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4章

4章 モストロ帝国壊滅未遂事件


あれから1ヶ月と1週間が経った日、「し、失礼しまーす…」と紅色の髪をした、ヘッドホンを首にかけた龍の少女がデバッグの本拠地に足を踏み入れた。


ズイレンは「こんにちは!なんの依頼ですか?とりあえず、座ってください」と尋ね、椅子に座らせる。「えっと…私の国が今ヤバいことになってて…ん?」と、建物の奥を見つめる。デバッグの組織内はズイレンとルビーが再開してから改造しており、組織に入ったらまずあるのが受付、その奥にリビングがあり、その間は透明なパーテーションで区切られている。という感じだ。


そして椅子から立ち上がり、「お兄ちゃん!?」と声をあげた。



コウはそれに反応し、「椿…!?椿じゃないか!!」と言い、少女のところに向かった。この少女は椿というらしい。


「お兄ちゃん…!この3ヶ月ずっと何してたの!?探してたんだよ!」と椿は驚きつつ兄との再開に喜んでいるようだった。


「コウお前、昔の記憶が戻ったのか!?」とルビーがコウに問いかけると「うん、完全にとはまだいかないけど、思い出した。」と言ったのち「この子は僕の妹の椿。椿の双子の兄にソウっていう青龍の子と、僕の双子の弟に花蓮っていう黒龍の子が居る」と話しだした。


「というか…国が大変なことになっているって、何があったの?椿」とコウは椿に訊く、椿は「そうだった!」と言い、咳をした後語りだした。


「最近、セラさんっていう白龍の様子がおかしいんです…力が暴走しそうになってる予兆があるというか、医者に聞いても、暴走する予兆だって言うし…それにセラさん、元々200年前の国家直属戦闘部隊の隊長だったから、すごく強いんですよ…いつ暴走するかわからないから、依頼しに来たんです」


「セラが…わかった。その依頼、受けるよ。ズイレン、いいよね?」とコウはズイレンに確認を取った。ズイレンは「いいよ!身内の困りごとでしょ?それに…暴走は起こして欲しくないから…」とズイレンは答えた。


____________________

人物紹介


霊獣椿

コウの妹の赤龍。元気溌剌な女の子。首のヘッドホンは兄のコウからのプレゼント

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モストロ帝国に着いたデバッグのメンバー、椿の話によるとセラという白龍は王の城にいるらしい。早速城に向かい、案内された部屋の中に行くと、茶髪の白龍が椅子に座っていた。


「ああ椿、その人達が今回依頼したって人たち?デバッグに依頼したんだね。」


セラの声は少し掠れており、見た目もやつれている。正常ではないと一目でわかる状態だった。


「そうだよ!ていうか体調は大丈夫?」


「うーん、大丈夫って言いたいけど…ちょっと悪いかな…看病はソウ君にお願いしてるけど、正直ソウ君は僕に勝てない。だからそろそろ断ろうとしているところなんだけど」


セラがそう言うと、コウが「それじゃあ僕たちがやるよ。ズイレン…リーダーもいいって言ってるし」と優しい声で言った。


緑色の龍の少年が「失礼します。セラさん、昼ごはんをお持ちしました」と言い、部屋に入ってきた。周囲を見渡し、ズイレン達の姿を見ると顔を赤くし立ち止まった。


「あ、紹介するね!私の双子のお兄ちゃんのソウ!コミュ障だから自己紹介できないと思うから!」と椿が言うと、ソウは「そ…そんなことないよ…俺だってちゃんとできるから…」と小声で呟いた。


「っていうかコウ兄、どこで何してたの?」とコウに向かってソウは語りかける。コウは申し訳なさそうな顔をしながら「ごめんね。記憶をなくして地球に飛ばされてて、その間にデバッグに世話になってたんだ。依頼を受けて色んな場所を転々としてたよ」と答えた。


「ってことはこの方達がコウ兄の面倒を見てくれてたってこと?」と呟いたあと、「…すっすすすすみません!!えと…今までコウ兄の面倒見てくれてありがとうございます!!」と顔を耳まで赤くしてズイレン達に深くお辞儀をした。


