第31話 赤い幟(のぼり)の立つ道
この章より村での怪異を書いていきます。
これは、大学時代の同期だったZってやつの話――というより、Zがいなくなったあとにわかったことを、断片的に拾い集めた結果なんですが……
けっこう気味が悪いので、話しておきます。
Zは民俗学を専攻してて、卒論のために山奥の過疎集落に泊まり込みで調査に行ったんですよ。
場所は県境の外れで、バスも一日1本とか。スマホの電波もろくに入らない。
で、Zは調査の合間、朝方に村の外れを散歩したみたいで。
そのときにスマホで撮った写真が、調査共有フォルダに上がってたんです。
赤い幟がずらっと並んだ細道の写真でした。
1枚目は遠景。2枚目は斜めの角度から。で、3枚目が――ちょっと変だった。
他の幟は文字がかすれてたり、黒く塗り潰されてたのに、3枚目の1本だけ、はっきりZのフルネームが書いてあったんです。
それを見て、俺たちは「ネタか?」「自分で書いたんじゃね?」とか言ってたんですけど、Zからはそれについて一切コメントがなかった。
で、Zはその滞在から戻らなかったんです。
予定の日を過ぎても連絡が取れなくなって、大学の先生が村に問い合わせたけど「出ていったはずです」の一点張りで。
Zのスマホもそのまま、行方不明扱いになった。
後日、Zのクラウドにアクセスできた先輩がいて、写真の他に簡単なメモアプリの記録を見つけたんです。
そこに「幟の前で写真を撮った」「宿の主人に“見るとついてくる”って言われた」って、日記みたいな記述が残ってました。
そして最後の行が、こう書かれてた。
“靴が消えて、代わりに布巻きの棒があった”
……まさかとは思いましたよ。でも、その村では“赤い布を巻かれた棒”ってのが、昔の送り火の道具だったらしいんです。
あと、Zが泊まってたっていう宿、いまはもう更地になってるって話もある。
ちなみに、写真フォルダには今もあの3枚目が残ってるんです。
最近見返したら、Zの名前の下に新しい名前が書き足されてたんですよ。
漢字がつぶれて読めなかったけど、……なんか、自分の名前に似てたような気がして、あの日から、消せずにいます。




