神術の書物、そして予期せぬ再会
「神術とは……神が使ったとされる術であり……神が使う術では無くなった……」
ノームの集落で獲得した神術の書物を解読しても、直接神術に関する情報はありません。
理論や歴史ばかりで、使い方や種類が無いため、『頂点の神』が何を使ったかもわかりません。困りました。
「難しい顔して、そんなんじゃ目標達成は遠いんじゃない?」
「シャルドネ……ええ、カンパネはこの本をボクに探させて何をさせたかったのでしょう」
「さあ。神の考えなんて今まで想像したことなかったわ。あ、精霊の考えも想像したことなかったけどね」
ふふっと笑みを浮かべるシャルドネ。そういえば気になっていたことがありました。
「テツヤの事は、その、大丈夫なのですか?」
「そうね。正直まだ信じられないわね。しかも私の手で葬ったのよ。これが正しい選択かどうかなんてまだ分からないわ」
ダガーを抜き、銀色の刃を見ると、そこにはかすかに赤い塊が残っていました。
「……拭き取らないのですか?」
「何度も洗ったけど落ちないのよ。これも呪いかしら?」
「……『魔力探知』……なるほど」
テツヤは悪魔に取りつかれました。そして血は洗っても落ちない。そして『魔力探知』でのこの反応は『悪魔の魔力の血』ですね。
「やらなきゃよかったです」
「え! 急に何よ!」
「いえ、ちょっと肩こりがし始めたので……少し休憩してきます」
「そう、あ、だったら気晴らしにフーリエの所に行ったら?」
「フーリエの?」
☆
ボクが作った鐘の周囲は強力な『認識阻害』によって守られています。
今思えば少々使いすぎたかなと思えるほどの結界となりましたが、まあ結果よければなんとやらですね。
フーリエは鐘の近くに寄れないので、少し離れた所で『ネクロノミコン』を読んでいました。
「フーリエ。ここにいたのですか」
「あ、ゴルド様。解読は終えたのですか?」
「完璧と言いたいところですが、なかなか困難です。フーリエに力を借りたいですね」
「闇の魔術専門なので、神術となると難しいと思いますが……そもそもその『神術の書物』はワタチには持てません」
若干輝く『神々の書物』は悪魔に微々たる影響を及ぼすのでしょうか。フーリエは苦笑しました。
「そうでしたか。ではちょっとあっちへ置きに」
「あ、大丈夫です。触れなければ問題ないので!」
気を遣わせてしまいましたか。と言ってもトコトコ近くに来るフーリエを今更寄るなとは言えません。
「その『ネクロノミコン』の解読は終えたのですか?」
「ワタチが知っている魔術や精霊術の解読はできました。しかしどれもこの本を持っていないと発動できません」
「とても特殊な本なのですね」
「そもそもこの本がなぜ作られたかも不思議です」
「と言いますと?」
「この本はこの世界でも無く、ゴルド様の住む世界の物ではありません。おそらくマリー様の世界の物です。ですが、マリー様の世界で作った利点がありません」
え、フーリエって本当に十数歳の少女でしたっけ?
「ワタチの使っていた『深海の邪神』についても記されていましたし、もしかしたらこの世界には何か秘密が隠されているようにも思えました」
「さすがは研究者と言いますか、でも熱心になりすぎて徹夜とかしてはいけませんよ?」
「はい! 大丈夫きゃっ! ……大丈夫です!」
……きゃっ?
「……フーリエの本物で何かあったのですか?」
「は、はい! エルフの集落で虫が飛んできたので、驚いただけです!」
「記憶の共有も大変ですね」
「でも、ゴルド様と一緒に旅を続けれるなら本望です!」
そう言って目をキラキラ輝かせるフーリエ。
すると近くから声が聞こえました。
「いつまで旅を続けるの? フーリエ」
聞き覚えのある声。フーリエと少し似ていますが、少しだけ違います。
「あ……あわわ……なんでここに来ているのですか!」
驚いたのはフーリエでした。
「ミリアム姉様!」




