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百の通知が鳴る夜に  作者: 葛城ログ
第4章 村落で繋がる怪
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第38話 災害速報アプリが鳴る家

村の北端に、ずっと空き家になっている家がある。


道から少し奥まった場所にあり、庭には誰のものともわからない農機具が錆びたまま放置されていた。

屋根は崩れかけ、窓ガラスの一部が割れており、玄関の扉には役場が貼った封印テープが残っている。


「もう何年も誰も住んでませんよ」

そう案内されたのは、災害警報システムの地域調査で村に来ていた技術員の男性だった。


彼の仕事は、各地の避難行動データを分析し、災害通知アプリの受信傾向を調べることだった。

実際に災害が起きたとき、どの家でどのタイミングで通知が鳴るかを、位置情報と照合して記録する。


その村でも、大雨や地震の際にスマホに届いた警報のログを集めていたのだが――

奇妙なことに気づいた。


その空き家で、毎回、通知が鳴っている。


GPSで判断された位置は、間違いなくその家の座標だった。

しかも、その通知は通常の遅延を超えて、どこよりも早く鳴っている。


調査用アプリのタイムスタンプは、他の家より平均3秒早く、場合によっては地震の“予測通知”よりも早く鳴った記録があった。


「誰か住んでるってことですか?」


「いえ、絶対に誰もいません。

 鍵は役場が管理してますし、電気も水道も通ってません。携帯の電波も、屋内ではぎりぎり届かないはずです」


にもかかわらず、ログ上は、その家の中で通知を受け取ったスマホが存在している。


おかしいのは、通知が届いた端末の識別情報が毎回違うことだった。


機種名も通信会社もバラバラ。

すべての記録に共通していたのは、「通知が鳴った場所が、いつも同じ座標」であることだけ。


調査員は、念のため、夜にその家の前まで行ってみた。


近づくにつれて、スマホの画面が一瞬だけ明るくなった。

通知もアプリも開いていないのに、ロック画面に何かが浮かんだ。


青いアイコン。

“緊急速報受信:2件”

開こうとした瞬間、それは消えた。


家の中から、かすかな音がした。


「ピロッ、ピロッ……」


スマートフォンの通知音だった。


彼はその場から離れた。

足が自然に、勝手にそう動いていた。


翌朝、役場に報告を入れると、返ってきたのはこうだった。


「あそこ、昔ね……大水で逃げ遅れた方がいたんですよ。

 スマホで助けを呼ぼうとしてたらしいけど、電波が届かなくてね」


「その方のスマホは?」


「見つかってないんです。

 水が引いたあと、スマホだけがどこにもなかったって」


その後も調査アプリには、不定期に同じ座標からの通知ログが記録されている。

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