エルフの集落
「ゴルド様! エルフの集落から連絡が来ました!」
シャルドネの家で休憩と言う名の魔力収集をしていたところ、ドアがコンコンとなってフーリエが入ってきました。
そういえばシャルドネはこの子を最初に見て可愛いと言っていましたが、ボクには可愛いというのがいまいちわかりません。
こう、小動物的な感じなのを可愛いというのでしょうか。とりあえず頭を撫でておきましょう。
「なんて連絡が来たのですか?」
「えへへー、はっ! えっと、読み上げますね」
頭を撫でられたのが良かったのか、一瞬気が抜けた顔をしていたような。
『此度の魔獣退治、フーリエ殿から話は聞きました。約束通りエルフの集落に立ち入る事を許可します。ただし、フーリエ殿と同行し、ゴルド殿とシャルドネ殿のみとします』
ふむ、できれば魔獣退治を一緒に行ったテツヤと、エルフのセイラを一緒に連れて行きたかったですし、最低でもマリーは連れて行きたかったです。
「せめてマリーも同行はできませんか?」
「集落の代表に他三名の名前を言ったのですが、入れるのは二人だけだと……すみません」
ぺこりと頭を下げるフーリエ。なるほど、この仕草が俗にいう可愛いなのでしょうか。
仕方がありませんか。元々今回エルフの集落に行く目的は、神に対抗する為の術を探しに行くので、必要最小限で行くとしましょう。
「では、案内をお願いしても良いですか?」
「はい、いつにしましょう?」
そうフーリエが問いかけると、買い出しに出ていたシャルドネが戻ってきて一言。
「今からよ!」
☆
村から南に歩くと、小さな森がありました。
そこには妖精住んでいる。
良い子は迷わず引きかえし
悪い子迷って帰れない。
森には怖い妖精が。
じっとのぞいて見ているよ。
「……なんですか? その歌は」
シャルドネが南にあるエルフの集落へ向かう途中、何度かつぶやいていました。
「小さい頃によく聞かされた歌よ。母さんはこの歌を子守唄代わりにして、寝かせていたの」
「いや、地味に怖いですよ。よくこれで寝れましたね」
悪い子が迷ったら出れないんですよ。怖くて子供は寝れませんよ。
「それがね……爆睡だったそうよ」
「大物ですね。シャルドネは」
「でもゴルド様、今の歌の意味を子供の頃にはあまり理解出来ないかもしれません。その心地よいテンポだけで眠りにつけるのかもしれませんよ?」
「なるほど。つまりシャルドネはバ(パーン!)カなんですね……すごいですね、まったく動きが見えなかったです」
軽く頭を叩かれました。
「失礼ね。理解はしてたわよ。でも、母さんがこの歌の最後にこう言ったのよ」
――あなたは悪い子ではないから安心して眠りなさい――
人間は時に魔術や神術ではできない暗示をかけます。心を落ち着かせたり、時に心を破壊することはできますが、それも一時的な物です。
この人間の魔力の無い暗示は、どこから生まれ、どうやって使う事ができるのか、今度タプルあたりにでも聞いてみましょうか。
「さて、到着となります。ここがエルフの集落です」
フーリエの指を刺した先は、変わらず森が広がっていました。集落というか、ただの森です。しかしボクはその膨大な魔力に気づいていました。
「凄い『認識阻害』がかかっていますね」
「そうです。エルフの集落に住むエルフたちは、全員が魔術を使えるので、交代で認識阻害に魔力を送っているそうですよ」
「なるほど」
そういえば離島の『認識阻害』の魔力も強力とはいえ有限です。いつまで持つかわかりませんが、近いうちに魔力を送ってあげないといけないでしょうか。
「……ねえ、ゴルド」
突如、声をかけてきたシャルドネが暗い声でボクに話しかけてきました。
「どうしました?」
「ゴルドには普通の森に見えるのかしら?」
「どういうことですか?」
あ、そういえばシャルドネは『認識阻害』が効かないのですよね。となると、エルフの集落に入り放題ですね。
「……って、今なんて?」
「もう一度聞くわよ。『ゴルドには普通の森に見えるのかしら?』」
「……フーリエ、エルフの集落にはどうやって入るのですか?」
「え、あ、はい。このエルフの代表から渡された鈴を鳴らせば、一時的に認識阻害を解くことができます」
「鳴らしてみてください。そして、『両手を上げてください』」
フーリエは頭に疑問を浮かべている表情をしつつ、ボクの言う通り手を上げながら鈴を鳴らしました。
その鈴の音は、魔力を鎮める効果があるのか、目の前の『認識阻害』が少し薄れてきました。
同時に『今』のエルフの集落が見え始めてきたのです。
「こ、これは!」
そこには焼けた森、そして燃え続けている炎と湧き出る煙が見え、ボク達の前には数十のエルフたちが弓を向けて構えていました。
「身分を証明せよ! 外より来られた者たちよ!」




