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【コミック第2巻 発売中】外れスキル『コンビニ』で最強の勇者に成り上がる! ~異世界でコンビニ生活を満喫しつつ、オレを追放したクラスメイトを見返す事にしました~  作者: こたつ猫
第24章 グランデイルに集う者達

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第四百六十四話 女神からの試練⑦


「さぁ、彼方(かなた)くん。もう少しで、次のエリアに到着出来そうよ。女神からの試練は全部で3つ用意されているはずだから、これが最後の試練になりそうね」



 俺の前を先行して歩いている朝霧(あさぎり)が、こちらに振り返って嬉しそうに微笑んでみせた。


 そんなルンルンのテンションでいる朝霧に対して、(いぶか)しむような目線を向けている俺は、心の中に浮かんでいた疑問を聞いてみる事にする。



「……随分と嬉しそうだな、朝霧(あさぎり)。その様子だと、次の試練で何が用意されているのかを実は知っていて。俺がその内容に戸惑うのを楽しみにしてるんじゃないのか?」


「あら、言ったでしょう? 私はこの女神の試練の内容が記された部分を『読んでいない』の。だから最初から最後まで、新鮮な気持ちでこの試練に挑んでいるのよ? もしそれをまだ疑っているのなら、いつでも私を床に押し倒して、無理やり聞き出しても良いのよ? 彼方くんに荒々しく攻め立てられたなら、私も気持ち良くなってつい本当の事を自白しちゃうかもしれないしね。クスクス……」



 また俺を挑発するかのように、(なま)めかし表情で俺の目をじっと見つめてくる朝霧。


 俺はその怪しい視線に魅了されてしまうのを防ぐ為に、視界を下に逸らして。朝霧の姿を見ないようにして話を続ける事にする。



「話は変わるが……朝霧(あさぎり)。お前の本体は今、一体どこにあるんだ? 俺達と同じこの世界にあるのか? それともどこか別次元に存在していて、そこから俺の物語を読んでいるのか?」



 俺は前々から疑問に思っていた事を、この機に朝霧本人に聞いてみる事にした。


 なにせ目の前にいる朝霧は、いつだって神出鬼没。俺が求めている時には、顔を出さないくせに。ここぞというピンチの時は、俺を助ける為にヒントを用意してくれたりもする謎の存在だ。



 そんな朝霧冷夏(あさぎりれいか)の本体は、一体どこに存在しているのだろう?


 例えば、今……この瞬間に、俺の目の前に降臨している朝霧が、仮に誰かに殺害されてしまったとしたら。それは朝霧本人が死亡する事になるのだろうか? 


 それともゲーム機を操る4次元のプレイヤーのように、どこか別の場所でクスクスと、俺が必死に足掻くこの世界を神様みたいに見下ろしていたりするのだろうか?



「ウフフ。私の本体が今……どこにあるのかですって? それがそんなに気になるの? でもそれを問われても、彼方(かなた)くんに正確に答えるのは難しいわね。彼方くんはRPGゲームをしている時に、ゲーム内の主人公からいきなり『お前は今、どこにいるんだ?』って問いかけられたとしたら、一体、どう答えるのかしら?」


「――? それはゲーム内のキャラから『プレイヤー』である俺が、今どこにいるかとゲーム画面内から聞かれたら……という意味の質問でいいのか?」


「そうよ。もし私が据え置きのゲーム機で遊んでいるなら、自宅のリビングでくつろいでいるのかもしれないし。持ち運び式のポータブル機で遊んでいるなら、学校に向かうバスの中でイヤホンをしながらゲームを操作しているかもしれないわね。私が現在どこにいるのかを問いかけるという事は、そういう事になるのよ」


「……なるほどな。俺の物語を外から読むのが趣味のお前は、図書館の中で本を読んでいるかもしれないし。自宅のベッドの上で横になりながら、コンビニの勇者の物語を読んでいるのかもしれないって訳か。そういう意味なら、お前の本体の『現在地』を問うのは、全く意味が無い事になるのかもしれないな」


