11.慢情
「テスト結果張り出されたよ!!!!」
いつかの少女Aが教室の前のドアで叫んだ。
「なんか今回張り出されるのすげぇ遅かったな」
掛川が後ろを振り返り僕に話しかける。確かに、いつもはテストが終わりだいたい一週間程度で張り出される。
「数学と英語の二教科で大規模な採点ミスが見つかったって……先生言ってたよ」
僕の右から琴音の声が聞こえる。
「おぉ……そうなのか。まったく知らんわ。お前は知ってたか?」
琴音と掛川の関係は、琴音が積極的に掛川に話しているが掛川が少し引き気味である。そろそろやっと慣れたといったところか。
「授業全部寝てるやつが知ってるわけないだろ」
「そうでしたね……」
雑多な念が込められた視線を交わすがごとく「じゃ、僕らも見に行くか」と立ち上がる。
掲示板は前は、さすがといわんばかりに人が集まっていた。
「今回は、今回は絶対に勝つから……」
「琴音はいつもそれ言ってるな」
「まぁそんな頂上決戦は俺たちにとっちゃ高嶺の花というか……関係ないから余所でやっててくれないか」
「今回もお前の百個上に乗りたいな」
「……今回はさすがにやばい気がする」
数分ほどたったがまだ見える位置に動けない。なかなか混雑している。ただでさえ人が集まるというのに文字が小さいから大変だ。
「よお望月、お前も見に来たの?」
「あらら? 國定氏に鷲ちゃんに……テストの順位をご確認ですか?」
「澪ちゃんも?」
「さらっと俺スルーするのやめてくれない?」
この学校の基本コミュニケーションの一つに「スルー」というものが存在している。スルーされているということがすなわちコミュニケーションとなっている。と思われるほど
に最近やけにスルーされてる人がいっぱいいる。だが不思議と面白いからやめられない。
「いえ、私は手に入れてるし、よかったら見る?」
「うん? いいのか?」
「これぐらいでなんかせびるほど性格はネジ曲がってないしね」
「……それぐらい性格ネジ曲がってる気がするが、まぁぼくはお言葉に甘えよう」
「私もー」
「あ、そこのモブ一号には見せないので」
「え、俺何も言ってないんだけど……」
「先手必勝って言葉もあるしな」
望月は携帯を取り出し写真を開く。琴音と一瞬だけ目が合う。そして望月の携帯の画面に目を移す。瞬間、琴音は飛び上がる。
「やった私の方が上だ!」
確かに、琴音の方が上に書いてある……が。
「よく見ろ」
確かにパッと見れば一番上の一位の欄には鷲と書いてある……が、その下にも僕の名前が書いてあり、その順位も一位……。
「え! え!? 同点!?」
「今回もまた勝てなかったな」
とびっきりの笑顔を見せてやった。それを見た琴音は泣き崩れるんじゃないかというぐらい絶望の顔をしていた。
「うわーん! また勝てなかったよぉ!」
ポコポコとかわいい擬音が似合うその動作で僕の背中をたたく。
「あれが、一番の対決と思うと可愛らしいな」
「私たち邪魔者は退散した方が……そういえばモブ一号は何位だったでござるか」
「……またあいつのちょうど百個下だ」
「前回から進歩してないとか人間としてどうかと思います」
「じゃあそういうお前はどうなんだよ!」
「192位です」
「前回より超悪くなってんじゃねぇか!」
「てへぺろ」
僕の後ろじゃ琴音がぽこぽこと背中をたたいてるし、左側で漫才師が漫才を披露してるし。日常が、帰ってきたなぁ……。