ズイレンは「別にいいって言うか…私たちの方が世話になってたから!コウの知識にはすごい助けられたよ!」と手を横に振りながら言った。

「というか…あれだな。コウの家族が見つかったってことは、コウとはもうお別れか…この3ヶ月間あっという間だったな」とルビーが寂しそうに言った。「色んなことがあったよなー特に印象深かったのはコウがハッキングの依頼を一瞬で肩付けちゃったことだな!あれは凄かったな!」とノウは思い出を振り返った。コウはそれを聞いてハッとし、少し黙り考え込んだ。


「ソウ、看病はコウ君達に頼むことにした。もう自由にしてていいよ。今までありがとう」とセラはソウに言うと、ソウは「了解しました。もし能力が暴走してしまった時にもそっちの方が安心ですね。」と言い、部屋を出て行った。


「それじゃあ、セラさんの看病任務、やりましょう!」とコウがデバッグのメンバーに呼びかけると、3人は「おー!」と声を合わせた。


そこからセラの看病を続けていた。戦闘能力を持たない城の従者は別のところに避難させた為、人員が居ない。ご飯を作り運ぶ、体温を測る、様子を訊くなどを繰り返し3日が経った。


3日が経ったある日、セラの体調がぐんと悪くなった。医者やコウの発言によると、能力暴走の直前には体調が著しく悪くなるらしい。激しい頭痛がすると本人は言っており、それも暴走の前ぶれらしい。実際、ズイレンもそうだったので信ぴょう性があった。


ドアをノックし、「セラさん、入るよ」とコウが言い、ドアを開けるとコウの顔に一瞬で傷がついた。中を見ると、ボロボロの部屋に、地面に倒れているルビーと息を荒くしているセラが居た。


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人物紹介


セラ・ヴァイス

元モストロ帝国の国家直属戦闘部隊の隊長。基本的にほんわかとした性格


霊獣ソウ

霊獣家の三男であり、椿の双子の兄。コミュ障で身内以外にはわかりやすく言葉が詰まる。

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セラが暴走したと一瞬で理解したコウは、黄龍の障壁を部屋に張った。

だが、その障壁も長くは続かない。他の部屋に居たズイレンとノウを急遽呼び、戦闘を開始した。


「セラさんの戦闘スタイルは僕が知っている!暴走したとしていてもある程度は予想できる!僕の指示に従って!」とコウは呼びかけた。


「まずはルビーの救出だ!このままじゃあルビーが死んでもおかしくない!」


現在のセラは瞳孔が開き血走っており、全身に力が入っている。とても意思疎通がとれる状況ではない。倒れているルビーはよく見ると腕がなかった。セラの口の周りには血がついていた。宝石属の天人はとても体が硬い。それでも腕をちぎって食うことができるということは相当強い証拠だ。

ルビーはまだ息をしている。手遅れではないと判断したコウはルビーの救出の指示を出した。


ズイレンは頷いたあと、ルビーのところに向かった。途中でセラに背中を掴まれたが、強行突破でそれを振り払った。その影響でマントが破れ、飛べなくなってしまった。だがルビーのところまで辿り着き、ルビーを横抱きした状態で部屋から抜け出そうとしたが、セラがまたこっちに向かって走ってきた。ズイレンはそれを避けようとしたが、地面に倒れ込んでしまった。


セラはズイレンに向かって攻撃をするが、ズイレンはそれをルビーを守りながら避ける。数撃セラの攻撃を受けたが、立ち上がったあと部屋の外に出ることに成功した。


ノウはルビーを回復した。細かい外傷はすぐに回復できたが、失った腕の回復には時間がかかる。


「ここじゃあまともに戦闘ができない!セラを広間に出す!」


ええ!?とズイレンは驚いた。確かにこの部屋は6畳くらいの狭い部屋だ。まともな戦闘など望めない。だが外に出すとルビーやノウがセラに食われてしまうかもしれない。


「おとりは僕がやる!ズイレンはセラさんの後からついてきて!」と言ったが、ズイレンは「でも…申し訳ないけどコウは足が遅い。食われる可能性が私よりも高いと思うんだけど…」とズイレンは言う。コウは知能が高い代わりに身体能力が低い。だからズイレンも心配しているのだ。


「大丈夫、龍の姿ならある程度のスピードが出せるから!」とコウは応える。コウは龍の姿になり、セラに近づいた。龍の肉はとても美味しく、それは同族からでも同じ評価だった。だから今のセラにとってはとても誘惑になるものだった。コウ自身もそれを理解しているからこその行動だ。


