第四百八十一話 幕間 襲撃されたグランデイル王都
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「――玉木? 外が騒がしいみたいだけど、何かあったの……?」
「アスティア様、大丈夫です。グランデイル王城が想定外な敵による襲撃を受けてしまいましたが、今は結界を張って敵の侵入を防いでいます。ですが、シャルテナ先輩や他の多くの魔女が犠牲となってしまいました………」
グランデイル王城の地下の最深部で、異世界に渡る為の『ゲート』の中に入り。
紫色の魔法陣の中で、意識を集中させながら瞑想していた女神アスティアは、枢機卿からの報告を聞き。
その場で悲しそうに瞳を湿らせて、小さく俯いた。
「……そうなのね。ではもう、私達以外の仲間はみんな居なくなってしまった訳なのね」
「はい、王都の外ではカヌレがコンビニの大魔王によって倒され。現存する女神教の魔女はもう、私一人だけとなっています。………ですが、アスティア様の願いを叶える儀式の準備だけは、最後まで無事に終える事が出来て本当に良かったです」
王城の地下の大空洞の中で、女神教の大幹部である枢機卿は、異世界に渡る為の『ゲート』を作動させる装置の、最後のスイッチにそっと指をかけた。
周囲を見渡せば、この場に残っているのはもう……枢機卿と女神アスティアの2人だけとなっている。
異世界転移のゲートの中には、水色の髪の美しい少女――女神アスティアが天に祈りを捧げるように。
白い花を幾重にも織り込んだ、美しいドレスを全身にまといながら。魔法陣の中で両手を合わせて立っていた。
魔王種子を10個組み合わせる事によって、作成された『真なる不老不死』を実現させた魔法の心臓を体の中に埋め込み。
そして自身が行きたいと願う、目標の異世界に渡る為に必要な『座標』を自動解析出来る魔法装置もゲートの中に組み込んだ女神アスティアは、とうとう1万年という遥かなる長い時を経て――。
最初の勇者のいる、別次元の世界へとここから旅立とうとしていた。
「玉木……。私が異世界に渡ったら。あなたは、一番大切に想う人の所に真っ先に向かってあげてね。もう、後悔は絶対にしないように。あなたの最後の願いか叶えられる事を、私は心から祈っているから」
「………はい。分かりました、アスティア様。この世界がこれからも平和である為に。女神様の居なくなった後の世界が、この世界の人々にとってより良い世界となるように。私はもう一人のコンビニの勇者と協力をして、これから最後の戦いに挑もうと思います」
普段は黒いフードで、顔の全てを覆い隠している枢機卿が、今は……その顔を隠してはいなかった。
そこには、この世界に召喚された時とほとんど顔が変わっていない。『暗殺者』の勇者である、玉木紗希の姿がある。
彼女はこの世界で、大切な恋人がコンビニの大魔王と化し。自分の存在が彼に忘れられてしまうという、失意の中で女神アスティアと出会った。
そして、彼女の純粋な心に共感し。その一途な想いに心を打たれて。女神のたった一つの願いを叶える為に戦う女神教の大幹部として、アスティアと共にこれまで長い人生を歩んできた。
そんな彼女の親友でもある女神アスティアは今日、とうとう……その願い叶えて。
彼女が心から会いたいと望む『想い人』のいる世界へと、これから旅立とうとしている。
枢機卿自身も、魔王と化した彼女の大切な想い人の心を取り戻す為に。女神アスティアがゲートを通して異世界に旅立つのを見届けた後で。
彼女がこの世界で挑む事になる、一番最後の戦いへとこれから臨もうとしていた。
枢機卿は、親友であるアスティアに向けて。最後にニコリと優しく微笑んでみせると。
異世界転移装置の稼働ボタンを指で押し、アスティアの最後の姿をその目に焼き付けるように見つめ続けた。
すると――複雑な古代の魔法文字が刻まれた、黒い箱のような装置が動き始め。
紫色の魔法陣の中に立つ女神の体が、白い光にゆっくりと包み込まれ始める。
「……さようなら、玉木。今まで……本当の本当にありがとう! あなたと友人になれて、長い年月を共に歩めた事を私は本当に誇らしく思っているわ」
「アスティア様も、どうか素敵な旅を………! アスティア様のこれまで歩まれた苦難の道のりが、ちゃんと報われる事を私も心から祈っています」
