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百の通知が鳴る夜に  作者: 葛城ログ
第三章 古家で繋がる怪
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第21話 スマートロックの開く夜

大学生のAは、卒業制作の一環で地域の空き家を活用するプロジェクトに関わっていた。彼が担当するのは、郊外にある古い平屋──数十年も空き家だった、苔むした瓦屋根の一軒家だった。


リフォームの資金は限られていたが、最低限の補強と掃除を終え、研究室の仲間とIoT機器を導入することに成功した。スマートロック、監視カメラ、室温管理、音声認識──最新技術で「誰でも安心して暮らせる古家」のモデルハウスに仕立て上げたのだ。


「これ、すげえな。鍵持たなくても勝手に開くの?」

同級生のBが感心していた。スマホの画面をタップすれば、玄関の鍵が静かに開く。Aは少し得意げだった。


だが、その初日の夜、Aのスマホが通知を鳴らした。


[2:04]玄関ドアが開きました。


監視カメラの映像を見ると、誰もいない。ただ、玄関のドアは確かに開いていた。そして十数秒後、ドアが自動で閉まった。


「……テスト用の誤作動か?」

Aはアプリを再起動し、ログをリセットした。


翌夜も同じ時間に通知が届いた。

[2:03]玄関ドアが開きました。

[2:06]玄関ドアが閉まりました。


三日目も、まったく同じ時間に、同じ現象。

カメラには誰も映らず、風も雨もなく、ドアだけが規則正しく動いていた。


Aは不審に思いながらも、原因が掴めず、週末に現地を再確認しに行った。鍵は閉まっていた。ドアも異常なし。念のためログを見ようとしたが、通信がうまく繋がらない。Wi-Fiの再起動が必要だった。


そのとき──


玄関の外から、**「カチャ」**という金属音がした。


一瞬、Aは凍りついた。

外に誰かいる? そう思ってカメラを確認しようとしたが、接続が切れていた。


恐る恐るドアを開けると、誰もいない。だが、敷石の上に、濡れたような小さな足跡が点々と続いていた。まるで裸足の子どもが雨の中を歩いたような、だが雨は一週間降っていない。


Aはその足跡を追わずに、黙ってドアを閉めた。


その夜から、通知は来なくなった。

スマートロックは作動しなくなり、接続も復旧できなかった。


奇妙だったのは、それを最後に誰一人としてその家の前を通らなくなったことだ。


隣家の住民も、郵便配達も、なぜかその家を避けるように歩く。声をかけても、何かを思い出せないような、困った顔をする。


Bにその話をすると、少し黙ったあと、こう言った。

「……あの家、そもそも地番ないよな。地図でも抜けてたし」


その言葉の意味を考えるたびに、Aは背筋が冷える。

毎晩同じ時間に開いたドアの先に、何が“戻って”きていたのか。


彼はもう、確かめようとは思わない。

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