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【コミック第2巻 発売中】外れスキル『コンビニ』で最強の勇者に成り上がる! ~異世界でコンビニ生活を満喫しつつ、オレを追放したクラスメイトを見返す事にしました~  作者: こたつ猫
第25章 コンビニの大魔王

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第四百八十四話 ソード・マスター vs 薔薇の騎士


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「……ウッフッフ。実に素晴らしいわね。私からグランデイル女王の座を勝手に奪い取った泥棒猫のティーナまで、ここにいるだなんて」



 薔薇の騎士のロジエッタと、数えきれないほどの無数の白アリ兵達を引き連れて。

 元、グランデイル女王のクルセイスは、まるで至高のご馳走にありつけた美食家のような目つきで、コンビニチームの中にいるティーナを見つめている。


 どうやらクルセイス達は、グランデイル王城の地下にある『ゲート』のある場所に行こうとしたが……。女神教の枢機卿(すうききょう)が地下空間の入り口に張った、黒い結界を突破する事が出来ず。

 ゲートへの侵入口の前の通路で動けずに、立ち往生(おうじょう)していたようだった。



「やっば……! いきなり、敵の親玉登場の突発イベントが始まっちゃったみたいね! うちが前衛に立って敵と戦うから、ティーナさん達は後方の黒いゲートを背にして防御態勢を整えてね!」


 コンビニチームの中から、後方から押し寄せてきたクルセイス達の軍勢と戦うために。最前線に躍り出てきたのは『剣術使い(ソードマスター)』の雪咲詩織(ゆきさきしおり)だった。


 地下に辿りついたコンビニメンバー達の中で、接近戦を得意としているのは剣士である雪咲(ゆきさき)だけだ。


 『狙撃手(アーチャー)』である紗和乃(さわの)は、後方からの援護射撃が得意であり。玉木は隠密行動による暗殺を得意とする勇者である以上――。

 この中でメンバー全員を守れる『盾』の役割を果たせるのは、当然……雪咲(ゆきさき)という事になる。


 トレードマークである、ボロボロになった日本の学校の制服姿で背中から長剣を取り出し。

 一人で多人数を相手にする事を最も得意とする、ソロゲーマー配信騎士の雪咲(ゆきさき)が、敵の先頭に立つ薔薇の騎士のロジエッタに対して鋭く剣を構えた。



「あらぁ、あらぁ〜? まさかたった一人だけで、このでワタシに勝負を挑むつもりなの〜? こう見えても、ワタシはこの世界で最も長寿な魔女なのよぉ? 大丈夫〜? ゾウに走り寄ってくる小さなワンちゃんみたいに、いきなり蹴り飛ばされて殺されちゃっても知らないわよぉ〜? お〜っほっほっほ〜〜!」


 元グランデイル王国軍の親衛隊長でもあるロジエッタは、自信満々に笑いながら雪咲の前に近づいてくる。


 

 雪咲(ゆきさき)は、地下空間の周囲の状況を瞬時に把握し。ゲートへと至る道の中で最も狭い場所に自分が立つことで、敵が圧倒的な数の優位を活かしてこちらを包囲しないように。

 敵の主力であるロジエッタと、一対一で戦える場所を探し出して、そこに敵を誘い込もうとしていた。


「ふぅ……」


 深呼吸をしながら長剣を構えた雪咲(ゆきさき)は、チラッとだけ後方を確認して。『狙撃手(アーチャー)』の紗和乃(さわの)に対して目線だけで合図を送る。



 正直な所……薔薇の騎士のロジエッタは、雪咲一人では到底太刀打ちが出来ないほどの強敵だ。


 なにせロジエッタは、この世界で5000年以上も生きてきた不老の魔女であり。女神教から離反する前は、武闘派の魔女として最前線で数々の敵と戦い続けてきた歴戦の猛者(もさ)でもある。