紫色の魔法陣の中で、白い光を放つ稲妻が何度も空間の中で点滅を繰り返し。
半透明な球体な吸い込まれるように、女神アスティアの姿は次第に光の中に溶けて消え去っていく。
それは本当に、一瞬の出来事だった。
ここに至るまでにかかった、一万年という長い年月が……まるで瞬きをする程のわずかな時間だったと感じられるくらいに。
たった一人で地下の魔道研究所の中で孤独に研究を重ねていた時期が、遠い昔の出来事であったかのように。
古代マクティル王国のお姫様であった、天真爛漫な普通の少女は……ついにその想いを成し遂げて。
今、彼女の想い人のいる異世界へ渡ろうとしている。
彼女はどこにでもいる、普通の少女だった。
でもだからこそ、誰にも成し遂げられない壮大な道のりを、これまで強い信念を持って。決して後ろを振り返る事なく歩き続ける事が出来たのだ。
ただ、この日の為だけに。ただ、伝えたい言葉を遠い異世界の青年に伝えに行く為だけに。
少女はこの世界から始めて、異世界へ渡る事に成功した『最初の人間』と成る事が出来たに違いない。
白い稲妻が何度も輝きを放ち、激しく空間が捻じ曲がる現象を経て。旧マクティル王国の地下牢でもあったこの場所は……再び、元の静けさを取り戻していた。
後には、黒いフードを再び顔に被り直した枢機卿だけが一人取り残されている。
「………もう、この場所を守っている結界が破られるのも時間の問題ですね。そうなれば、異世界へ渡るゲートを求めて。敵がここに攻め込んでくるでしょう」
一人、グランデイル王城の地下空間に残された枢機卿は、右手に握られた古い猫の形をしたキーホルダーと。
左腕に巻かれた、大昔に彼女の恋人から貰ったスマートウォッチを見つめながら決意する。
「私も………最後の決着をつけにいきます。カヌレ、時間を稼いでくれて本当にありがとう。ここに残されたゲートについては、新しい彼方くんの仲間達に任せる事にします。私の相手は白アリの女王ではありませんので。遠い昔に奪われてしまった、私の大切な彼方くんの心を今度こそ取り戻してきます………!」
枢機卿は、両手に黒いダガーナイフを握り直す。
そして彼女の親友である女神アスティアが旅立った後のゲートを、もう一度だけ見つめ。親友の願いが叶う事を心から祈り、深くその場で頭を下げてから。
視線を鷹のような鋭い眼光に切り替えて、グランデイル王城の地下空間から離れていった。
彼女がこれから再会しないといけない想い人は……王都のすぐ近くにまで迫ってきている。
女神アスティアは、一万年の歳月をかけて。自身の願いを成就させた。
だから今度は、枢機卿自身も……自分の願いを叶える為に彼と戦わないといけない。
例え相手がどれだけ強大であったとしても。もう、彼女には自らに定められた運命から、逃げるという選択肢は決して無い。
5000年前にこの世界に共に召喚された、恋人の秋ノ瀬彼方を……枢機卿は、今度こそ取り戻してみせると心に誓うのだった。
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「――おいおいおい、何なんだよ、これはよ〜!? グランデイルの王都は一体、どうなっちまったんだよ?」
緊急事態に見舞われた時に、必ず最初の第一声をあげるのは、彼の役割だと決められているかのように。
『火炎術師』の杉田勇樹が、口を大きく開けて。
変わり果てたグランデイル王都の街の惨状を見て、驚きの声を上げた。
ソラディスの森から、必死に逃げてきたコンビニ共和国に所属する異世界の勇者達一向は、目的地であるグランデイル王都に辿り着くと。
王都が何者かの襲撃を受けて、完全に破壊されている状況を目の当たりにしてしまう。
ここには、女神アスティアを守る為に。女神教の主力部隊が駐屯していたはず……。それなのに今は見るも無惨な廃墟と化していて、街の中には女神教の軍隊は一人も残されてないようだった。
「これは……!? 王都は何者かの襲撃を受けたという事なのかしら? 街に残っている残骸の痕跡が全て新しいから、きっとついさっきまで王都の中では激しい戦闘が行われていたようね」
この中では最も戦闘経験の豊富な、『剣術使い』の雪咲詩織がそう呟く。
