第三十三話 初めてのお手伝い
朝、目を開けば暖かな日差しが窓から入ってくる。気持ちがいい。久しぶりのベッドでぐっすり眠れたおかげだ。伸びをし、服を着替えれば隣の部屋で寝ていたセシルと合流する。
「おはよう」
「おはようー」
セシルの部屋で荷を纏めながら、これからの方針を確認していく。セシルは地図を開いて睨めっこ中だ。
「今日でこの村発つのか?」
「一通り見て回ったけど、武器売ってるところがないから、はやめに発った方がいいかも。ディアーク丸腰だよ」
「うん……ソウダネ」
肩をゴキゴキと鳴らし、腰を痛めたのか拳でとんとんと叩いてるディアークに目を向ける。地図を見ていたセシルもその様子に気づき、怪訝そうに顔をあげた。
「……なんでディアークそんなに満身創痍なの?」
「床で寝たからに決まってんだろ!ふざけてんのか!」
ディアークは如何にも怒ってますと言いたげな身振り手振りをする。朝から元気なやつだ。ベッドでぐっすり眠らせてもらった俺は横を向いて知らん顔しておく。
「ベッドで寝れば良かったじゃない」
「ベッド一つしかなかったけど!?」
そう、宿を取る際に、男女で別れて一部屋ずつ取ったはいいものの、俺とディアークが泊まる部屋には一つしかベッドがなかったのだ。喧嘩になりかけたのだが、最終的にどちらがベッドで寝るかじゃんけんで決めることになった。男と男の勝負だ。本気で挑み、俺はしっかり勝たせて貰った。
「節約よ、節約。二人で仲良く寝れば良かったじゃない」
「俺男と寝る趣味ないんだけど……」
「俺もねーよ」
セシルがしょんぼりと肩を落とす。じっとりとした瞳でディアークを見つめていれば、怖くなったのかディアークは一歩後ろに下がった。
「残念……」
「その残念は俺の身体を心配しての残念だよな?」
「他に何があるのよ」
「いや別に」
仲良さそうに話しているのを方っておいて俺は軽く朝食を取る。昨日買ったパンは少し硬くなってしまっているがなかなかに美味い。
「取り敢えず荷物纏めて出ちゃおっか」
「了解」
セシルが言った通り、俺たちはさっさと荷造りを終えると飯を食らい、次の村へ向かうべく宿から出発した。
「あ、冒険者さん!」
「あれ、どうかされたんです?」
村から旅立とうした矢先、村人の人に声をかけられる。なんだと思いそちらを向けば、困ったような顔をして近づいてきた。
「あのねえ、実は、近くの畑に魔物が出ちゃって。退治してくれませんかねえ」
畑に魔物。成程、そういう事もあるのか。
「魔物?村の中にまで入ってくるもんなんだ」
「そりゃそうよ。柵はあるけど結界じゃないんだから、防ぎようないでしょ」
セシルが何も分かっていない俺のために説明を追加してくれる。凄く助かる。だが、それだったら今までこの村の人はどう対処していたんだろうか。……まあ、どうでもいいか。
「それもそうか。で、それってどこです?」
「こっちです!」
俺たちはそれを請け負い、村人について行くことにした。
「えーっと……魔物って、あれ?」
「あれです!」
村人が指を指した先にいたのは、少し大きめのうさぎだった。農作物である人参の葉っぱを美味しそうにむしゃむしゃと食べている。しかし、あれが魔物には到底見えない。例え害獣だとしても。
「俺には可愛いうさちゃんに見えるんだけど」
「あー、あれね。害獣なの。ニードルラビットって言うんだけど」
「ニードルラビット?」
ディアークと俺がよく分からない顔をしていれば、セシルが説明を挟んでくれる。聡明な仲間がいてくれて嬉しい。にしても、ニードルラビット。新たに聞く魔物だ。
「そう。針飛ばしてくる」
「えっ怖」
割とそのままだが、結構殺傷能力のある事をしてくる。うさぎだと油断していれば一網打尽、ということか。
「小さいし、ノーテルが剣振るえば一撃だと思うよ」
そんなこともなかった。
「なんかホワイトウルフみたいなの想像してたから、拍子抜けだな……」
「でも一般村民からしたら怖いもんは怖いのよ。いってらっしゃい」
確かに、対抗する力を持っていない村人からしたら脅威なのは変わらない。俺は剣のグリップに手を掛ける。
「行くかー」
「行ってらっしゃーい」
セシルは後衛であり、攻撃魔法は得意としないためここで待機して貰う。俺はゆっくりとニードルラビットへ近づいていく。
「……」
「……え、なに」
俺の後ろでセシルがディアークの事を見つめている。セシルがディアークを見ながらニードルラビットへ指を指すと、冷徹に言い放った。
「ディアークもいって」
「えっ、丸腰なんだけど」
「はいクワ」
「……まじかー。いってきまーす」
セシルからクワを受け取ったディアークは、重い足取りで俺と共にニードルラビットへと近づいていった。




