第二十三話 訓練⑥
「も、戻ったぜ……!」
「おかえり、大変だったみたいだね」
ボロボロになった俺を見るも、ドロテアはいつも通りの表情だ。ボロボロになった原因は、魔物というより主にケイトのせいなんだが……あれは俺が悪い。でも痛かったなぁ。
「じゃ、ケイトに料理を教えて貰うといい。旅には必要だ」
「あ、はい……」
ドロテアはそう言うと、キッチンの方を指さして教えてくれる。鍋がことことと煮えているのが見えた。汁物は既に作ってくれていたらしい。
ケイトの方を見れば、機嫌悪そうに口を曲げているケイトがいた。
「……ふん」
「ケイトぉーごめんってぇ……」
手を合わせて謝るが、思い切り無視をされる。そのままケイトは庭に出ていったので、俺もそれについて行くことにした。
「捌き方を教えてやる。見て覚えろ」
「はい……」
ケイトはナイフを取り出し、ホワイトウルフの巨体を捌き始めた。皮を剥ぎ、内蔵を落とす。食べられない部分は別の袋に詰めている。これは後で捨てに行くらしい。
牙や毛皮は素材になるそうだ。全てが捌き終わるとその日食べる分以上の肉を持ってキッチンへと行ったので、後ろからついていく。
「これはこうして……」
「はい……」
料理の様子を観察する。ワイルドな料理法かと思ったら、意外と凝っている。詳しくないからわからないけど、塩コショウの他にハーブを入れたり、付け合せの野菜を用意したり。それだけじゃない。随分多い肉を持ってきたと思ったら干し肉の作り方まで教えてくれた。保存が効くものはこれからの旅で重宝する。
あらかた料理がすめば、一欠片切って俺の方へ差し出してきた。
「食え」
「はい……」
あつあつの肉片をどう受け取ればいいかわからず、取り敢えずケイトの手からそのまま食ってみたが怒ることはなかった。噛み締めてみれば肉汁が広がってかなり美味い。料理上手なんだな、と思いながら咀嚼する。
「どうだ」
「美味しかったです……」
俺の感想を聞けば、キッチンの火を消してさっさと俺から離れていく。背を向けたまま、ケイトは自身の部屋の扉に手をかけた。
「明日はまた訓練だ」
「はい……」
「おやすみ」
「おやすみなさい……」
それだけ言うと夕食も食わずケイトは部屋に消えていった。この間、ケイトは俺に目すら合わせてくれていない。完璧に怒らせてる。明日も謝らないといけないな……
「……ねえ」
「えぅ!?え、セシル!?どうしたんだ?」
後ろからセシルに話しかけられる。セシルが話しかけてくれるなんてそうそう無いから、驚いてめちゃくちゃ変な声が出てしまった。
「……なんでもない」
「お、おう」
少し黙った後、セシルはそう言って俺から離れていった。なんか……孤立感があるね。とほほ。