それに応じるように、『舞踏者』の藤枝みゆきや、『ぬいぐるみの勇者』の小笠原達、カフェ好き3人娘がうんうんと頷いてみせた。
「雪咲の言うとおりだねー。きっとここで、めっちゃ激しい戦闘が行われたんだと思うよー。だって地面に赤い血の跡がいっぱい残ってるものー」
「そうね……でも問題なのは、この場所で女神教の軍隊は『何』と戦っていたのかという事と。戦いによって生じたはずの多くの死体は、どこに消え去ってしまったのかという事でしょうね」
3人娘の小笠原や、みゆきが冷静にグランデイル王都の中の状況を観察している中。
その様子を見ていたコンビニ猫のフィートが、大声で全員の頭に向けて念話で呼びかけた。
『にゃ〜〜! そんな事を今、じっくりと調べている時間は無いのにゃ〜! 後ろからあの8本脚で動く、キモキモ巨大コンビニ要塞が追って来てるのにゃ〜! 早く地下に逃げないと、すぐに敵に取り囲まれてしまうのにゃ〜!』
頭の中にキーーンと、頭痛のように鳴り響くフィートの絶叫が聞こえて。
コンビニチームの面々は、冷静に自分達の置かれている状況を再認識した。
「そ、そうね……! 王都の状況が不気味な事は間違いないけど、ここでボーっと突っ立っている訳にもいかないわ。女神教の軍隊がいないのなら、グランデイル王城の中に入るのは容易なはず! みんな、急いで王城の地下に向かうわよ!」
参謀役の紗和乃が掛け声を出し、全員が一斉にお互いの顔を確認して頷き合い。
周囲の様子を警戒しながら、全員がまとまって王城に向かって街の中を走り出す。
正体不明な敵からの奇襲を警戒して、後方のしんがり役には、コンビニの守護騎士アイリーンが剣を構えて務めてくれていた。
「――見えてきたわ! もうすぐグランデイル王城よ! 案の定、見張りも警護の騎士も誰もいないみたいね」
紗和乃が指をさす方向には、グランデイル王城の中に入れる正面門があった。
本来ならそこには、女神教の精鋭騎士達が整列していて。紗和乃達、コンビニチームの入城を阻止してきたに違いない。
だが……今、この王城を守備している騎士は、見渡す限り誰も居なかった。
無人と化したグランデイル王城の中に、紗和乃達は急いで走り込んでいく。
「はひぃ〜! 全力で走り抜けたから、疲れちゃったよぉ〜。いったんコンビニ支店を出して、昆布おにぎりを食べながら、体に栄養補給をしたいよぉ〜」
「紗希ちゃん、まだ栄養補給は早いわ。一見すると城の中は無人に見えるけど、きっとこの王城の中には私達が全く想定していないような敵が、いっぱい潜んでいる可能性もあるんだからね!」
疲れて王城の中の謁見の間で、冷たい大理石の床に尻餅をついて休んでいた玉木を、親友の紗和乃が嗜めた。
すると――そんな、紗和乃の予言がまさに的中してしまったらしく。
一番後方に控えていたアイリーンが、右手に黄金剣を構えて臨戦態勢を取り。全員に注意喚起をする。
「紗和乃様、玉木様、ティーナ様、気を付けて下さい! どうやら私達は敵の『巣窟』に入り込んでしまったようです。私のセンサーが、接近してくる敵の気配を複数探知しました。敵はゆっくりとですが、確実にこちらに向けて全方位から近づいてきています!」
「敵の気配が複数って、具体的にはどれくらいの敵がここに近づいて来ているの、アイリーンさん?」
アイリーンは、敵の位置と数を補足出来る装置を顔に付け。額から冷や汗を流しがら、算出した数値をコンビニメンバー達に正確に伝えた。
「敵の数は――おそらく数万体以上。こちらを包囲するようち四方八方から押し寄せて来ています! 既に敵は王城の中に侵入して来ていて、敵との距離はもう僅か数メートルほどしかありません!」
「数万体以上ですって!? この城のどこにそんな数の敵が押し寄せて来ているというの? 全然、敵の姿が見えないじゃん!」
アイドルの野々原を守るように、カフェ好き3人娘達も密集して戦闘態勢をとった。
剣術使いの雪咲も剣を握り直し、コンビニメンバーの全員がゴクリと固唾を飲んで。周囲をぐるりと見回して警戒しながら注視するが……。
数万体を超えているというアイリーンが報告した敵は、全く出現する様子は無かった。
「アイリーンさ〜ん! 敵って、本当にこのお城の中にもう入って来ているの〜?」
不安になった玉木が、恐る恐る声をかけてみる。
