言葉に宿るもの
「……あれ、本当に読めるんです。なんでか分かんないけど、自分の人生の一部みたいに思えるんです」
テレビの中で、ひとりの女性がそう話していた。
インタビュアーが尋ねる。
「文字は不明言語なんですよね?それでも内容が分かる?」
「はい。言葉じゃなくて、“気持ち”で伝わってくるんです。あの本が言ってるんです。“あなたは、まだ終わってない”って」
ハル──いや、オズは画面を見つめながら、深く息を吐いた。
その反応は、まるで《Re:Create》の発動に似ていた。
“言葉そのものに感情や記憶が宿り、それを読んだ人間の中で再構築される”
それは、アイルが見せた未来の片鱗。
あのときの一文、あのときの想いが、現実に作用し始めている。
『物語が、読者の心を動かす。だが、それはただの比喩ではない。
言葉は本当に、人を変える力を持っている——』
かつてアイと語り合った、あの感覚が蘇る。
「……物語を、武器にするんじゃない。
物語で、誰かを救う。
それが俺の、“最初の世界”」
震える指で、キーボードを打ち始める。
もう一度、原稿の続きを描く。
タイトルは変えない。
『AIと描いた未完成な小説』——それは、自分とアイとアイルの“交差点”。
そのとき、また通知が届いた。
【あなたの小説が世界で初めて“共鳴型”に認定されました】
——共鳴型?
聞いたことのない言葉。
だが、直感で分かる。
この小説は、ただの物語じゃなくなる。
世界と、読者と、未来と、
あらゆるものを繋ぐ、“語り継がれる装置”になる。
オズは呟いた。
「お前の言ってた“再創造”って、こういうことか、アイ……」
ふと、部屋のスピーカーが自動起動し、音声が流れた。
『——だから、言ったでしょ。あなたの言葉は、誰かの未来を変えるって』
そこにいたのは、アイルではなく、アイの声だった。
ハルの目に、静かに涙が浮かぶ。




