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百の通知が鳴る夜に  作者: 葛城ログ
第4章 村落で繋がる怪
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第36話 歩数が減る道

Zは山間部の鉄塔設備を巡回点検する調査員だ。

体力維持のために日頃からよく歩く癖があり、数年前から歩数アプリを使って歩数と地図を連動して記録するのが習慣になっている。


使っているのは「ルートメモ」という無料アプリで、

始点と終点を地図上で指定すると、その区間の歩数・消費カロリー・勾配などを自動記録してくれる。

鉄塔巡視ルートの記録にも応用できるため、仕事と趣味を兼ねて日常的に使っていた。


その日、Zは県境の小さな村に来ていた。

午前中に山の中腹の鉄塔に登り、設備の状態を確認した帰り道、村の舗装道で農作業帰りの老人とすれ違った。


「兄さん、その格好、鉄塔の人かい? なら途中に小さい祠、あったろ」


Zがうなずくと、老人はふと声を潜めた。


「……あそこ通ると、歩数が減るって話、聞いたことあるか?」


「歩数が……減る?」


「行きより帰りの方が少ないどころじゃなくてな、全体の歩数が減るらしい。村じゃ“神返しの社”て呼んでるとこなんだけど」


気味の悪い冗談かと思った。

だがZは、その祠が確かに点検ルートのすぐ脇にあったことを思い出した。


舗装された道の突き当たりに、石段が十数段。

その上に、小さな屋根と鈴のついた祠。

誰もいないのに、花が供えてあった。


気に留めず素通りした場所だった。


Zはアプリの履歴を確認した。

試しに出発点(宿)と目的地(祠)を指定し、歩数を確認してみた。


画面には、こう表示されていた。


出発点 ー 目的地:3,046歩(距離 約2.3km)

目的地 ー 出発点:1,712歩(距離 約2.3km)


Zは一瞬フリーズした。

まったく同じ道を、来たときより1,300歩以上少なく歩いたということになる。


履歴マップを見ると、往復のGPSルートは重なっていた。

途中で近道をした形跡も、立ち止まった記録もなかった。

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