第三十五話 新たな問題
二週間かけて次の村へ到達した三人。しかし、新たな問題に突っかかるのだった。
「あぁ、冒険さまではありませんか。この村は今危なくて……ここに留まるのは危険かと」
村に足を踏み入れれば、それに気づいた女性が近づいてきて、話しかけてくる。下を向いているが、とても困った顔をしているのがわかる。
「危険?」
「はい。この近くにドラゴンが住み着いてしまって。我々も村の皆で遠くに引っ越そうかと考えているんです……」
ドラゴン。そりゃ、異世界なんだからいるよな。しかし、こんな田舎の村の近くにくるものなんだろうか。ダンジョンや山奥にいそうなイメージがあるが、人里に降りてくる理由が何かあったのかもしれない。
「そりゃ大変だ」
「ドラゴンかぁ、流石に厳しいかな。休憩せずにここの村を越えるしか……」
セシルは腕を組んで考えている。確かにセシルの言う通りだ。俺たちが腕の立つパーティだったら討伐を申し出ることも出来たのだろうが、きっと太刀打ち出来ない。かなり確信めいたものがある。
「……!まさか、その証!もしかして貴方は、勇者様ではないですかな?」
「村長!勇者様、って……あぁ本当だ!その証は勇者様に贈られるっていう……」
杖をついた老人が、話していた女性の後ろから現れる。この村の村長らしい。確かに、貫禄がある。村長は俺の首にかかっている証を見ては、まじまじと見つめた。
「え、あ、あぁ。まぁ、勇者ですが……」
「村の皆!集まってくれ!勇者様が来てくださったぞ!」
突然のことにどもりながら答えていれば、村長が周りに声をかける。すぐに村人達が俺たちの周りに集まってきた。
「勇者様!」
「勇者様だわ!」
「本物よ!」
「良かったわぁ」
村人は俺の首にかかっている証を見れば、口々に歓喜の声を上げる。まずい。これは、なんて言えばいいんだろう。俺はそこまで強くないです。ドラゴンと戦えません。そんな事が言える、だろうか……
「勇者様、どうかこの村を、ドラゴンの脅威からお救いください。お願いします」
村長が歩み寄り、俺の手を取る。真っ直ぐとした期待を含む瞳で見つめられると、どうにも弱い。
「えっ、えぇっと……あの……」
なんて断ればいいか。考えろ、考えろ俺!
「お母さん、僕達引っ越さなくてもいいのー?」
「そうよ、勇者様が来てくださったからね。きっとやっつけてくれるに違いないわ!」
「やったぁ!僕この村だいすきー!」
後ろから家族の話し声が聞こえてきた。断らなければ、断らなければ俺たちが死んでしまう。
「その……」
村長の手が一層俺の手を強く握り込む。
「お礼はいくらでもします。村をどうか。どうかお願いします。」
「……はい。精一杯やらせていただきます」
結局断れず、俺はドラゴン討伐を承諾してしまった。
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「……バカね」
「わかってるよお!」
準備をするからと断り、一度村人の元を離れて三人で話している。が、開口一番セシルにバカと言われてしまった。耳が痛い。
「でもさあ、あんなの断れないって!どう断れっていうの!プレッシャーきっついよぉ!」
俺の後ろからあの様子を見ていた二人に泣きつく。ディアークもセシルも顔を見合わせて、溜息をついた。
「まぁそうだよな。ありゃ俺でもきつい」
「はぁーー……どうする?」
引き受けたものは仕方がない。セシルはディアークと俺をそれぞれ見て、考え込んでいるようだ。
「どうするっていったって、戦うしか……」
「ノーテル、今のパーティの様子を確認してみて」
セシルに言われた通り、俺たちグルっと見てみる。現状整理、今のパーティの現状。
「……剣術のたいして上手くない勇者と、後衛で攻撃魔法の少ない僧侶と、丸腰の無能」
「丸腰の無能!?」
「そうだろ」
「そうでしょ」
「ぐぬぅ……」
これが現実なのだ。剣士歴半年とちょっとの俺、僧侶のセシル、武器が何も無いディアーク。これでドラゴンを倒すとなるとかなり厳しい。
「取り敢えず、武器屋があるかだけ確認してくるから待ってて」
「うす」
セシルはそう言って、一度村の方へ戻っていった。その背を見送れば、ディアークがこちらを見てくる。
「……なあ、ノーテル。ちなみに無かったら俺は何で戦うの?」
「素手じゃないかな……」
素手でドラゴンを倒せるか知らないけど。俺の言葉を聞けば、ディアークががっくしと肩を落とす。
「最悪……」
絶望に満ちたディアークの独り言が、虚しくその場に響いた。




