第二十一話・スケルト村(ゴズリン村)の決戦-2
オーク、コボルト、ミノタウロスが五メートル間隔で離れ、上空に向けて矢を放つ。メイジが教え込んだ魔法矢だ。矢の発射と合わせて、メイジは雷撃を魔法矢にコーティングする。エンチャントの要領だと、メイジは言う。魔法に魔法を重ねるという発想はさすが覚醒者だと言うと、メイジは
「シャルルだって、覚醒者かもしかしたら、超覚醒者かもしれないですよ」と言い、シャルルは肩をすくめた。
光に包まれた魔法矢はさきほど大量に放たれた火炎魔法と竜巻魔法により、上空千メートル近くまで上昇した。セロエン(スケルト)は、超覚醒者らしく村全体に防御結界魔法を五重に展開し、圧倒的な熱と火炎から皆を護った。結界は内側からなら容易に突破できる、だから魔法矢はすんなりと防御結界を越えて行ったとエランドが教えてくれた。
ゴーレムがひとまわり大きく感じる。黒スライムがゴーレムの隙間に浸食し、枯れた身体を滑らかに操る。主体は黒スライム、ゴーレムはもはや器となっていた。エランドによる精神魔法は物見櫓から、「混乱」を放った。フレイム隊の後方に構える兵士十名を捕えた。竜巻魔法を放つ部隊だった。自軍側に竜巻魔法を展開させる。防御結界に阻まれた火炎魔法は行き場を失い、さらなる燃焼のための酸素を求めている。すでに前方のフレイム隊は自らの火炎魔法で焼かれている。そこで混乱した兵により放たれた竜巻魔法がおどろおどろしい火炎のエサのごとく、酸素を供給する。その場にいる兵士を媒介として、火炎は業火に姿を変え、地獄の様相を呈した。フレイム隊の兵士たちは、水をもとめて堀に埋められていた泥沼に頭から突っ込み、多くの者が絶命した。
上空で滞留させていたのだ、先ほど放たれた雷撃エンチャントの魔法矢はその機会をじっと待っていた。制空権を支配したのはセロエン(スケルト)だ。防御結界魔法と同時並行で魔法制御を実行するのは、フォッサリでも難しいとシャルルは驚嘆した。メイジとセロエン(スケルト)のコンビネーションも息が合っている。長年のパーティーのようだ。
雷に包まれた魔法矢の数はおおよそ二百前後、対象となる敵数は百ほど。圧倒的な物量で、残存するフレイム隊を狙い撃ちにする。セロエン(スケルト)が人差し指をくいっと降ろすと、光の塊で空が眩しく輝き、雨のごとく魔法矢が降り注いだ。自動追尾型にと、メイジが魔法矢ひとつひとつに指示を出していた。
第一戦は圧勝だった。このあと、二万のソーサイス騎士団が村を取り囲むだろう。もう魔法による物量攻撃は自滅するとわかったのだろう。シャルルは皆に、肉弾戦になることを告げた。シャルルはバットに目配せした。援軍を呼び寄せる合図だ。セロエンは防御結界魔法を解いた。援軍を迎え入れるためだ。
ソーサイス騎士団がフレイム隊の屍を踏みつけ、堀から柵へと軽々飛び移り村へと侵入を始めた。豪風がソーサイス騎士団に吹き付けた。大きな鱗がパラパラと上空から降り注ぐ。
ソーサイス騎士団の先陣を切った兵士が絶望の眼差しで嘔吐した。
「ドラゴン……」
バットはドラゴン五体に援軍要請していた。ドラゴンは宝石を好む。援軍の報酬はギアルグの宝珠だと、シャルルはバットに伝えていた。ドラゴンは二つ返事で援軍を承諾した。二万の兵程度なら、ドラゴン五体で十分だと皆考えたが、シャルルは違った。
「ドラゴンに乗って、逃げるぞ」
戦いそびれた黒スライムゴーレムはがっかりしているようだった。それぞれドラゴンの乾いた背に飛び乗り、ソーサイス騎士団を置き去りにしてスケルト村を後にした。




