第三十二話 初めての新しい村
あれから数日かけて、村に辿り着いた。魔王退治の旅では初めて訪れた村になる。
「ここが、村……!」
わくわくとした子供心が首をもたげる。小さな村、何もなさそうな村、これから何度も経験する事。それでもやはり初めてというのは、とても楽しくて嬉しいことだ。
「結構小さいけど、のどかでいいところだね。あ、村の人に話を聞きに行こう!」
「おっけー、行こう!」
セシルも目を輝かせ、村人の方に歩いていった。俺もそれに続く。
「俺この格好でいくの……?」
ノーパンのディアークだけは、沈んだ顔をしたままだった。
「あら、冒険さん?こんなところに来るなんて珍しい。どうかした?」
畑仕事をしていた優しげなおばさんが居たため声をかけてみる。俺たちの姿を見れば手を止めてこちらまで駆け寄って来てくれた。
「この村って服屋あります?」
「服屋?あるけど……珍しい事聞くのね」
でしょうね。おばさんは不思議そうな顔をしてこちらを向いている。
「ああ、うちに服溶かされちゃった奴がいるんですよ」
「あ、ども……」
後ろにいるノーパン野郎へ指を指す。ディアークは頭をかいてお辞儀をするが、おばさんは引く事もせず困った顔をしたままだ。
「あらまぁ、大変ねえ。近くにあるから見ていらっしゃい。大層なもんはないけど!ゆっくりしていってねー!」
「ありがとうございます」
ノーパン野郎がいても優しい。村人の温かみって素晴らしいな……
俺たちはお礼を言い、教えて貰った服屋へと赴くことにした。
「ここか、入るぞ」
少し歩けば村の中央あたりに小さく、あまり賑わっていない服屋があった。扉を開ければ店主であろうおばさんが出迎えてくれた。
「いらっしゃい」
中は狭いが、代わりに服は沢山置いてある。というか、沢山置いてあるから狭いんじゃないかこの店。
「おお……小さい村にしてはちゃんとしてる」
「どんな服があるかなぁ」
ディアークとセシルは沢山ある服を捲っては一枚一枚興味深そうに見ている。俺も適当なのに手を掛け、どんな服があるか見ていく。量があるから種類もいっぱいあるんだな。
「これとかいいんじゃね、溶けなさそうだし」
「溶ける部位がないだけだろ」
俺は適当に取った一枚をディアークに見せてみる。なんかマイクロビキニみたいなやつだ。面白いから出してみたら即却下された。無念。
「じゃあこれは?」
「そんなぶかぶかなシャツ着たって動きにくいだけだろ」
次はセシルがデカいシャツを取り出してディアークに見せた。セシル自身が着たらシャツワンピースみたいで可愛いんだろうが、ディアークには似合わないだろう。無論即却下されていた。負けじと俺も適当な服を新たにとってディアークに見せてみる。
「それならこれ」
「馬鹿にしてる?」
適当に取ったらジャイアントスラッグの刺繍がされてるクソダサいTシャツだった。ディアークが冷たい目線を向けてくる。これも嫌らしい。残念だ。
「じゃあ……」
「自分で選ばせろ!」
セシルが他のを提案しようとしたところでディアークが足を踏み鳴らして怒った。そんなこと言われても面白くない。
「でも金払うの俺らじゃん……」
「ねー」
「ぐぬぬ……まともなやつにしろよ!」
「「はーい」」
割と簡単に言いくるめられたので俺とセシルで一緒に悩んで決めてみる。そろそろ真面目に服にしてやることにした。
「ありがとうございましたー」
あれから数時間かけてディアークに似合う服を見繕った。如何にも動きやすそうで冒険者っぽい服装にしてみたら簡単に気に入ってくれた。しかし財布は寂しくなったな。
「結局、結構良いの買っちゃったね」
「まあ似合ってるしいいんじゃねえかな」
新たな服を着て歩くディアークの方に目を向けてみると、ドヤ顔して奴は答える。
「ふふん、だろ?俺ってば何着ても似合うからさぁ」
「じゃあ俺たちが最初に選んでたやつでも良かったくね」
「ッス、さーせん。勘弁して」
こいつ結構扱いやすいな……
次はなにすっかな、と思いセシルの方を向けてみる。セシルは俺の意図を汲み取ったのか、辺りをきょろきょろとしながら口を開いた。
「服は買ったし、次は宿かなぁ。小さな村だし食材の買い出しには期待出来ないよね。パンが食べれれば満足ってところかしら」
「あ、ホワイトウルフの干し肉あるよ」
鞄に手を突っ込み干し肉を取り出して見せる。これにパンがあれば腹は満ちるだろう。
「なら充分ね。ほら、ディアークもこっち来なさい」
「はーい」
一緒になって辺りをきょろきょろしていたディアークをつれて村を見て回った後、無事に宿を取り、食事をして眠りにつくのだった。




