第十四話 生命の魔女
「生命の、魔女……」
「ドロテア様は生命を操る偉大な魔法使いだ。お前、そんな事も知らないなんて世間知らずにも程があるぞ」
ケイトが説明を追加してくれる。腕を組みながら、こちらを上から見つめていれば口を曲げた。
「あの……生命を操るって、具体的にはどんな事を……?」
「お前、そんなことも知らないのか?」
曲がった口がますますへの字に曲がる。口の端がぴくぴくと動いていて、今にも掴みかからんとする勢いだ。
「ちょ、グレイのバカ!私が説明するから聞いて!」
「え、うん」
慌ててセシルが間に入ってくる。ケイトが何かをしようとする前に、説明を始めた。
「生命の魔女ドロテア。本人の強大な魔法と知識で生き物の生と死を思うがままに操れるの。本来、死者を生き返らせることは禁忌とされている上に、人族がその領域に立つ事はなかった。だけどドロテアだけはその領域に達してしまった……」
「死者を、生き返らせる……」
セシルの言葉を反芻し、咀嚼する。死者を生き返らせるなんて、到底出来ないことなのは頭の悪い俺でもわかる。
「当時は凄い議論になったそうなんだけどね、ドロテアが誰も生き返らせないと誓って、その場は収まったわ。代わりに、生に関しては好き勝手操れる事になった。自身、他者問わず、寿命や肉体年齢を好きに操作出来る。彼女と戦ったものは、寿命を操られ即死……だからこそ、最強の魔法使いの一角として、このマベネオ大陸では名を知らぬものはいないと言われてるのよ」
「へえ……ドロテア、凄い奴なんだな」
ドロテアに向き直ると、彼女はまたくすくすと笑っている。何が面白いのかはよく分からないが、機嫌を損ねていないようで安心した。大体わかったぞ。つまりこの状況、ドロテアの機嫌を損ねたら死、だ。
「あたしたちの方の紹介はこれくらいでいいかな。次は、あんたたちの事を教えておくれ」
くすりとドロテアは笑って、こちらを見つめる。吸い込まれそうな瞳に圧倒されながら、俺は口を開いた。