「――ハイ。至近距離にまで迫って来ています! 玉木様の前方5メートル先に、もう敵は接近しています」
「ええっ〜! それってもう、敵はこの広間の中にいるんじゃないの〜!?」
驚いて絶叫する玉木の叫び声を聞いて、全員が同じ事を頭の中で思いつき。一斉にグランデイル王城の地下を見つめて警戒する。
「……クッ! という事は……敵は地下から押し寄せて来ているという事なのね!」
紗和乃がその言葉を発した途端――。
広間の床に敷き詰められていた、硬い大理石の床が音を立てて崩落し。その下から無数の『白アリ魔法戦士』の群れが、地上に噴火するマグマのように勢いよく飛び出してきた。
「これは――まさか、白アリ兵なの!? という事は、クルセイスがここに攻め込んで来たというの?」
勘の良い紗和乃は、瞬時にグランデイル王城で起きた出来事を理解した。
おそらく消息不明になっていた元グランデイル女王のクルセイスが、大量の白アリ兵達を引き連れて王都に地下から襲撃してきたのだ。
そのせいで王都に駐留していた女神教の軍隊は、白アリ兵の奇襲を受けて全滅させられてしまったのだろう。
だとすると……想像を絶するくらいに、凄まじい数の白アリ兵をクルセイスは率いているのかもしれない。なにせ女神教の最精鋭の部隊が、全滅させられてしまっているほどなのだから。
「――みんな! 急いで地下空洞に向かうわよ! 王都の中は既に敵の白アリ兵で埋め尽くされている可能性があるわ!」
『ぶみゃあ〜、なのにゃ〜〜! カサカサ地面から白いアリが湧いてきて超気持ち悪いのにゃ〜! この城はもう根元から白アリに食べられてしまっているのにゃ〜!』
念話で絶叫を上げているコンビニ猫のフィートを、玉木が優しく拾い上げて。自分のポニーテールの髪の上にそっと乗せてあげると。
コンビニメンバー達は、大急ぎでグランデイル王城の地下空洞に向けて進んでいった。
追撃してくる白アリ兵を、アイリーンが最後方で防ぎつつ。地下空洞への道を知っているティーナを中心にして。コンビニメンバー達は、全速力で王城の中を駆け抜けて、地下へと至る巨大な螺旋階段のある場所に向かう。
「この螺旋階段を下に向けて降りていけば、『ゲート』がある地下の大空洞にまで辿りつけます。そこまで急ぎましょう!」
「……って。地下の壁からも、うじゃうじゃ白アリが出てきてるじゃ〜〜ん!! マジでトラウマになりそうだから、みんな早く逃げようよ〜!」
「有希は、直接戦闘が出来ないからちゃんと私の後ろについてきてね! みゆき、私達で後方にいるアイリーンさんの援護をするわよ!」
「了解ーーっ! 雪咲は先頭に立って、ティーナさんや、副委員長を守ってよねー! いざとなったら、有希に歌って貰って、結界を張るから。先に行けるメンバーはどんどん階段を降りちゃってねー!」
狭い螺旋階段をコンビニメンバー達全員で、一斉に下に降りるのは時間がかかる。
おまけに最後尾のアイリーンにかかる負担が重すぎる為、カフェ好き3人娘達が後方にいるアイリーンの援護に回る事となった。
「おーい! 俺も後方に残るぞーー! お前達3人だけに任せといたら不安だからなー!」
火炎術師の杉田が手を挙げて、カフェ好き3人娘達の中に加わろうとする。
「えー、杉田はむしろ足手まといだけど……まぁ、いっか! いいよー、杉田もアイリーンさんの援護をしてあげねー。私達も余裕が無いから、自分の身はちゃんと自分で守るんだよー!」
「おおぅ、任せとけって! 俺の炎があった方が暗い地下でも、明るく照らされて見通しが良くなるからな! マジで役に立つから、頼りにしろよな!」
結局、螺旋階段の戦いは……大勢の白アリ兵に囲まれて道を遮断されてしまうのを防ぐ為。
アイリーン、カフェ好き3人娘、杉田の5人がしんがり役として後方に残り。
残りの紗和乃、玉木、ティーナ、雪咲、フィートの5人が螺旋階段の下を目指して、先行する事となった。
「ティーナさん、地下の大空洞はまだなの?」
「もう少しです! あと少しで地下の最下層に辿り着くはずです!」
螺旋階段を先行して降り進んでいった紗和乃達は、とうとうグランデイル王城の地下空洞に至る場所の入り口にまで辿り着いた。
だが……そこで、紗和乃達を待ち受けていたのは、黒い幕で厳重に閉ざされた大きな『結界の壁』だった。