「素早く意味を理解してくれてありがとう、彼方(かなた)くん。流石は私が見込んだ、物語の主人公なだけあるわね!」



 朝霧は嬉しそうに、俺の目を見ながら笑ってみせる。


 そんな朝霧の様子を見ていると、俺はなおさら……『叙事詩(ポエマー)』の能力を持つ朝霧冷夏(あさぎりれいか)という女の存在がよく分からなくなってしまった。



 グランデイル王国で行われた、女王クルセイスによる選抜勇者の仕分けが、破けたボロボロのザルの編み目のように適当だった事はよく知っている。


 なにせ、有名インフルエンサーでもあり。実力者揃いでもあったカフェ好き3人娘達を、ど底辺の3軍の勇者に仕分けをして王都に放置したくらいだからな。


 その意味では、俺だって『コンビニ』という特殊な能力を与えられていたにも関わらず。その中身をたいして吟味する事もなく、あっさりと3軍メンバー行きに配属されてしまったくらいだ。


 ……まぁ、確かに初期の俺は、鮭おにぎりと昆布おにぎり、それにお茶のペットボトルしか発注出来ない無能だったのは確かだけど。

 戦場の最前線に無限に物資を送り届けられる、兵站(へいたん)の役割もこなせられると考えれば……めちゃくちゃ有用だった気がするんだよな。


 今思うとクルセイスにとっては、女神教が(のど)から手が出るほどに欲しかった不死の能力を持つ『不死者(エターナル)』の倉持(くらもち)を手にいれられたから。他の勇者の事なんて、本当にどうでも良かったんだろうな。


 

 でも、そんな中でも……3軍の勇者に仕分けされた朝霧の能力だけは、一際(ひときわ)異彩(いさい)を放つ』ものだったと思う。


 一見すると、何が出来るのか分からない能力かもしれないけれど。コンビニの勇者である『俺』の物語を第三者視点で、高い次元から見下ろしている……という意味では、ある意味で本当に『神様』みたいなポジションにいる奴だからな。



「……ウフフ。私の存在についてを、色々と探っている様子の彼方(かなた)くんに。私から一つ、面白い話をしてあげようかしら?」


「面白い話? ほぅ、それは何だ? お前のスリーサイズ情報とかなら、俺の脳内妄想スカウターで既に数値化済みだから、わざわざ話してくれなくても大丈夫だぞ」


「あら、それは残念ね……。でも、私のバストサイズなら、彼方くんお得意の妄想メガネを使わなくても。直接『見て』知っているんじゃないかしら? きっとどんな特徴があるのかも、今の彼方くんなら分かっていそうな気がするんだけどね。ウフフ……」



 こ、コイツ……! やっぱり朝霧(あさぎり)は、さっきの第2の試練で。俺が朝霧の左胸の上にあった小さなホクロの記憶を頼りにして、試練をクリアした事を知っているんじゃないのか?


 元々、俺の歩む物語を過去から未来まで、果ては別の可能性を辿る平行の世界線まで熟知しているような朝霧に、知らない事なんて何も無い……という訳らしいな。



「私が今から話す内容は、何もそんなに複雑な話じゃないの。過去とか未来とか、そういうSF的な話でもないから安心して聞いてくれていいわよ」


「安心出来るような話を、お前が俺にしてくれた事は過去に一度も無かったけどな。まぁ、いいだろう。それがどんな話なのか知らないが、聞かせて貰おうじゃないか」



 朝霧はようやく俺が(しゃ)に構えるのをやめて、素直に話を聞く態勢をとったのを確認すると。口角を上に吊り上げて、にこやかに笑いながら語りかけてきた。


「ウフフ。ありがとう、彼方(かなた)くん。これは私自身についての話でもあるんだけどね。彼方くんは、私が一番大事にしている『趣味』が、何なのかを知っているかしら?」


「――? 朝霧の趣味だって……? そんなのは、もちろん読書なんじゃないのか? だってクラスの中にいた時も、お前はいっつも一人で本ばかり読んでいたのを俺はよく憶えているぞ」


「そうね。読書も、もちろん好きよ。学校にいる時は、周囲にいる同級生の子達から下らない話を聞かされるのが苦痛だったから。話しかけられないように、本ばかり読んでいたのは事実ね。でも、それだけじゃないの。私の本当に大好きな趣味は別にあるのよ」


「本当に好きな趣味だって? 勿体ぶらずに、さっさと教えてくれよ。それは何なんだ? スマホゲームか? それとも実はこっそり、テレビに出てるアイドルの追っかけでもしてたりしたのか?」


「ウフフ。追っかけ……という意味では、少しだけ合ってある部分もあるんだけどね。でも、残念。私が本当に大好きな趣味は……私が頭の中で想像した空想世界を文字にして表現する事。つまり、『小説を書く』事なのよ」


「なっ……!? 小説を書く……だって……」



 ――なんだ、この嫌な感覚は……?


