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屋上少女  作者: 悠(はるか)
第七章「甘さ控えめコーヒーと恋」
79/90

9.感情

「にっが……」

 小春と泉と僕の三人は、第一会議室の広い空間の1/10ぐらいのスペースにかたまっていた。

「あれ? 泉ちゃんブラック苦手?」

「甘いのが好きだから、甘さ控えめみたいなのも好きじゃないんだよね」

「意外だな。そんな女々しい部分があるなんて」

「悪かったわね」

「泉ちゃんならブラック飲んでそうだから買ってきちゃったけど……交換する?」

「できればしていただきたいわ」

 僕はそんな会話を見ながら、多少砂糖が入ったコーヒーをすする。

「そういえば國定君は鷲ちゃんとどうなったの?」

「間違いなくいい方向には行った」

「そうなの! おめでとう」

「……ありがとう」

 小春から言葉を素直に受け取る。

「付き合ってるって噂聞いたけど?」

「どこからそんな情報仕入れるんだ泉は?」

「ただの伝手、というか風のうわさよ」

「でも否定しないってことは……本当?」

 僕は肯定を動作に変えた。その瞬間小春が、まさに飛ぶように僕の方へと寄る。

「え!? 本当!? おめでとう! これはパーティーの準備だね!」

「そんな大げさな……」

「あんたは人のこと喜ぶより自分の事考えなさいよ……」

「こんな簡単に私も行けばね……ってごめん。私の不甲斐なさを棚に上げて二人が簡単に付き合ったみたいなこと言っちゃって」

「でも、こいつと鷲ちゃんなら元からピースの形はあってたし、あてはまるのも時間の問題だったんじゃない?」

「私はピースの形すらあってないのかぁぁ!」

 言葉の勢いとは裏腹にシュンとする。

「……なんかごめん」

 その姿を見て、関与も何もない僕が謝ってしまう。

「小春を泣かせた罰は重いわ」

「いやこいつ泣いてない……というか僕関係な……」

「か弱き慟哭少女を目の前にそんなことを言うとは、あなた人間なの!?」

 もはや絶句である。

 少し窓辺も赤に染まり、次第に日が暮れるのが遅くなるこの時期、放課後ももう長く過ぎたことを示していた。

 ちなみに、いつか黄昏という文字について気になり小春に聞いてみたが「黄昏は元もと中国では時を表してたらしくて、それが夕方ぐらいだったんだって。後黄昏の昏には『見えなくなる』とかそういう意味があって、太陽とか明るい『黄色』が『見えなくなる』から黄昏になったんじゃない?」という回答をいただいた。木を隠すなら森の中、ではないが、疑問があるなら専門職(ではないが)に聞くのが手っ取り早いと実感した。

「急にだんまり決め込まないでよぉー」

「そいや泉はそういう恋愛話の話題は一つも二つも上がらないな」

「え!? 私の事無視!? 友生会長ぞ? 我、友生会長ぞ?」

「上がるほどお熱になってるわけじゃないしね」

「……私泣きそうだよ」

「さっきまで泣いてたんじゃないのか?」

「涙の量が当社比1.5倍ぐらいになります」

「何よそれ」

 泉がほほ笑みながらパチィンといい音を奏でて小春の頭をたたいた。

「な、何で叩いたの!?」

「……癖?」

「そんな癖直してよぉー」

 あぁ、また、間に入れない。

「もう、お前らが付き合えよ」

「小春を下僕にするのはいいけど彼女はねぇ……」

「……私さらっとひどいこと言われてる気がする」

「いじめがいがあるって事だろ」

「……もう重々承知してるよ」

 友生会は、今日も元気です。……多分。

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