 そんな『超』がつくほどの強敵キャラと、たった一人だけで戦う事になった雪咲(ゆきさき)。決戦を前に彼女の脳裏に今、よぎる感情は……。


 日本に残してきた両親の事でも無く。自分の事を応援してくれて、いつも投げ銭を投じてくれたゲーム実況配信の熱烈なファン達の事でも無く。



 たった一つの、シンプルな熱い想いのみだった。



 ……やっばぁ〜〜っ!! なにこれ、なにこれ、超〜〜燃える激熱展開じゃん! うち、このバトルイベントを無事に攻略出来たら、絶対にレベルがめっちゃ上がるよね? もしかしたら、彼方(かなた)くんのレベルを超えちゃうかも? そうしたら、うちがコンビニ共和国の中で最強の勇者ポジションに躍り出ちゃうんじゃないの〜〜!? そんなの、マジでテンション爆上がりになるに決まってんじゃ〜〜ん!!



 雪咲(ゆきさき)の瞳は、眩しいくらいにキラキラと輝きを放ち。最強の敵キャラを前にして。そして無数の白アリ兵達が迫ってきそうな、この最悪な状況下であるにも関わらず。


 その顔には、子供のようなワクワクが止まらない満面の笑みが溢れていた。


 脳内のアドレナリンがドクドクと放出して体内に溢れ出し、救いようの無い孤高のゲーマー(たましい)に完全に火がついてしまったのだ。


 日本にいた時には、好んでソロプレイヤーとしてFPSゲームばかりを実況配信していた雪咲。

 そんな彼女には、誰にも譲れない独自のゲームスタイルの法則があった。


 雪咲が初めて、FPSゲーム配信に夢中になったのは……当時、日本のゲーム実況界において。課金アイテムで手に入れた可愛い女子校生服を着たキャラクターを操り。名だたる有名男性ゲームプレイヤーを、ボコボコになぎ倒して無双していた有名女性実況配信者を見てからだ。


 まだ子供だった雪咲は、その配信者のプレイを見て。すぐに圧倒的な強さの(とりこ)になってしまった。


 ただでさえ、男性プレイヤーの多いFPSゲーム実況配信界において。雪咲の憧れる女性配信者は、当時国内で開かれていたゲーム大会において、『最強』の名を欲しいままにしていた。

 常に誰ともチームを組む事もなく、チート技を全く使用する事も無く。孤高のソロプレイで完膚なきまでに敵チームをなぎ倒し続ける、女子校の制服を着たキャラで活躍する女性配信者。


 そのプレイスタイルに憧れた雪咲は、自分もソロプレイヤーとして操るゲームキャラクターに女子校の制服を着せ。圧倒的な数を誇る敵チームを一人でボコボコにして倒す事に、極上の快楽にも似た至福の喜びを感じていたのである。


 そんな変態ゲームプレイヤーでもある雪咲にとって、今……目の前で起きている展開はまさに、脳汁がドバドバ放出される『激熱イベント』なのだ。


 誰に何を言われようと、この至高の興奮を味わえる瞬間を他人に譲る事など出来ない。


 異世界に飛ばされて来てから、これまでおおよそ1年半。その間に一回も着替えた事が無い、ボロボロに変わり果てた学校の制服を雪咲が今も着続けているのは……彼女にとってそれが、絶対に譲れないこだわりのゲームのプレイスタイルだったからだ。


 だから……例え相手が不老の魔女であり。クルセイスに仕える最強の騎士のロジエッタであろうとも、雪咲はこの場から一歩も引く事はあり得ない。


 むしろ喜んで、この激熱バトルイベントを楽しみたいと雪咲は心から願っていた。



「……何だかこっちを見つめながら、ずっとニヤニヤした目つきをしてくる気持ちの悪い女騎士ね〜。ワタシ達の目的はあなたの後ろにいる子達なんだから、変態騎士は、さっさと始末させて貰う事にするわよ〜!」


 