 朝霧から『小説を書く』という言葉を聞いて。俺は不思議なくらいに、気持ちの悪い嫌悪感を感じて。

 全身の小さな毛穴が開いて、ムズムズするような感覚に(とら)われていくのが分かった。



「たくさん本を読んで、自分自身の想像力を掻き立てて。そしてそれらを活かして理想とする空想物語をノートに書きながら、小説を書き上げていくの。私は『異世界』を題材にした小説を書くのが大好きだったから、これまでにも色々な物語を書いてきたのよ」


「……………」


 ゴクリ、と唾を大きく飲み込み。


 俺は無言で、朝霧の語る内容に聞き耳を立てていた。


「そんな中で、私が最もハマっていたのが……クラスにいる同級生の男の子を主人公にして。その男の子が異世界に行って、現実世界ではあり得ないような大冒険をする物語を小説にして書く事だったの。私は特にコレといって何の特徴も無い、いかにも平凡そうな外見をしている男の子を主人公にするのが好きなの。だってそんな普通の男の子が、異世界で大活躍をする物語の方が絶対に面白いに決まっているでしょう?」


「お前の面白いの基準は、俺には良く分からないけどな。でも、一見すると平凡そうな普通男が主人公になって、異世界で勇者をやってる……ってのは、確かに共感出来る設定かもしれないな。倉持みたいなイケメンが主人公をやるより、うちのクラスでいったら桂木(かつらぎ)みたいな奴が勇者役をやってる物語の方が、俺は断然読みたいと思うぜ」



 俺が朝霧の話に合わせて、適当に相槌(あいづち)をうつと。


 朝霧は頬を赤くして、初恋の人に再会した少女のように目を輝かせながら饒舌に語り出し始めた。


「うんうん、そうでしょう! 彼方(かなた)くんも、そう思うわよね? 私はそういう異世界モノの小説を書くのが大好きだったのよ。……それでね、つい最近。やっと私が理想とする『主人公』役を演じられそうなクラスの同級生の男の子を見つけたの。その男の子はまさに私が書きたい、異世界小説の主役にうってつけの人だったの!」


「ほう、朝霧の書く小説にピッタリと合うような男がクラスの中にいた訳か。それは良かったな。水無月(みなづき)だとイケメン過ぎるから、杉田(すぎた)なんてどうだ? アイツはロリコンで神聖童貞戦士だったから、お前の書く物語の普通っぽい主人公役にちょうど良いと思うぜ」



 朝霧と話をしていると、俺の口の中はいつの間にかにカラッカラに渇いていくのが感じられた。


 どうしてなんだ……? まるで砂漠の中にいるみたいに、さっきから唾液が全然出なくなっている気がする。



「……そうね、杉田くんも確かに魅力的だけど。私はもっと理想の人に出会えたのよ。その男の子はいつも、私が学校に向かう為のバス乗り場の前にある『コンビニ』に通っている男の子だったの。学校に行く前も、帰り道も、その男の子は毎日コンビニに通っていて。しかも、鮭おにぎりばかり買っていたのよ」


「……………」


「ウフフ。よっぽどその男の子は、コンビニが大好きだったのね。部活動はしていなくて帰宅部だったみたいだけど、コンビニだけは毎日欠かさずに通っていたの。私はそんな男の子の姿を、バス乗り場のベンチに座りながら毎日見つめ続けていた。雨の日も、雪の降る日も、ずっとずっと……その男の子の事だけを見ていたのよ」