「ノウは部屋の中に移動して、ルビーの回復に集中して!」とノウに指示を出した。


コウとセラは広間まで移動し、ズイレンもその後ろから追いかけた。

_____________________


セラを無事広間まで連れてくることに成功したコウとズイレンは、セラとの戦闘を始めた。


「僕の黄龍の障壁でセラさんを隔離する、隙間を作るからその間から光線を何発か打って攻撃して!」とコウはズイレンに指示を出した。


コウは黄龍の障壁を6発発動させ、セラを中心に空中に立方体を作った。その角には少し隙間があった。


ズイレンはその隙間からグリーンレイを打とうとしたが、わずかに高さが足りない。光線と言っても、長さには限度があった。マントがさっき切れてしまった為、飛べなくなっていたのだ。マントの生成に少し時間がかかるため、攻撃をすることは不可能に近かった。


セラは障壁を破り、外に出てしまった。コウ目掛けて飛んで行った。コウは障壁を作り抵抗しようとするが、それをセラはすぐに破いてしまう。ついにはセラに引っ掛れ顔に大きい傷が付いてしまった。次は腹を引っ掻こうとするが、後ろから走ってきたズイレンがコウを横から押し、セラの攻撃を庇った。引っ掻き傷はとても深く、内臓まで届きそうなほどだった。



一方、椿、ソウ、花蓮は同じところに居た。速報でセラの能力が暴走したことを知った3人はコウたちの心配をしていたが、花蓮はあることを言い出した。


「俺が城に行く」と


椿は「花蓮兄!?そんな無謀な!お兄ちゃん能力持ってないでしょ!?それに戦闘経験も…」と言ったが、花蓮は「訓練はしてきた。ソウ、武器を貸してくれ。その薙刀を」と言う。ソウは流されやすい性格をしている為、困惑しつつも「う、うん。わかった」と言い自分の武器を渡してしまった。


花蓮は龍の姿になって城に向かった。



ズイレンは無理やり立ち上がり、能力で予め作ってあったロープを使いセラを拘束した。ロープはとても強力に作ってあった為、セラも中々解けなかった。


コウがズイレンとセラの方向に向かおうと走るが、距離が離れているのと、体力が切れてまともに走れない。少し離れた距離から光線を撃ち、当たったがどうしても威力は弱まってしまっており、少しセラの皮膚が焼けたくらいだった。


そうしている内に茶髪の紫の目をしている黒龍、花蓮が城にたどり着いた。


花蓮は薙刀を持ち、セラに襲いかかる。その攻撃は避けられ、背中を引っ掻かれてしまった。


その傷はズイレンと同じくらい深かったが、花蓮には戦闘の実践経験が無い。ズイレン以上に苦しそうにしながら花蓮は「セラさん…!!思い出してください…!」と言い、武器を持ちながら祈りの手をした。どういうわけかその場に居た全員の動きが止まり、辺りが草原に変わり虹色の花が生えてきた。虹色の動物が数匹現れ、その光景はまるで楽園のよう。現れた動物がセラに次々と飛びつき、咀嚼音を鳴らす。動物が退いたあとには、暴走が治ったセラが倒れていた。その状況は、コウ以外は全員理解しかねるものだった。


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人物紹介


霊獣花蓮

霊獣家の次男であり、コウの双子の弟。全能の能力の可能性がある。

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しばらくしてノウとルビーが駆けつけ、ノウはズイレンとコウと花蓮の傷を回復した。ルビーは倒れたセラを見て「セラさん、倒せたんだな」と言った。


コウはそれを否定し、「いや、僕たちは倒せていない。今ノウが回復している僕の弟、花蓮が倒した…というよりかは暴走を解いたんだよ」と少し考えながら言った。


「ごめんな、俺何にもできなくて」と謝罪するルビーに対し、ズイレンは「腕食われてたんだからしょうがないよ。無理しない方がいいよ」と慰めた。


セラの目が覚め、「ありがとう国王様、そして皆。おかげで暴走が治ったみたいだ」と言った。ノウは「え、国王様?誰だそれ」と疑問を持ったが、花蓮が「ああ、お前らは知らないか。コウはこの国、モストロ帝国の帝王なんだ。」と答えた。デバッグのコウ以外のメンバーは驚き、「てっ帝王様!?すっすみません!!今までタメ語なんてきいちゃって!!」とズイレンはコウに土下座をした。


