「都市伝説」として広まっていた。
「ツキオの名前を出すな」
「“会った”と書いたアカウントは全部止まってる」
「実名で投稿した人、新聞に出てた」
「あいつに会った奴から順に、消えてる」
中には、「佐藤ツキオ」の投稿写真を分析し、位置情報や反射に何かを見つけたと騒いでいた者もいた。
だが、そのYouTuberも動画を公開してから一週間後、突然チャンネルごと削除され、行方不明となった。
誰かが報復しているのか、
それとも、もっと別の“力”が働いているのか。