 指先がブルブルと震え出している。


 何なんだよ、このおぞましいほどの嫌な悪寒(おかん)は……。


 話しながらずっと俺の目を見つめて、ニヤニヤと笑っている朝霧の顔を見て。なぜか全身が震え上がるほどの『恐怖感』を、俺は抱いてしまっているのが分かった。


「さっきからずっと震えているみたいね、彼方(かなた)くん? 何も心配しなくてもいいのよ。私はね、毎日バス乗り場から見ていたその男の子を題材にして、新しい物語を書こうと思ったの。平凡な顔をしたその男の子が、突然……異世界に召喚されてしまう物語。しかも、その男の子が大好きだった『コンビニ』を能力として使えるお話を書こうと決めたのよ」


「――やめろッ!! お前の書きたい小説の話なんて、俺は聞かされたくない! もう、やめるんだ!!」


 俺は自分でもびっくりするくらいに呼吸を乱して、自分が書き始めたという小説の内容を、饒舌に話し始めた朝霧を黙らせようとした。


 ――もう、限界だった。嫌な予感はずっとしていたけれど。これ以上は、とても無理だ。聞いてなんかいられない、俺の精神が持ちそうにない!



「どうしたの、彼方(かなた)くん? ……ウフフ。心配しないで。私が書き始めた『コンビニの勇者の、秋ノ瀬彼方(あきのせかなた)くんの物語』は、本当に素敵な物語になりそうなの。私も続きを書くのが楽しみで、毎日本当にワクワクしてしまうくらいなのよ」


「やめろ! お前は何が言いたいんだッ!! まさか俺なこれまで歩んできたこの世界での出来事の全てが、お前が机の上で空想で書いた想像の産物でしかない、などと言うつもりじゃないだろうな! 俺はお前の創作物なんかじゃない。ここに確かに存在していて、みんなと一緒にこの世界で生きてきたんだ!」



 ハァ……ハァ……ハァ……。


 激しく呼吸を乱し、俺の肺は稼働率100%をとっくに飛び超えて、暴発寸前な状況にまでなっていた。



 そんな事が絶対なあってたまるものか……! 嘘だ、全部デタラメに決まってる! 


 俺が朝霧(あさぎり)の書いた空想の世界の主人公だとしたら、この異世界は何なんだ? 全て朝霧が学校の授業中に片手間に書いた、趣味の小説の物語だとでも言うつもりなのかよ!


 そんなのはあり得ない! いや、絶対に認められない!


 俺は朝霧の下らない言説を全て全否定してみせる。そうでないと、俺が今まで大切にしてきた全てが……ただの本好きの少女が書いた『空想小説でした』、なんてオチで片付けられてしまう事になるからだ。



 朝霧の話を全否定して、俺はすぐにでも全てを窓の外にぶん投げて放り捨ててやりたい気分だったが……。

 心のどこかでまるで心臓を掴まれたかのように、激しく動揺してしまっている自分自身にも気付いていた。



 何で朝霧だけに、『俺の物語』の全てを見通せるような特殊能力が授けられていたんだ?



 それは俺が今までずっと感じてきていた、この世界に対する疑問の一つでもあったからだ。


 まさか、本当にこの世界を書いた『作者』様がここに降臨して。自分の描いた小説の世界に潜り込み、主人公役の俺との会話を楽しんでいる……とかいう、設定なんじゃないだろうな?


 今まで俺がずっと聞かされてきた、この世界には無数の平行異世界が存在しているという多世界解釈についても。

 その無数の世界の数だけ、朝霧の脳内で生み出された別のifの世界線が存在しているから……なのだとしたら。


 確かに、それで全ての辻褄が合ってしまう部分もあるんだ。朝霧の持つ特殊な能力は、朝霧がこの世界の『作者』であるという仮定をしないと、あまりにも説明がつかない事が多すぎると俺自身が疑っていて、その事をつい認めてしまいそうになっていた。



