第二話 初めまして
「は……え? グレイ? ちょっと、冗談はよしてよ。それとも脅かしてるの? やめてよ縁起でも無い。怒るよ? 」
強く両腕で抱き締められていたが解放される。心配そうに俺を見つめる女の子に見覚えは……無い。健康的な肌に、頬と鼻に散らばるそばかす。茶色の髪をふたつに結っているこの子はどうやら、かなり若い子みたいだ。目を閉じ記憶を辿らせてみても心当たりはない。バイト先の子、昔の同級生、近くのコンビニの店員……いや、どれも違う。
「えっと……本当に、わからない。誰? 」
「…………グレイ、貴方まさか……ッ、母さん! 父さん! 来て! 」
彼女は立ち上がるとバタバタと大きな音を立てながら部屋を出ていってしまった。取り敢えず、現状を確認しよう。
先程も確認したけど、ここは病院ではないらしい。誰かの部屋みたいだ。それと、自分の身体を確認してみる。上半身は裸で包帯がぐるぐる巻き。手足は動く。車に轢かれて死んだと思ったけど、誰かに助けて貰ったんだろうか。
近くに窓があるのを見つけたので、立ち上がって外を確認してみる。周りに見えるのは……木、畑、木、木造の家。随分田舎みたいだが……ん?
「……誰だ? 」
ついそう口に出して指先を窓に伝わせる。窓に反射している俺の姿、それは今まで認知していた俺の姿ではなかった。
艶やかな黒髪に、切れ長の瞳、少し小さい背、あまりにも若い姿。それはまるで、少年のような……
「グレイ!」
ガチャりと扉が再度開けば、先程の女の子と見知らぬ中年くらいの男女がそれぞれ二人ずつ入ってきた。
「ちょ、立っちゃダメ!ベッドに戻って!」
「あ、うん……」
女の子にベッドへと押し戻される。よく分からないままに座ると俺に向き直り、口を開いた。
「ねえグレイ、私の名前は?」
「いや、知らないけど」
質問に答えると全員信じられないものを見る目で見てくる。それを他所に、女の子は質問を続ける。
「今連れてきたこの四人の人、誰かわかる?」
「わからない……えっと、何? それどういう質問?」
バタン。突然そんな大きな音がしたと思えば中年の女の人が一人倒れていた。他の三人はといえば、口を抑えて涙を流していたり、神に祈っていたり、上の空になっていたり……とにかく酷い様子だった。
「取り敢えず、僧侶を呼びましょう! お母さん、頼める?」
そう女の子が言えば、各々部屋から出ていった。僧侶だなんて、なんだかRPGの中に入ったみたいだな。そんな事を思いながら俺はまた彼女達の背を見送った。




