第二十五話 半年後
「二人とも、今日で半年だよ。最近はどう?」
「はい、おかげで魔物と戦えるようになりました!」
「……」
ドロテアは俺とセシルを呼ぶと、椅子に座りながらそう問いかけてくる。俺は返事をするが、セシルは何も答えない。
「ケイト、彼はどうだい」
ドロテアはセシルに目線をやってから、横に立っているケイトに目線を向けた。
「はっ。まだまだ直すべき所は沢山ありますが、一応は形になっています。旅に送り出しても申し分ないかと」
ケイトが答えれば、ドロテアは目を閉じてうんうんと頷き、紅茶を啜った。
「そう。申し分ないね。ならばあたしは聞くしかない」
そこまで言うと目を開き、セシルに目線を戻した。
「セシル、あんたはどうする?」
「私、私は……」
ドロテアに問いかけられたセシルは口ごもってしまった。俺も何も言うことは出来ない。心臓が嫌な音をたてる。
「……二人きりにしてもらっても、良いですか?」
少しの沈黙の後、セシルはやっと口を開いてそう言った。ドロテアは微笑むと立ち上がる。
「構わないよ。いこうケイト」
「はい、ドロテア様」
二人はそのままこの部屋から出ていった。重苦しい空気が二人の間に流れる。何を言おうか、と俺が考えあぐねていれば、セシルが先に沈黙を破った。
「……ねえ」
「う、うん。なにセシル」
セシルの表情は見えない。俯いて、絞り出すように声を出している。
「グレイ死んじゃったんだね。今も引き摺ってる。こんなにも近くにいるのに、貴方は別人なんだ」
「せ、セシル……」
そうだ。俺は別人だ。でもそれを胸を張って言えるほど俺は強くない。どうすればセシルを傷つけないか。頑張って頭を働かせようとすれば、セシルは顔をあげて俺を見つめた。
「でも、私はそれを認める事にした」
「……!」
「頑張ってる貴方をずっと見てたの。よくよく考えたら、貴方も大変なんだなって。それに、貴方の事を良く知ろうともしないで、否定して、傷ついて……ごめんなさい」
セシルは頭を下げた。びっくりして手を伸ばすが、それを戻して俺も頭を下げる。
「そ、それは俺も。ちゃんといえなかったって言うか……ごめん」
「……ふふ」
セシルの方から笑い声が漏れた。顔を上げてそちらを見れば、セシルがにこにこと笑っている。そして、セシルは片手を差し出してきた。
「ねえ、貴方」
「う、うん?」
一歩距離をつめて、俺の事を見つめてくる。最初みたいに揺れていた瞳とは違う、真っ直ぐで、綺麗な瞳だ。
「これからも、長い旅時一緒だから。改めまして!どうか、よろしくね」
「……!うん、セシル。よろしくね」
俺はセシルの出していた片手を掴み、ぎゅっと固く握手を交わした。俺たちは仲直りする事ができたらしい。
それに、これからも俺と旅をしてくれると言う。こんなに嬉しいことはないだろう。
「ところで、なんだけど」
「ん?」
ふとセシルが目を伏せ、もじもじと恥ずかしそうにする。そして、意を決したのか俺の耳元まで寄ってくると、小さな声で呟いた。
「ケイトとはどういう関係なの……?」
「は?」