 だからこそ……俺は朝霧(あさぎり)の話した内容を認めるのが怖かった。それを理解する事を心の底から恐怖した。


 お前は『私が作った物語で、主人公役を与えられたキャラクターに過ぎない』と言われてしまう事が……俺は本当に恐ろしい。

 RPGゲーム内のキャラが創作者に、君はただの機械的な数値によって作り出された存在なんだよと言われてしまうほど、恐ろしい事は無いからだ。



 全身から冷や汗を流して、完全にその場で硬直をして座り込んでしまった俺の憔悴しきった様子を見て。


 朝霧はニヤリと高みから見下すように笑って、俺に肩に手を当てて優しい声をかけてきた。



「ウフフ。少し怖がらせ過ぎちゃったみたいね。安心して、彼方(かなた)くん。今の話は全部、私がこの場で即興で作ってみた『冗談』だから」


「……ハァ? 今のが全て冗談……だっていうのか?」


「うん、そうよ。思ったよりも今の彼方(かなた)くんの精神には、クリティカルヒットしちゃったみたいだけど。『半分』は嘘みたいなものだから心配しなくても良いわ。彼方くんは、最初からずっと彼方くんよ。私が作り出した『空想小説』のキャラクターなんかじゃないから、その点は本当に安心していいわよ」


 

 飛行機が乱気流の中を、何度も急降下と急上昇を連続でするかのように。

 話を何度も急転させて、俺を惑わそうとしてくる朝霧に……俺はもう、不信感しか持てないでいた。



「俺はもう……お前の話を真面目に聞くのはやめる事にするぞ。そうやってお前は、俺の心を惑わして。俺が焦って狼狽する様子を見て楽しんでいるんだろう?」


「ウフフ、そうね。それは認めるわ。まぁ、私がバス停で、いつも学校帰りにコンビニに通っていた彼方(かなた)くんの姿をこっそりと見ていたのは本当なんだけどね。彼方くんは、コンビニはドーソン派なの? 近くにあるエイト・イレブンにはあまり入らなかったみたいだけど?」


「バーカ! 俺は毎日気分によって、入るコンビニを変えてたんだよ。ミニミニストップとか、Fマートとかも俺の大好物だぞ。日本で俺ほどコンビニ好きな高校生は他にいないと自負していたくらいなんだからな」



 ようやく、俺の気分は少し落ち着いてきたらしい。


 朝霧に対しても、軽口で話しかけられるまでに気持ちも戻ってきたし。さっきまでの心の動揺は少しずつ収まり始めていた。



 そうだよ、いくら朝霧が俺の物語限定で『過去と未来』を全て見通せる能力を持っていたとしても……。


 それだけで、朝霧が俺の物語の『作者』認定するのはいくら何でも話が飛躍し過ぎてる。

 実際に、朝霧には出来ない事だって沢山あるし。最初から思った通りに話を作れたのなら、明らかに主要キャラになり得た水無月(みなづき)を序盤で殺したりなんてしなかっただろうしな。

 


 俺はようやく安心して、再びフロアの中を前に進む事が出来るまでに心の正常値が回復してきていた。


 そんな俺の様子を見て。朝霧も安心したように微笑みながら、俺の前を歩いて進んでいく。



 そして俺達2人がようやく、女神が用意した第3の試練のステージに到着したと思われるそのタイミングで――。



 朝霧は再び、俺の方に振り返ると。


 今までで一番、意味深そうな笑みを浮かべながら。こう俺に話しかけたきた。



「さっきの話なんだけどね、彼方(かなた)くん。確かに私は、彼方くんの物語の作者では無いわ。でもね、これからそういう存在になりたいと本気で願ってはいるの。『上書き挿入(オーバー・ライト)』の能力を手に入れた私は、彼方くんの世界の過去を作り変える事が出来る。いつか私の能力が万能になったら、私は彼方くんの物語を私好みに自由に書き換える『創作者』になりたいと思っているの。そうすれば私はいつまでも彼方くんと一緒にいられるでしょう? ウフフ……」


 

 怪しく微笑み続ける朝霧の後ろから、突然――白い光が発せられると。


 俺の視界の先には、今までに見た事も無いような広大な黒い空間が広がっていくのが見えた。



 どうやら俺は、女神アスティアの用意した『第3の試練会場』に到着したらしい。

 そして、ふと周囲を見回してみると。いつの間にかに朝霧冷夏(あさぎりれいか)の姿が、俺の前からまた忽然(こつぜん)と消失してしまっている事に気付いた。


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外れスキルコンビニ
外れスキルコンビニ、コミック第1巻、2巻発売中です☆ ぜひお読み頂けると嬉しいです!
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