第三十一話 服
「はーあ、さっぱりしたぜー!」
「それは良かったな」
粘液を落としたディアークが、ブルブルと身体を振るって水飛沫を飛ばす。タオルがないから手っ取り早く乾かすには仕方ないことだけど、なんだか犬みたいだな。
セシルに至っては木陰に避難している。
「その小さいのもはやくしまってくれると嬉しい」
「小さくない!!!!」
セシルがディアークのことをゴミを見るような目で見つめている。まあ、仕方ない。
「取り敢えず、服どうしようかな。俺の上着を着てもらうとして。下は……」
「……」
俺は着ていた上着を脱いでディアークに投げ渡す。しかし替えの服はないし、俺も今履いてるズボンを脱いだらパンイチだ。可哀想だがここは我慢してもらおう。
「ノーパンでいい?」
「良くないが?」
即答された。しかし無い袖は振れないので身振り手振りでバカにもわかるように説明してやる。
「でも流石に下は持ってないんだよなぁ。仲間としてこれから一緒にいるんだし、次の村まで俺の上着一枚で我慢してね」
「畜生ーーーー!!!」
こいつ、よく叫ぶな。元気だし風邪も引かないだろ。
「……」
「……なんかセシルの目線が怖いんだけど」
木陰から見つめてくる視線にディアークが怯え始めた。俺もこの視線を浴びたことがあるが怖い。何考えてるかわからないし。
「お前がそんなハレンチ魔物にとっ捕まってフルチンになってるからでは?」
「辛い……」
「俺も辛いよ」
「……」
辛いと嘆くディアークは無視して、セシルの事もあるのでさっさと進むことを提案する。
「取り敢えず、もう少し歩いたら今日は野宿しよう。魔物もあんまり見かけないし、早めに村へ辿り着けそうだな」
「そうね。ブレスレットのお陰かしら」
話が変わればセシルも気が紛れるのか、木陰から出てきて話に混ざってきた。視線にはまだ怖いものが滲んでいるが、突っ込んだら行けない気がする。
「そうだといいなぁ」
「あの……」
んじゃ、先へ進もう。と足を踏み出したところでディアークが声をあげる。振り向けば俺の上着に腕を通して震えているディアークがいた。
「なに?」
「俺フルチンで寝るの?スースーすんだけど……」
「黙っててくれる?」
「はい……」
初めてスカート履いた男みたいなこと言いやがって気持ち悪い。自業自得なんだから黙ってればいいのに。俺たちは川から離れ、さっさと先に進むことにした。
その夜、俺たちは薄っぺらい布団を纏いそれぞれで眠りについた。ちなみに、残念ながらディアークの分の布団はなかったので凍えて眠って貰うことにした。
初めて眠った地面は、かなり冷たくて硬かったと思う。かなり布団が凄く恋しくなった。




