第二十四話 訓練⑦
「怖いんだけどぉおおおおおお!!!!!!!」
「うるさい、何がだ」
あれから更に一ヶ月が経った。俺は恐怖を感じている。いつも誰かにビクビク怯えながら過ごしているのは言うまでもないが、最近は特に怖いことがある。
「聞いてよケイトォ!最近セシルがさぁ!」
「くっつくな、暑い」
ケイト、最近はかなり心を許してくれている。最初はあんなに冷たかったのに、最近では肩を引っ付かんで揺すっても適当に流してくれるだけだ。もしかしたら単純に面倒くさがられてるだけかもしれないが。
「ずぅううっと見てくるんだよお!!!!」
「別にいいんじゃないか」
俺は涙目になりながらケイトにへばりつく。鬱陶しそうな目線を投げかけられるが、取り敢えず無視をしておく。引き剥がされないならそのままでいい。だってセシルが怖いから。取り敢えず誰かの後ろに隠れていたい気分だ。
「怖いんだよお!話しかけてもすぐどっか行くしぃ!」
「まだ話し辛いんじゃないか」
セシルが怖い。これを口に出して言うのはあんまり良くないとはわかっている。でも本当に怖い。なんだか邪念を感じるのは俺だけなんだろうか。一ヶ月前のあの時から、セシルの様子がおかしいんだ。ドロテアに相談してもうーん、わからないねぇって言われるだけだし。
「でもすぐにまた戻ってきて見てくるしいいいいい!!!!!!」
「話したいけどまだ心の準備が出来ていないんじゃないのか」
心の準備。それは確かに出来ていなさそう。でもなんかもっと違うそれな気がする。わからない。わからないから更に怖い。
「ほら今だってさああああああ」
「心配なんだろ」
セシルの方を指さして嘆く。セシルはそっと影からこちらを見つめるばかりだ。
「やだああああああああああ」
「知るか」
前言撤回。やっぱケイトは冷たい。離れて木の剣を握りしめると、俺はケイトに向かって振りかぶる。
「ぐううううう!!!!うっ!えいっ!とりゃーーーー!!!!」
「ヤケクソか?」
当たらない。避けられる。弾かれる。かわされる。もうダメだ。剣術を専門にしてないやつにここまでいなされると心が折れてくる。
「うわああん!一本も取れねぇーーー!!!!魔法使いの癖にーーーー!!!!」
「お前が弱いだけだ」
現実を突きつけられて地団駄を踏む。もう一度と後ろに回り込めばそれもカツン、と軽い音をたてて跳ね返された。
「きいいいいい!!!!!」
「うるさい」
俺の悔しさの叫びを聴きながら、ケイトは呆れたように溜息をついた。
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「セシル、あの二人楽しそうだね」
「そうですね……」
影から見ていたセシルに、ドロテアが近づいて話しかける。紅茶を片手に持ちながら、微笑ましそうに二人を眺めた。
「そろそろ半年だ。どうする?」
そう問いかければ、セシルは黙って目を閉じた。両手を胸の前であわせ、ネックレスをぎゅっと握りしめている。
「……もう少し、見ています」
「ふふ、そうするといい」
ドロテアはそう言うと、また部屋の奥へ戻っていった。




