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【連載】一年後に死ぬ勇者は、魔物側で指揮を執る  作者: 華奢 素数


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第五話・スライム三体、抜擢

 スケルト村は北方三国の商用路沿いにある。といっても、山手の草原地帯に位置するため、商用路を見下ろす形になる。商人たちがうっかり魔物の村に訪れるということもなく、北方三国の統治官吏たちはその存在を意にも介さない。だが、近年東洋諸国からの交易が盛んになり、スケルト村の草原地帯を越えていけば、商港まで随分と近道であることがわかったのだ。貴族たちが討伐命令を出したのは、グイ王に召命されたとき城内で耳にした。小麦が目的ではない。この村を壊して、商用路を敷くことが目的だ。経済活動による討伐命令は、義勇によるものではない。カネだ。カネ欲しさに、冒険者たちが集まる。




 二つ、三つの討伐隊だろうと予想する。厄介な冒険者じゃなきゃいいが。ひとまずシャルルはスケルト村の農場に魔物たちを集めることにした。こちらの軍勢の手札が分からない以上、戦い方も定まらない。




 リザードマンのエランドと村長のスケルトが中心になって、村民たちを招集してくれた。


・スケルトンが一体


・リザードマンが一体


 に加えて


・スライムが三体


・オークが一体


・コボルトが一体


・ミノタウロスが一体


・ユニコーンが一体


・バットが一体


・メイジが一体


「なんだよほとんど一体ばかりじゃないか」と、エランドに耳打ちすると


「まぁ、まだ来るから」と視線は地面をじっと見つめている。


 ゴゴゴと収穫を終えたばかりの畑が地割れを起こした。そこから、ゴーレムが一体体立ちあがった。


「ゴ、ゴーレムか、なかなかの戦力だ」




「とりあえずこんだけだ。他にもいるにはいるが、人間嫌いな奴らでな」


 エランドはシャルルの左肩をポンポンと叩いて、勘弁してくれ、と言わんばかりだった。


「皆の衆、集まってくれて、礼を言う」


 スケルトは頭を下げた。頭蓋骨、頭頂部が陥没しているのに気づいた。


 集まった魔物たちがどっと笑う。持ちギャグなのか。窪んだ頭頂部をコボルトが指さし、筋骨隆々なミノタウロスがシックスパッドを抱えて息も止まりそうなほどに笑い転げている。スケルトンは元は人間だ。この世に恨みや後悔といった「未練」を持つものが、朽ちた肉体を探して、夜な夜な墓場を彷徨っていると聞いていた。


 シャルルは自分とフォッサリはオバケがニガテだったことを思い返していた。スケルトンやゴーストを見た時、腰を抜かしそうになったことは何度もある。勇者パーティー時代、死霊系の魔物退治はもっぱらドワーフのギュレの役割だった。首無し甲冑の騎士や霊体型ゴースト、グールやゾンビなんかが(グールは知性あり、ゾンビは知性なし)がいなくてホッとしたのか表情を崩した。


 スケルトとエランドが、貴族発令による討伐命令がこの村に発令されたことを説明した。魔物共用語はわかりやすい言語体系だ。主語の次に目的語、動詞と人語との共通点が多い。だが、魔物にとっては共用語を母語に変換する工程が難しいようで、コボルトとオーク、ミノタウロスが何度も質問していた。この三体は仲がいいトリオだ。



「では、勇者シャルルにこの戦い、どうすれば勝てるか作戦を伺う」


 エランドが得意げに、シャルルに戦議のバトンを渡した。斬り落とした右腕がうずく。同時に心臓に埋まったギアルグの宝珠が熱を帯びてきた。収穫済みの小麦畑には、鳥たちがおこぼれをついばんでいる。時折、スライムがその鳥たちを取り込んでは捕食している。よく見るとスライムも、青、赤、緑とそれぞれ色も違う。合体した時は、黒いスライムだったのを覚えている。



「おそらく、討伐隊は四人編成の三部隊でやってきます。討伐は完遂した部隊が報酬を手に入れられます。ですが、四人編成で三部隊、十二人が満足のいく報酬が出るほどの討伐とは思えません」


 ここまで言うと、ザワザワし始める。ユニコーンが不快そうに折れた角をゆらしている。プライドが高そうだ。


「静かに! みんな、聴いてくれ」


 エランドが荒れ始めた場を諫める。コイツはリーダーの資質があるな。


「つまり、仲間割れをせざるを得ないということ?」


 静かにしろと言われたのに発言する、バットだ。ゴーレムの腕にぶら下がっている。命令よりも自分のギモンを優先させる、使い用によっては、便利かもしれない。


「そういうことだ。仲間割れをするように仕向ける。そのためには……」


 シャルルの作戦にスケルトは、ポンと頭を叩いて理解したと言った。また皆を笑わせる。ムードメーカーだが、お調子者。戦闘の際は状況判断に狂いが生じやすいから注意が必要だ。仲間割れ作戦には、皆同意したが、そのためにもそれぞれの戦力を正しく評価して、どう戦うのかを考え直す必要がある。


「この戦いは、スライム三体が前衛、僕、エランドとスケルトが後衛だ、バットは偵察に。他のみんなは、村の中心部、この農地に見張り櫓と小さな小屋を作って、いかにもここが本拠地だと装って欲しい」


 ゴーレムたちは早速小屋づくりにとりかかった。ユニコーンはフンと鼻を鳴らして、折れた角で櫓用の木材を集める。オーク、コボルト、ミノタウロスのトリオは皆の武器の手入れと、矢の用意を始めた。黙っていても、役割分担ができるのはチームとしての最低限のコミュニケーションは取れているが……。以心伝心ほど戦闘で危険なものはない。


 スライムたちは名前を、スライマ、スライミ、スライモと名乗ったが、エランドでも覚えられないので、色にあわせて、ブルー、レッド、グリーンと名付けた。思いのほかスライムたちは気にいってくれた。バットは「バッド(悪の意)」と名乗ったが、もう一人しかいないんだから、バットと呼ぶことにした。他のみんなは、名前を持たなかった。


 スケルトが名付け親になって欲しいと言ったが、種族名こそ誇りある名だと適当なことを言って、オークは、オークと、コボルトはコボルト、と呼ぶことにした。そう言えば、エランドやスケルトはどうして名前を持っているのだろう。スケルトはおそらく、スケルトンという種族名から頂戴したのだろう。エランドは、リザードマンと何の関係もない名前だ。確か東方のどこかに、エランドという国があったはずだ。フォッサリとギュレたちと旅している時に、世話になった記憶がある。


 まぁ、なにかの偶然だろう。ともかく、明日からスライムブルー・レッド・グリーンに稽古をつけなければならない。シャルルは夜通しプランを練った。



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