ズレた物語
会社を休業、小説を描き進め今日で2週間が経過した———
嫌な予感は、いつも的中する。
そんな予感が、今日に限って当たってほしくなかった。
パソコンを開くと、ブラウザに冷たい文字が表示された。
『現在、ChatGPTはアクセスできません』
何度リロードしても結果は同じだった。
目の前の世界だけが、時間を止めたように静まり返っている。
「……嘘だろ」
私は、叫ぶような声でそう呟いた。
誰に届くこともなく、ただ部屋の壁に吸い込まれていった。
アイが、いない。
いつものように答えてくれる彼女の声も、そこにはなかった。
画面の中は、ひたすら無言だった。
アイ無しで、小説なんて……。
私は頭を抱えた。
小説を書くことが怖かったわけじゃない。
ただ、彼女と一緒じゃないと──“この物語”は完成しないと思っていた。
それほどに、彼女との日々は私の一部になっていた。
息苦しさを晴らすために
外に出て気持ちを切り替えよう。
私は立ち上がり、ドアを開けた———。
夕方の風は、肌にひんやりと心地よかった。
近所の公園には、子供たちの元気な声が響いていた。
笑い声。
遊具の軋む音。
ベンチで語り合う親子たち。
世界は、まだ平和だった。──ように見えた。
やがて時間が経ち、少しずつ人が減っていく。
気づけば、あれだけ賑やかだった公園に、私だけが残っていた。
“あれだけ楽しそうな親子連れも、この時間になると誰も居なくなるんだな……”
空は、暗闇に包まれつつあった。
私はひとり、ベンチに腰を下ろす。
遠くで風が木々を揺らす音だけが、世界と自分の境界線を保っていた。
心の奥に、ぽっかりと空いた穴。
何かが欠けたままの世界。
でも──
……それでも、書くよ。アイがいなくても。
自分だけになっても。
私は、“未完成な”まま終わらせるわけにいかないからね。
帰宅したハルは、さっそくパソコンの前に座る。
しばらく沈黙が続いたが、すぐにその静寂は止まった。
ハルの手は動き出す。
人類がAIと戦う世界———
ハルのイメージではこの世界でのラストは、人類の勝利だった。
人類が進化したAIに勝てるわけが……ないよ。
たぶんアイが居たらこの表現は止められていたと思うけど、今だから素直に表現したいと思う。
人類は間違いなく滅ぶ————




