[手合わせ] 錬金術師ゴルド 対 冒険者シャルドネ
シャルドネが構えて、ボクの目の前に立ちました。
ミリアムとガナリは少し離れた場所でボク達を見ています。
「本気ですか?」
「ええ、本気よ。なんなら『しんじょうどくは』で私の考えを覗いてみたら?」
言われた通りにシャルドネへ相手の心を読む『心情読破』を使いました。
使ったのですが……。
「……殺意。憎しみ。それらが入り交じって、よく分かりません」
「当然よ。師匠をこの手で葬って、フーリエを目の前で消された。この場で正常な方がおかしいわよ」
その言葉に、ミリアムが若干眉をひそめました。
「でもね、ミリアムの言っていたことも正解だと思うの。ゴルドは頂点の神とやらに勝たないといけない。だったらこの場でフーリエとは別れた方が良いと思うわ」
「ですが、十分な戦力だと思って」
「覚悟が足りないって言ってるのよ。いつから人間の感情を持ち始めたのかしら?」
!
確かにフーリエに『光球』が放たれたとき、自分の目的を忘れてました。
しかし、フーリエがいることでボクの能力が落ちたとしても、戦力としては補えるほどです。
結果論だけで言えばフーリエを失うのは痛いです。
「そもそも、フーリエはこの世界の人間よ。ゴルドの事情に巻き込む方が勝手じゃ無いかしら?」
「そうですが!」
「だから、ここで私がゴルドの実力を見極めてあげるわ。この冒険でどれほど強くなったかね!」
地を蹴る音と共にシャルドネはこちらに向かっていました。動きが速すぎです!
「つ、『土壁』!」
「遅い! てえい!」
ボクの生成した『土壁』に穴が空きました。って、今までは吹っ飛ばす程度だったのに、穴ですか!
「人間の本気は精霊を超えるのかしら? だとしたら、私がその神とやらと戦った方が良いんじゃないかしら?」
「っ! それは」
ボクはこの冒険で、初めてシャルドネに憤りを感じました。
超えてはいけない線。譲れない戦い。それらを誰かがやるなんて、ボクが許しません!
「それはボクの役目です! 『風爪』!」
「ふふ、なら私を倒しなさい! てえええい!」
簡単に避けるシャルドネ。やはり人間の中でも強い……いや、ガランとテツヤがいない今、この大陸で一番強い人間はシャルドネなのではと思います。
「なら、『認識阻害』!」
「!」
周囲から『そこにある』という認識を阻害する『認識阻害』を使って、ボクの姿を隠します。
「へえ、今の私なら有効ね。ゴルドの姿が見えないわね」
チャンスです、少し強めの精霊術を……。
「時々だけどね、そこよ! てえい!」
「なっ! 『土壁」!」
土壁が無ければボクの顔はシャルドネの蹴りによって大変な重傷を負っていたでしょう。壁となった『土壁』は真上上空に飛ばされました。
「ふう、精神統一。師匠の教えはやっぱり凄いわね」
「やっぱりテツヤの世界の武術は凄いですね……そちらにも神に抗う術があるのではと思います」
「尊敬している暇があるなら、身を守る準備をした方が良いわね。せーっの!」
何を言っているか分かりませんでした。
しかし、答えは案外すぐにやってきました。
上空に打ち上げられた『土壁』が、構えているシャルドネに向かって落ちてきていたのです。
「飛んでけえええええ!」
ぱああああん!
そんな音が鳴り響き、ボクへ飛んできました。
凄まじい勢いの土壁。これは『鉄壁』でも防げません。素直に飛んできた土壁の魔力を解除して。
「考える時間は与えないわよ!」
飛んでくる『土壁』と同時にシャルドネが向かってきていました。
若干『土壁』の方が速い様に見えますが、どちらも防ぐ時間はありません!
何か良い方法は!
そこで、ボクは『ミリアム』を一瞬見ました。
確かミリアムの妹フーリエは以前『魔力反射』を使った気がします。
シャルドネは言いました。
この冒険でどれほど強くなったかと。
そしてシャルドネはどんな時も周囲を考えた行動をしていました。
例え相手が実の父だろうと、恩師だろうと、シャルドネは自分の手で闇に染まった二人を倒しました。
でしたら、ボクも覚悟を決めなければいけません。
「神術の書物に賭けます! 『魔力反射』!」
鞄に入っている神術の書物が光りました。そして、飛んできた土壁は真逆の方向へ飛ばされます。
「返して来た? 危なっ!」
瞬時にシャルドネは蹴りで『土壁』を破壊しました。
「『アイス・マット』!」
今度はマリーから貰った魔術書が光りました。
シャルドネの足下に氷の床を生成しました。
「はっ! こ、これは!」
バランスを崩しました。これが最後の好機でしょう!
「とどめです! 『砂壁』!」
砂壁でシャルドネの動きを封じます。そして。
「鉄の生成!」
鉄を生成し『砂壁』を固めます。
「なっ! う、動けない!」
いつもならくすぐりの刑を実行しますが、今日は色々貸しを返すつもりで別の刑を実行します。
「シャルドネ、ボクに何度殴ったか覚えてますか?」
「は、はあ? そんなの覚えてないわよ」
「ボクもです。だから、今までの分とボクの覚悟をこの一発に込めたいと思います」
そして、『砂壁』の砂に対して、強く念じます。
「少し痛いと思いますが、我慢してください」
ごっ!
「がっ!」
砂壁を覆っていた鉄が、少し盛り上がりました。思った以上に強く念じたようですね。
ですが。
「シャルドネ、ありがとうございます。色々とお世話になりましたよ」
「ふふ、上出来よ。今回は私の負けにして……あげるわ……がはっ」
口から少し血を流し、シャルドネはその場で気絶しました。
……シャルドネだから生きていますが、他の人間だったら腹部に大きな穴が空いてますね。力加減は難しいです。




