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屋上少女  作者: 悠(はるか)
第八章「日常と"ナ"付けた子供の帰宅」
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7.「望月」愛情

 私は馬鹿か! 何を言ってるんだ! アホなのか!? やっぱりアホなんだな! テストでの点も低いうえに人間的にも点数が足りないのか!

 後悔は後に悔やむと書くが、見え見えの結果になるってわかっててもやってしまい、結局後悔する私は、もはや馬鹿なんだろう。

 どうしようもなくなった時は、ストレスのはけ口としてよく掛川を頼る。奴は人の心を手に取るように読み取り、そして、できるだけ気付つけないように、最善解を口に出す。憎めないやつだ。

「掛川にメール送ろう……」

 急いで出てきてしまったので、どこだかわからない場所にたどり着いてしまった。公園が見えたので、公園のベンチに座る。

 國定君は優しい人間だ。ああだこうだと変に突っかかってくるが、実際のところやっぱり優しい。だから好きなんだ。だから、この恋心をどうも後悔しきれないのだ。でも、だからこそあの言葉は國定君に重くのしかかるのだろう。やってしまった。

「國定氏が今やばいから、行ってあげるといいよ」

 携帯の画面に雨粒が落ちる。上を振り向いても雲一つない、絶好のお出かけ日和だ。

「おかしいなぁ……」

 疑問符を掲げながらメールを送る。私は心を亡くしたかのように、ずっと空を見上げて何をすることもなかった。掛川からのメールの返信音が現実へと呼び戻す。

「やばいって、どんな状況?」

「この道を行けばどうなるものか。行けばわかるさ」

「……わかったよ」

 一、二分程度おきの会話。私はまた、空を見上げる。後悔とか、何よりも、何かすべてが終わった感じがする。國定君が、鷲ちゃんが、こんなにも大変なのに、一人ここで物語が終焉しかけている感覚がする。望月という物語は、もうここで打ち切りだ。思えば、この人生ろくなことなかった。國定君は親を多分だが愛していて、対照に鷲ちゃんは親を好んではいないはずだ。私は、親とかそういうものは知らない。父は自ら命を絶ち、母は後を追うように過労で倒れた。それらを引き起こした、そして、私が、みんなが愛するこの町を汚した犯人を許さない。だから心に決めた。奴らと同じ過ちを繰り返さないために、私が模範となる、私が真実を語る最高の記者(ライター)になろうと。「真実は作られるものじゃない。語られるものだ」。私のモットーである。

 お腹減ったなぁ……。時折現実に戻る。他愛もないことだが、こんなことでもないと私はずっと虚空をさまよい続いているだろう。

「あれ? 望月?」

 聞き覚えのある声がする。掛川だ。

「なんでここに?」

「少し考え事を」

「いつから」

「國定氏の家を出てここについてから」

「……三十分ぐらいずっとか」

 時計を見る。古ぼけた時計だが、時は正しい。確かに、公園についてから三十分近く経っていた。

「國定氏の家には行ったのか?」

「ああ、行ってきた」

「行きの時は掛川の姿を見なかったけどな」

「さっきまでのお前なら通ったところで気付かないだろうけどな……。まぁ、家族に頼まれてドーナツ買ってきたんだ。セール中だったからいっぱい買ってきたんだけど食べるか ?」

「食べていいのでござるか!?」

「お、おう」

「心の底から掛川殿に感謝したのは初めてでござる! 神様! 仏様! 掛川様ぁ!」

「……そこまで喜ばれるならこっちもうれしいが。まぁいいや、好きなの食べとけ」

 掛川は私の隣へ座る。そして袋を一つ差し出す。

「じゃあ遠慮なく」

 イチゴっぽい感じの色合いのドーナツを取る。

「イチゴ好きなのか?」

「私の好物の一つでござる」

「そうか」

 一心不乱に食べる。すべてを忘れようとして。

「そんな食べたらのどに詰まらすぞ……」

 すべて食べ終えた。何も変わらない。何も変わっちゃいない。わかってるけど、何か憤りを感じる。

「うわあああああん!!!」

「うわ! いきなりなんだよ!」

 私は掛川に泣きながら抱きつく。掛川も体をこわばらせるものの抵抗はしてこなかった。

「もう駄目だ! 私は! 國定君を傷つけちゃうよぉ!」

 掛川は私の頭をそっと撫でながら「そういうなって。お前の気持ちもわかるけどさ。お前だって傷ついてるじゃないか。おあいこなんだよそれで」

「私が……勝手に傷ついてるだけじゃん」

「俺もそうだ。鷲が好きだったけど國定にとられるし。そりゃ傷つくけどさ、なんか清々しかったよな」

「……なんで」

「わからんよ。約束を託した男だったから、かもな。でもなんかあれだな。取り残された二人みたいだな、俺とお前って」

「アハハ、そうでござるな。残り物ですな」

「残り物には福がある。しかもお互い事情を知ってるんだ。傷のなめ合いっこはなしだ。今はさ、俺たちなんかより大変な二人の事を思いっきりサポートするのが俺たちの役目だ。お前の話は終わってるかもしれない、俺のストーリーはジエンドかもしれない。でも、國定と鷲の話は続いてるんだ。だったら、名脇役にでもなってやればいいんだ。だから、俺はこれからいっちょ舞ってくるぜ。一緒に来るか?」

「……掛川……」

 抱かれながらそんなこと言われると、正直、クラっと来ちゃうよ。私だって、女の子、なんだから。

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