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便利な『過去投影』

「こういう事情です」

「テツヤ……何という姿に……」

「まさか師匠の恥ずかしい姿をもう一度見ることになるとは思わなかったわ……」


 今ボクは神聖な神術の『過去投影』を使って、テツヤの女体化した映像を皆に見せてます。

 女体化と言っても、砂壁で動きを封じたテツヤに細工をしただけで、別に本人の性別が変わったわけではありません。見た目だけです。

 それにしても『過去投影』は便利ですが、精度はいまいちですね。砂が良い感じに肌色に近いので、本当にテツヤの首から下はセクシーな女性に見えます。


「あんな言い方をしたから、てっきり大事件が起きたかと思ったわよ」

「大事件ってなんですか?」


 ぱああああん!


 ……いや、別にボク、女性を辱める趣味は持って無くて、本当に何も考えず反射的に質問をしたのです。

 というか、殴ってきたのはシャルドネではなくマリーでした。


「マリー、そのゴルドを殴るのは私の特権。ちゃんと許可を取ってからゴルドを殴ること」

「ボクを殴る事に権利はありません。精霊をもう少し大事にしていただきたいです」


 シャルドネの怪力と比べたら痛くはありませんが、それでも少し驚くのですよ。


「シャルドネの怪力の突っ込みは痛いそうよ?」

「へえー」

「懲りずに『心情読破』を使わないでください。シャルドネも拳をこっちに向けないでください! 精霊虐待反対!」


 ため息をしつつ、『過去投影』を消そうとした瞬間でした。



「すまない、セイラの誤解も解けたから戻ってきた」

「お騒がせしました。すみま……」



「「「あ」」」



 部屋にテツヤとセイラが入ってきました。

 セイラの手には、新しいティーポットとお菓子の乗ったお盆がありました。

 が、それもストンと床に落ちて、バラバラになりました。


「……セイラ、あれはその……違うんだ。ゴルドの魔術? でああなってしまってだな、おい、その冷たい目を送らないでくれ。いや、そういう趣味は無いんだ。本当だ! 信じてくれ! ちょ、戻ってきてくれえええ!」


「……錬金術師さん、どうするのよこれ」

「今回は少し同情します(カチャカチャ)」

「ワタチも手伝います(ブオオオ)」


 またティーポットを組み立てつつ、フーリエが床を乾かしながら後片付けをする作業は慣れたものです。


 ☆


「すみません。てっきりテツヤさんの趣味かと思いまして」

「いえ、ボクが力で勝てないと思ってやった精れ……魔術なので、気にしないでください」

「それに、ティーポットも直してもらって、すみません」

「いえ、大丈夫ですよ」


 そんな会話をしてテツヤの汚名返上を行い、ようやく本題に戻りつつありました。


「さて、マリー。本題に入っても良いでしょうか」

「ええ、テツヤ女体化事件についてはおおよそ理解したから、本題に入りましょう」

「そのタイトルはやめろ……」


 と言っても、本題は『共通する腰痛』なんですよね。もっとしっくりする題名が欲しいです。


「その『共通する腰痛』に関してだけど、どうしてこの腰痛が重要なのかしら?」

「この腰痛の原因であった悪魔の近くには、この『ネクロノミコン』がありました。これには『国』についての記述があるのですよね」

「そうね」

「そして、今回ダガーに触れたことで腰痛が復活。そして『王』という単語の登場。もしかしてですが、ミッドの父親にこの『ネクロノミコン』を渡したのは、ガランの隣にいた男かと思います」


 率直な予想です。


 ですが、そうとしか思えませんでした。


 この『ネクロノミコン』の解読を終えた後、やりかたさえ分かれば問題無いのです。


「なるほどね。もしかしたら何らかの方法で悪魔の魔力を探知する方法もあって、それが消滅しかけたときに召喚……そんな事が可能なのかしら?」


 そう疑問をマリーが発するとと、答えはあっさりでした。それもフーリエの口からでした。


「これを使えば簡単です」


 そう出されたのは、一つの小さな粒。

 小さな粒からは禍々しい魔力が出ており、まるで悪魔の……まさか!


「そうです。これが『悪魔の薬』と呼ばれる物です」


「どうしてフーリエが持っているのですか?」

「一応ワタチはここに派遣された者です。犯罪者の中にはこの悪魔の薬の密売人もいましたので、調査用に持ってました」


 それは予想していませんでした。そういえば闇魔術専門ですし、調査用に持っていてもおかしくはないですよね。


「隠していてたわけではありません。もちろん魔獣を倒した後にでも話すつもりでした」

「そうでしたか。ちなみにどうしてこの薬が悪魔の魔力を探知できるのですか?」

「ワタチはあくまで知識を持っているので可能な方法ですが、この薬から発せられる魔力が消えれば、悪魔は消滅という形で繋がります」

「なるほど、つまり消滅しかけたときに召喚をしたのでしょうか」

「そうしか考えられません」

「同じ悪魔を召喚することって簡単なの?」

「この悪魔の薬の微小な魔力を媒体にすれば可能です」


 現実的ではありませんが、そうしか思えません。

 また、冥界が無い以上、消滅したらしばらくは留まる習性も利用したのでしょう。


「つまり、総評としてこうね」


 机を叩き、シャルドネが少し声高らかに言いました。



『ゴルドの腰痛治療は早すぎた』



「ちょっと待ってください!」


 長々と会議をして、出た結果はボクに優しさを感じさせないまとめですか!


「だってそうじゃない。ガランが現れたときに腰痛が再発すれば、一発で原因が分かったのに、未だ仮定のままなんでしょ?」

「そうですけどそうじゃありません! ボクの腰痛と草の地の平和を並べないでください!」


 なんだか情けなくなってきました。折角真剣に話し合っていたのに、話の腰を折られました。


「腰痛の話だけに?」

「そこ、『心情読破』を使わないでください!」

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