「そんなそんな!!顔を上げてよ!!」とコウは焦ってズイレンに呼びかけた。「今までの恩もあるしさ、それに僕地位とか気にしないで欲しいタイプだから!!」とコウは言った。


「それよりさ、急だけど僕の記憶が戻った記念とか、セラさんの暴走が治った記念とか含めて、2日後パーティーでもやろうよ!僕もみんなに伝えたいこととかあるからさ」とコウは提案した。「一国…しかもモストロ帝国みたいなでっかい国の帝王とパーティーとか凄いな…まあでも、楽しそうだし、乗ったぜ!」とノウはノリノリだった。


そうしている時に、空から1つの宝玉が降ってきた。ズイレンはそれをキャッチし、「これが2個目の宝玉…」と少し嬉しそうにしていた。その宝玉は黄金の色をしており、とても綺麗なものだった。

_____________________


2日後、コウはモストロ帝国でパーティーを開いた。ズイレンとノウはドレスを着て、ルビーはタキシードを着ていた。その場にコウはまだ居なかった。


ズイレンは「ルビーどう?似合ってる?」とルビーに訊いた。ルビーは「あ、ああ。似合ってるよ」と少し目を逸らしながら言った。「それは嬉しいや!このあと踊りがあるらしいから一緒に踊ろうよ!ルビー!」とルビーに追撃をした。ルビーは「えマジで!?わ、わかった」と少し驚き、照れながら言った。


城の扉が開き、ルビーは「コウ登場か!?」と楽しみにしている様子だった。実はコウは「僕はこの国の帝王だし、少し豪華な衣装で参加するよ。そっちの方が国民も湧くだろうしね」と言っており、ルビーはそれをどんな衣装かと楽しみにしていたのだ。そこに現れたのはタキシード姿のリラとリグア、ドレス姿の美鈴だった。


「は!?お前らなんでいんの!?」とルビーは驚きながらリラに尋ねた。今回リラと美鈴は事件解決に不参加、居る意味がわからないのだ。リラは「実はセラに薬提供してたの俺なんだよ。で、セラ専用の能力の検査機を作ったのは美鈴、で能力について研究してたのがリグア。だから呼ばれたってわけ。どうだ、似合ってるだろこのタキシード」と言っていた。ルビーは少し残念そうにため息をし「はいはい似合ってるよ…」と言い放った。リラは「そんなコウじゃなかったからって残念そうに言うなよ〜でも似合ってるって言葉は嬉しいぜ。ありがとな」と少しテンション高めに言った。


とりあえず来たメンバーは食事を食べた。セラもパーティーに参加していた為、「おかゆ以外のご飯久しぶりだ〜!」と言い、誰よりも食事を楽しんでいた。


それに反してリラは何も食べようとしない。ルビーが「お前なんで食事取らないんだよ。腹空かないのか?」と好物の牛肉を食べながら訊くと、リラは「最近ちょっとダイエットしててな。だから食わないんだ」と答えた。じゃあなんでパーティー来たの?という顔で、ルビーは「あっそ。じゃあお前の分のステーキも貰っちゃうわ」と言い放つと「ああ食え食え、よく食うやつは育つって言うからな」と言った。「お前俺と歳1つしか変わらないだろ。」とルビーが言うと、リラは「まあそうだな」と少し笑いながら言った。


ダンスの時間が来て、ズイレンとルビー、リラと美鈴と組みを組んだ。

リグアはダンスを見ていようとしていたが、ノウに「なあ」と声をかけられた。どうした?と訊くとノウは「一緒に踊れ、踊る相手が居ない」と言った。「そこら辺のやつと踊ればいいだろ。他にいるのになんで俺なんだよ」とリグアは言ったが、「俺知らない奴と手繋いだりできないんだよ。だから一緒に踊れ。お前ならまだ我慢できる」とノウはリグアを引っ張ってダンス会場に行った。


ズイレンとルビーは転びそうになったり、息が少し合わなかったりしたが、最後の方になると少し慣れたのか息が合ってきていた。「意外と楽しいね、ルビー!」とズイレンが声をかけると、ルビーは「ああ、そうだな!」とズイレンにしか見えない笑顔で返した。


