第三十七話 視察
「大体、この辺りだと思うんだけどな。村の周辺だろ?」
「いねーな。留守?」
いつ見つけても良いように、茂みに隠れながら辺りを見渡す。しかし、周りにあるのは木々だけ。動物や魔物は一切おらず、シーンとしている。
「ドラゴンって言うからにはでっかいだろうし、すぐ見つかると思ってたんだけど……」
空飛んでるのかな?ふとそんな事を思い、上を見あげようとしたところで、セシルとディアークが一斉に同じ方向を向いた。
「!」
「二人とも!シっ!」
「えっなに」
セシルが口元に指をたて、言われた通りに押し黙る。少しれば、ズドンと言う音と共に、少し遠くにドラゴンが着地したのが見えた。
「……!?あれが……」
緑の鱗に覆われた巨大な体躯がそこにはあった。立派な翼がしっぽが日光でてらてらと輝いている。
「グリーンドラゴンだな。こんなところに巣を作るなんて珍しい」
「ちょっと怪我してるわね。縄張り争いでもして逃げてきたのかしら」
セシルの言った通り、よく見れば至る所に怪我をしている。鱗が剥がれていたり、片目が潰れていたり、しっぽの先が無くなっている。
「どうだろう。だが敗走してきてるのは間違いない。俺達みたいなへっぽこ集団がドラゴン相手に敵うとは思わなかったけど、あれだけ傷ついてるなら、すっごい頑張ればいけるかもしれない」
「へっぽこって……お前もだろ」
ディアークがドラゴンから目を外し、じっとこちらを睨みつけてくる。
「うるせえ。それより作戦練るぞ。弱っててもドラゴンはドラゴンだ。油断してたら直ぐにパックリと」
「ね、ねえ、ノーテル。ディアーク」
「ん?」
セシルが震えた声を出す。かなり怯えているみたいだ。俺も怖い。しかしセシルがそんなに怯えるなんて珍しいな。
「セシルどうした?」
「……後ろ」
セシルの方を見れば、俺たちの背後を指さしている。俺とディアークが言われた通りに振り返れば、ジロリ、と先程まで少し遠くにいたドラゴンがこちらを見つめていた。いつの間に後ろに回って!?しかし、驚いて声がでない。ディアークも同じらしい。
「「……」」
身体が動かない。圧倒的な威圧がそこにはあった。身体がガタガタと震える。しかし、グリーンドラゴンが止まってくれない。
「グォオオオオオオオ!!!!!」
俺たちの様子を一瞥すれば、大きく吼えた。巣への侵入者と見なされたらしい。グリーンドラゴンは巨大な身体を震わせ、そのまま俺たちに向かって襲いかかってきた。
「「「アーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」
俺たちの声が重なる。奇襲により、作戦を練る前にドラゴンとの戦闘が開始してしまった。




