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姉の判断

「お久しぶりです。ゴルド先生」

「まさかもう一人来るというのはミリアムでしたか」


 予想外でした。てっきりこの世界の代表的存在をガナリが呼んだのかと思っていましたが。


「雪の地でマリー様の部屋の掃除をしていたら、声が聞こえたので」

「え、雪の地ですか?」

「はい。マリー様がいなくなった今、雪の地の魔術研究所の代表はワタシになりました」

「そうだったのですね」


 後任がミリアムだったとは……それほどこの姉妹は実力があるのでしょう。


「み、ミリアム姉様。お、お久しぶりです」

「久しぶり。元気にしてた? と言っても、『さっきぶり』だけどね」

「うっ」


 さっきぶりというのはどういう事でしょう。もしかして草の地からここに来たのでしょうか。


「さて、ゴルド先生。ワタシがここに来た理由は二つあります」

「二つですか?」

「はい。一つはその『神術の書物』と『ねくろのみこん』についてワタシの知る限りのお話をしようかと」

「何か知っているのですか?」

「はい。雪の地の魔術研究所の書物に解読する方法があったので」

「それで、もう一つは?」


 そう疑問を投げた瞬間でした。後ろからシャルドネが歩いて来ました。


「あれ? ミリアム? 久しぶりね!」


 右手を挙げて、挨拶をしようとした瞬間でした。



「『光球』」



 躊躇いもない。一言も話す間もなく『光球』は放たれました。そして放たれた先は。



「……姉……様?」



「ふ、フーリエ!」


 ボクは反射的に倒れるフーリエを抱きかかえました。


「フーリエ! 大丈夫ですか! フーリエ!」

「がはっ、結構痛いです。ですが、なぜ……」


 二人って仲が悪いわけでは無いですよね! なのにどうして!


「これも理由はあります。一つは『悪魔』のフーリエが一緒にいることで、ゴルド先生は本気が出せないからです。実際その目にかけている物が証拠ですよね?」


 確かに眼鏡はそうですが、これくらいは別に……。


「もう一つは……フーリエから話しますか?」


 今にも消えかかっているフーリエが口を開きました。


「はあ、はあ、ゴルド様。ごめんなさい。えへへ、『ねくろのみこん』で沢山の『どっぺるげんがー』を作ってしまいました」


 え、今、なんて?


「今、この大陸には『たくさんのフーリエ』が存在します。もちろんこの状況を『たくさんのフーリエ』が把握しています。ワタシはさっき、『雪の地』でフーリエと出会ったのです」

「何故そんな事を!」


 記憶の共有の負荷は大きいはずです。今でもたくさんの風景を見ているはずです。

 それなのに、どうして!


「ゴルド様の……かはっ、お役に立ちたかったからです」

「声を出さないでください! ボクの魔力を吸って良いですから!」


「させるわけ無いじゃないですか。ゴルド先生。『光球』」


 さらにフーリエに向けて一発、光る球が放たれました。


「があ!」

「やめてミリアム! 妹でしょ!」

「ええ、妹です。この世界で一番好きな妹です。だからこそ、教えなければいけなかったのです」


 ミリアムは構えました。そして『光球』を放ちました。そして話しました。


「この先は、まだ子供には早いと」


パシュッ。


 最後に放たれた『光球』で抱えていたフーリエは灰になり、手からこぼれて消えました。最後にボクの目を見て、一粒の大きな涙を流しながら。


「父様。安心してください。『大陸中のフーリエさん』は元気です。泣いていますけど」

「ガナリは黙っていてください。少なくともボクの手の中にいたフーリエは消えたのです」

「ですが、これも必要なことなのです」

「だとしても!」


 そう言った瞬間でした。

 シャルドネがボクの目の前に立ちました。

 そして、ボクの顔の前に右手を突き出しました。


「ゴルド、手合せしましょう。きっとこれが、最後の手合せよ」

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