リラと美鈴は最初から息が合っており、互いの顔だちも相まってとても絵になる構図だった。リグアとノウはノウの方がズタズタだったが、リグアがアシストしてなんとか踊れる感じになっていた。


ここで城の従者が「帝王様がご登場します」と、会場の全員に呼びかける。巨大な扉が開けられ、そこに登場したコウはとても神々しく、美しかった。


コウは一つ咳をしたあと「全国民に告ぐ!」と呼びかける。


「私はこれまで10年間、愛するこの国、モストロ帝国の帝王をしてきた!だが本日、それを退位する!」と言い放ち生中継されていた為全国民に衝撃が走った。


「私は記憶を失っていたこの3ヶ月、新たな仲間、その仲間との冒険に惚れた。時には大変で苦しいこともある、だがその先に待っている人々の笑顔に見惚れた。私はそれをまた掴みたい、次期帝王は私の弟、霊獣花蓮に任命する」と言い、花蓮に目線が向けられる。ネットでは「能力を持たない黒龍に帝王など務まるか」「コウ様が帝王を辞めるなんてこの国は終わりだ」などと書かれていた。コウもそれは予測していたが、それを踏まえても花蓮を国王に任命すると決めたのだ。


コウが姿を消した20分後にパーティーは終わった。コウのもとに花蓮は来てある問いを投げた。「何故俺を帝王に選んだのか」と。


「花蓮、君には今まで霊獣の家系で1人しか居なかった能力を開花させる可能性がある。僕も持っていない能力の可能性が」とコウは言う。


コウは2日前の光景を見てある考えを巡らせていた。花蓮の能力の可能性だ。

その能力はどんな現象も一瞬で解決させてしまうもの、世界をその者の為だけの物にしてしまう物であった。

「全能」今まで霊獣の家系で1人しか拾得者が居なかった能力、それを今まで能力を持っていないとされていた花蓮が持っている可能性がある。これはとても重大で、大変なことだった。


「セラさんとの戦闘中にやったあの祈りは、全能の能力を持った者による本能。花蓮、全能の能力を君は持っている」


「そうなのか!?…でも、俺に帝王なんて務まるわけが…」


食い気味に「帝王業は僕が教えるから、それを教え終わるまでは僕は休みをもらってこの国に居るよ。大体1ヶ月くらいかな」と言い、花蓮の不安を収めた。


コウがデバッグの正式なメンバーになった日、それを今祝福しようとばかりに花蓮と話し終わったコウのもとに来たズイレンたち、デバッグのメンバーが一斉にクラッカーを鳴らした。


________________


「コウ、ちょっといいか」


夜の城の中、花蓮が歩いているコウに声をかける。コウは立ち止まり「どうしたの?」と問う。


「急に思い出したんだ。リラとコウは過去に面識がある。それに歳と1つしか違わない。だからよく遊ぶ仲でもあったはずだ。なのにコウの存在を忘れていた。それもイケニエの影響か」


イケニエ、モストロ帝国の都市伝説の1つ。死んだ者の身代わりとして命を差し出せば、その者が復活するという儀式。


「いや、違うよ。僕はイケニエなんてしていないさ。花蓮も死んでなんていない。何を言っているの?」


花蓮は「嘘だ!俺は知ってる。ある日押し倒され、腹を滅多刺しにされて殺されたはずなんだ!でも何もなかったかのように翌日俺は城のベッドに横たわっていた。そしてお前が居なくなった!絶対にお前が何かしたはずなんだ」


「でも僕は死んでないよ。だからイケニエなんてしていない」


「玄武、スイさんから聞いた。お前が死後の世界に連れて行けと頼んだこと、それに例外的に命が助かったということも」


花蓮はコウを抱きしめ、泣きながら言った。「もうこんな事はしないでくれ。自分が死ぬよりコウ、お前が死ぬ事の方が嫌なんだ…」


コウは心を痛め、苦痛の表情をした。「…ごめんね。わかったよ。でもその代わり、花蓮も気をつけてね。この国は治安が良くてもいつ何が起こるかなんてわからないんだから」と言うと、花蓮は「…わかった。気をつけるから…だからもうやめてよな…」と呟いた。花蓮はまだ泣いている様子だった。

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