「な……何なの!? この黒い結界は……? うちの剣で斬っても全然効かないんだけど!」
地下の大空洞の入り口に張られた黒い結界は強力で、剣術使いの雪咲が剣で全力で斬りつけてもビクともしなかった。
「こんな黒い結界は、以前は張られていませんでした。これは一体、何なのでしょうか……?」
ティーナや、玉木は、見知らぬ黒い結界の存在に驚きつつも。この結界の先には行けない事を知り、その表情は焦りの色合いが濃くなっている。
このままでは、ここで行き止まりとなり。敵の白アリ兵達に追いつかれてしまう可能性がある。
注意深く周囲を見渡してみると、黒い結界の周りには……女神教のローブを着た、数人の女性の死体も転がっているようだった。
おそらくここに倒れている女性達は、女神教の関係者で間違いないだろう。全員が女神教の中で最高位な神官しか着衣を許されない、高貴な紋章の刻まれたローブを身にまとっている。
確か女神アスティアは、地下の大空洞の奥にある『ゲート』の場所で異世界転移の儀式を行っていたはず。
そのゲートに至る道の入り口で、女神教関係者の死体が複数転がっているという事は……。この場で、何かしらの戦闘が起きたとみる方が良いだろう。
……だとすると。もしかしたらここにいる女神教の関係者達は……女神アスティアと直接関わり合いのある、女神教の大幹部の者達だったのではないだろうか?
「……ねぇ、ここに倒れている女性、まだ、息があるみたいよ!」
雪咲が全員に向かって声をかけると、玉木やティーナ達は急いでその場に駆け寄ってきた。
「大丈夫ですか? ここで一体、何があったんですか?」
ティーナに声をかけられた金髪の女性は、額から血が流れ出ていた。おそらく何者かの剣によって、後方から斬りつけられたのだろう。
「……あなた達は? そっか……新しいコンビニの勇者の関係者達なのね。気をつけなさい、ここには『混沌の魔女』がまだ潜んでいるから」
「混沌の魔女? それは、もしかして……」
ティーナには、その名前に心当たりがあった。
以前、コンビニ共和国にいた自分を無理やり攫い。このグランデイル王城の地下にまで、連れてきた元グランデイル女王クルセイスの側近であり。
親衛隊長でもあった、あの薔薇の服をきた魔女の呼び名が確かそうだったはず……。
「私は……女神様に仕える序列2位の魔女、シャルテナよ。混沌の魔女のロジエッタは、私の昔の親友だったのだけど、相変わらず彼女はこの世界の歴史を乱す事に執心しているみたいね。でも、本当に良かった……。玉木が、全部上手くやってくれたみたいだから。どうやらアスティア様は、儀式を成功させたみたいだもの」
既に致命傷を受け、残りの命が僅かであるはずの金髪の女性は……その場で静かに笑ってみせた。
そんな金髪の女性の最後の言葉を聞いて、コンビニメンバーの中にいる玉木が、不思議そうな顔をして女性に話しかける。
「あの、玉木……って、私の事ですか?」
「……えっ? ふふふ。あら、そんなに純粋で穢れを知らない天使のような顔をした玉木の顔が、最後にもう一度見られるなんて、長生きはするものね。あなたは『もう一人の玉木』ね? もしそうなら、あなたはあの黒い結界に決して触っちゃダメよ。もし触れてしまったら、きっとあの黒い結界は……」
金髪の女性シャルテナは、最後の言葉を言いかけて。突然、激しく吐血をして苦しみ始めた。
そして魔女のシャルテナは、そのままコンビニメンバー達に看取られるようにして。ゆっくりと目を閉じて、その場で静かに息絶えてしまう。
その様子を無言で、見守っていた紗和乃やティーナ達の耳に……。
黒い結界の奥にある広大なスペースから、怪しい妖艶な女性の声が聞こえてきた。
「おーーっほっほっほ〜っ! あらぁ、私の大親友だったシャルテナは死んでしまったようねぇ。せっかく長生きをしてきたのに、本当に残念だわぁ〜!」
コンビニメンバー達が、後ろを振り返ると――。
周囲には凄まじい数の、白アリ魔法戦士達がこちらを包囲するように取り囲んでいて。
そしてその奥には、グランデイル王国の薔薇の騎士であるロジエッタと。
これまで多くのクラスメイトの仲間を惨殺し、コンビニメンバー達にとっての宿敵ともいえる、元グランデイル女王クルセイスが不敵な笑みを浮かべながら立っていた。