 薔薇の騎士、ロジエッタの持つ薔薇の装飾をした剣が怪しげな光を放ちながらこちらに迫ってくる。


 だが……雪咲は、ロジエッタの剣が光り始めたその瞬間に、両目をつぶって。自分の前に迫ってくるロジエッタの視界情報を完全に遮断した。



「……なっ? 目を閉じたですって……!?」


 いつの間にかに、雪咲の頭にはコンビニ猫のフィートがピョコンと乗っかっている。


 そして雪咲の後方に控えている紗和乃(さわの)が、魔法の弓矢で無数の光弾を周囲に向かって放ち。

 暗い地下の空洞の中を、まるで太陽の光に照らされた真昼のように明るく照らし出していた。


 両目を閉じている雪咲は、その場で立ち止まり。後ろに下がる様子も見せずに冷静に剣を構えると。


 目の前に迫り来る薔薇の騎士の剣を、横薙ぎに払って弾き飛ばし。真下からカウンターで切り上げるようにして、ロジエッタの肩に深い斬り傷を負わせる事に成功する。



「ギャァァァーーっ!! そんなっ!? このワタシの体に傷を負わせるだなんて……!?」


 ロジエッタは慌てて、弾かれた剣を拾い上げ。

 

 変態ゲーム配信騎士の雪咲から、大きく距離を取って。自分の身を守る為の防御態勢を整えようとする。


 だが……そんなロジエッタに畳み掛けるようにして。頭に茶色い子猫を乗せた雪咲は、両目をつぶりながら凄まじい勢いでロジエッタに迫っていく。



「コイツ……調子に乗るんじゃないよッ!!」


 ロジエッタは必死に、雪咲の猛攻に対して反撃を試みる。

 だが……『光』の能力者である、ロジエッタの放つ怪しい光の攻撃は完全に無効化されていた。


 事前に薔薇の騎士のロジエッタが持つ『光』の能力については、彼方(かなた)から紗和乃(さわの)達に情報伝達がなされている。


 ロジエッタの操る怪しげな光を視界の中に入れてしまうと。その攻撃を受けた者は、視界が完全に封鎖され。行動不能に陥ってしまう。

 

 その為、ロジエッタが光を放てないように。それを上回る光量で周囲を照らし出す必要があった。


 雪咲(ゆきさき)の後方から魔法の矢を放つ紗和乃(さわの)は、周囲を明るく照らす光の矢を無数に放ち。ロジエッタの後方に控えている白アリ兵達が、こちらに近寄る事が出来ないように牽制(けんせい)の攻撃を放ち続けている。


 そんな太陽の光にも匹敵する、余りにも眩しい光量で照らし出された地下空間の中で。


 コンビニ猫であるフィートが持つ『視界を同期させる』能力を付与された雪咲が、両目を閉じながらロジエッタに向けて剣を振るう。


 コンビニ猫のフィートは明るい光の中でも、光の量に合わせて自分の瞳孔(どうこう)を調節し。黒目を針のように細くして、網膜(もうまく)に入る光の量を最小限に制限する事が出来た。


 そんなフィートの持つ特殊な視界と、自分の視界を完全同期させた雪咲は……目を閉じながら剣を振るっても。薔薇の騎士のロジエッタと互角以上の戦いをする事が可能になっている。


 その為、光の能力を完全無効化されたロジエッタに対して、雪咲&フィートのコンビは優勢に戦いを進めてる事が出来ていた。



「クッ……! この変態女騎士めッ! その気持ち悪いニヤニヤ笑いをいい加減にやめなさい!!」


 例え光の能力を無効化されていても、薔薇の騎士のロジエッタはこの世界に現存する不老の魔女の中で、最も長命な存在だ。


 そのロジエッタを相手にしているというのに、雪咲の剣技は信じられないくらいに()え渡っていた。いや……本人も驚く程に覚醒していて、本来の実力の200%以上の実力が引き出せているのかもしれなかった。



 それはひとえに雪咲(ゆきさき)が、みんなの見ている前で強敵を追い詰める事が出来ているという……アドレナリン全開の自分の姿に酔っていたからでもある。


 まるでお酒を飲むと覚醒する、中国拳法の使い手のように。雪咲には注目を浴びる大舞台で活躍をすると、自身の能力を何倍にも引き上げて戦う事の出来る特殊能力が備わっているようだった。


 

