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百の通知が鳴る夜に  作者: 葛城ログ
第二章 山で繋がる怪
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20/54

森の中のBluetooth

 Sはアウトドアガジェットが好きだった。

 ヘッドライト、防水スピーカー、スマートウォッチ、緊急用の衛星端末。山に行くたび、さまざまな機器を試してはレビューを投稿していた。


 その日もSは、スマホとBluetoothで接続された心拍計を装着し、静かな山中を歩いていた。

 標高はそれほどでもないが、谷が深く、電波は入らない。

 聞こえるのは風と小鳥の声だけ――のはずだった。


 「Bluetoothペアリング中……」


 突然、スマホの画面に表示が出た。

 登録済みの機器ではない。完全に初めて見る名前だった。


 デバイス名:『tasukete_01』

 信号強度:強

 通信先:不明


 驚きつつも、Sは「接続」を押した。

 するとスマホにファイル転送の通知が出た。

 “1件の音声メッセージを受信しています”


 イヤホンを接続して再生すると、耳に飛び込んできたのは、ひどく乱れた音声だった。


 《た……けて……おねがい……ここ……どこ……》

 《山の……中……誰か……きこえ……ますか……》


 Sは顔を上げ、周囲を見渡した。誰もいない。声は10代後半くらいの少女に聞こえた。

 送信元の位置を確認しようとしたが、GPSは使えず、Bluetoothの信号もすぐに消えた。


 その直後――


 「Bluetoothペアリング中:『tasukete_02』」


 今度は別のデバイス名。ファイルがまた届く。

 音声は先ほどと同じ少女の声だったが、よりはっきりしていた。


 《いま、うしろに……あなたが立ってる……ね?》


 ぞっとして振り向くと、そこには誰もいない。

 ただし、スマートウォッチが異常に心拍を検知し、バイブレーションが止まらなかった。


 慌てて下山し、山を離れるとBluetoothの通知はぴたりと止まった。


 だが、自宅に戻ったSのスマホには、登録した覚えのないデバイスが“接続済み一覧”に残っていた。


 デバイス名:『tasukete_03』

 通信中:はい

 最終接続場所:現在地(自宅)

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