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ホットミルク

雪だった。星を渡った2人を襲ったのは猛吹雪で、降り立った門の近くにはopenと書かれた看板を下げた喫茶店があった。魔法使いの雪避け魔法があっても視界に雪が入れば寒く感じるもので、窓から見える暖炉の火に釣られるように2人は喫茶店の扉を開けた。

「いらっしゃいませ。お好きな席にお座り下さい」

慣れた様子で案内をするのは黒いベストの制服を着こなした老齢の店員だった。

店員の言葉に2人は窓際の席に座る。窓から見える景色はかろうじて門が見えるほどで、先程よりも雪は強くなっていた。

「ご注文は?」

「ホットミルクを2つ」

「かしこまりました。なにかお付けしますか?砂糖やレモン、抹茶やチョコレート…ココアパウダーなどありますが」

「なんもいらね」

「同じく。あ、1つには砂糖を入れてくれるかい?」

「かしこまりました」

注文を受けた店員はメモをして下がっていく。喫茶店の中に他にも客がいるようで、静かな空気の中に茶器の音だけが響いている。

「甘党だな」

「寒いからね、甘いものが食べたくなるんだよ。それにしてもトッピングの種類は多かったね」

「俺たちみたいなのが多いんだろ」

「そうだね」

席から見える範囲でもこの店の中には多種多様な服装の客がいる。この雪に適した格好の者もいれば、半袖や薄着の適してない格好の者もいた。そしてそういう人たちは皆2人と同じように腕輪をしていた。

「この星は『星跨ぎ』に目印をつけるタイプだったね」

「結構多いんだろうな」

「確かにね、接続がしやすい星だったから、渡ってくる人々も多いんだろう」

「トッピングの種類もそれで増えてったんだろ」

「お待たせ致しました」

話していれば店員がやってくる。安定したトレーの上には素朴なマグカップが乗っており、中にはたっぷりのミルクが入っていた。2つのマグカップを置くと、魔法使い側の方にもう一つ銀色のカップが置かれる。

「こちらはシュガーポットでございます。お好きな量の砂糖をお使いください」

そういって店員は厨房に戻って行った。

「なるほど、『星跨ぎ』への配慮がすごいね」



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「雪止まんねぇな……」

「この星は一年中そうなのかな?」

「さぁな。星について紹介してるもんは…っと」

青年が立ち上がりきょろきょろとなにかを探していると、先程の店員が近づいてきた。言葉を少し交わすと店員は頭を下げ奥に消えていった。戻ってきた青年は再びマグカップに口を付ける。

「どうしたんだい?」

「パンフレット持って来てくれるってよ。席に置いてなくて謝られた」

「真面目な人だねぇ」

「俺らとは正反対だ」

「全くだね」

会話をしている2人の元に店員がやって来た。4つ折りの細いパンフレットを2人に渡すと頭を下げる。

「申し訳ございません。普段はそこに常備してあるのですが、空きに気づかなかったようで…」

「いいえ、持って来てくれてありがとうございます」

「パンフレットを常備してるのは立地上の話か?」

「はい、そうでございます」

2人の前で頭を少し低くして店員は話を続ける。

「おっしゃる通りです。この店は『星跨ぎ』の方々が降り立つ門の近くにあります。多くの方は渡った後にお疲れになるのか、すぐ目の前にあるこのお店に立ち寄ってくれるのです」

「なるほどね。この星は私達に目印を付けるからわかりやすいだろうね。トッピングの種類の多さもそれが理由かい?」

「はい、その通りです。この星は『星跨ぎ』の方々がいらっしゃるのが多く、その方々のご要望をお聞きしていましたら同じ飲み物でもお飲みの仕方が違いまして…面白いものです。この星の飲食店の多くはトッピングや食べ方など、様々なご要望をお聞きできると思います。ですが、飲み物のトッピングの量ならうちは負けませんよ」

口角を上げて穏やかに店員は笑う。茶目っ気と自信に満ちたその顔は年齢を重ねた店主のそれだった。

「なるほどね、僕達は良いお店に入ったね」

ね、と同意を求める魔法使いの言葉を店員は笑みを深くして聞いている。顔を向けられた青年は店員の方を見た。その顔はなぜか険しかった。

「良い店なのは同意だ。…ひとつ聞きたいことがある」

「なんでございましょうか?」

「トッピング多いのはわかった。さっき言ってたトッピングは今までにあったトッピングなんだよな」

「その通りでございます」

店員の言葉に青年は大きくため息を吐く。そして意を消したように向き直った。

「ミルクにレモンをトッピングした奴らについて教えてくれ…!」

雪はまだまだ止みそうにない。


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