 そんな変態騎士に自分が追い詰められているという事実に、当のロジエッタは屈辱に顔を歪ませる。


 こんなにも狭い地下の中では、数の利を活かして一気に戦うというのは得策ではない。

 ましてクルセイス達には、雪咲の後方に控えるティーナを殺さずに手に入れたいという目的があった。


 もしも白アリ兵達を突撃させて、乱戦の中でティーナが殺害されてしまうという突発的なアクシデントは避けたい。その意味でも、まずはこの盾役となっている雪咲から先に始末しておきたかったというのに……。


 まさかここまで苦戦を強いられるとは、ロジエッタには思いもしなかっただろう。



 それもそのはずだった。剣術使い(ソード・マスター)雪咲(ゆきさき)の姿は、ときどき空気と同化したように半透明に色褪せて見えづらくなる時がある。


 ロジエッタはあと一歩で、雪咲にとどめを刺せるというタイミングまで詰め寄る事が出来ても。たびたび、透明化した雪咲の姿を見失い、その勝機を逃していた。


 この透明化する能力には、見覚えがある。


 そう、この能力は確か……女神教を統べる、『暗殺者(アサシン)』の能力を持つ、枢機卿(すうききょう)が所持していた戦闘スキルだったはず……。



「これはまさか……あの子が、あなたに力を貸しているという訳なのね!?」

 

「気付くのが遅かったわね! そうよ、私にはティーナさんの持つ『複製&移植(コピー&ペースト)』能力によって、玉木さんの持つ暗殺者(アサシン)の能力も付与されているのよ!」



 透明化して、空気と同化するようにこっそりロジエッタの背後に忍び寄った雪咲が、長剣を真上から振り下ろし。


 薔薇の騎士である、ロジエッタの左手を一気に切り落としてみせた。


「ギャァァァーーーーッッ!!!」


 痛みに悶絶するロジエッタの背中を蹴り倒し。雪咲は素早く剣先を、倒れたロジエッタの首元に突きつけてみせる。



 それは……あまりにも想定外過ぎる、まさかの結末。


 不老の魔女であり、この世界を長い間、混乱に陥れてきた混沌の魔女のロジエッタが、女子校生剣士である雪咲たった一人に敗北を喫したのだ。



「――勝負あり……ね! さあ、あなたの頼れる親衛隊長は敗北したわよ! クルセイス! 部下を失いたくなかったら、引き連れてきた白アリ兵達を退(しりぞ)けなさい!」



 雪咲を後方から支援していた紗和乃(さわの)が、魔法の弓矢を構えながら大声で叫んだ。


 だが、クルセイスは全く動じる気配を見せない。

 それどころか、地面に体を叩きつけられ。雪咲によって剣を突きつけられているロジエッタを見ても、何も動揺していないようだった。

 


「……ウッフッフ。そうね、そろそろ楽しい茶番はもう終わりにしましょう」



 クルセイスは、その場で不敵に笑ってみせる。


 そして後方に控える白アリ兵達に、右手をあげて合図を送ると。

 無数の白アリ兵達が大きく道を開けて、白い粘膜のロープによって。磔台(はりつけだい)にぐるぐるに縛られた、上半身裸の男を前に運んできた。

 


「――なっ……?」


 紗和乃(さわの)は声をあげて驚く。驚きの声をあげたのは紗和乃だけじゃない。ロジエッタを制した雪咲も、黒い結界の前にいる玉木も驚愕の表情を浮かべている。


 磔台(はりつけだい)に縛られて運ばれて来た男は、彼女達にとってはとてもよく見覚えのある男だったからだ。



 そう、その男は……彼女達のクラス委員長であり。

 

 行方不明扱いとなっていた――『不死者(エターナル)』の能力を持つ倉持悠都(くらもちゆうと)の姿だったのだ。



 クルセイスはその倉持の首元に、鋭いナイフを突きつけて、こちらを嘲笑うように笑いかけてくる。



「……さぁ、あなた達の大切な仲間であるこの男の首が、ナイフでかき切られるのが見たくなければ、私達の指示に従いなさい。それとも、大切な同級生が(のど)を切られて、血飛沫(ちしぶき)を飛び散らせて死亡するのを、目の前の特等席で見たいのかしら? ウッフッフ」


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