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屋上少女  作者: 悠(はるか)
第七章「甘さ控えめコーヒーと恋」
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5.逆境

 重低音にまみれたA棟パソコン室。僕は友生会の仕事の傍ら琴音の親について調べていた。

 インターネット百科事典「knowledge meeting」というサイトは某wikiとは違い、名前のごとく「知識の会議」をしてからその内容が編集される。ある単語一つがまずこのサイトに登録され、その単語についての様々な議論が専用の掲示板で交わされ、それをまとめてはごく一部の、単語を登録したその人とその周辺の、限られた人たちだけで執筆する。誰でも自由に書き込められないが、情報を取捨選択することや情報をぶつけ合いより高めることでで、より正確な情報が得られる……というようなコンセプトらしい。その代り限られたその記事をかける人から書く気力や記憶自体消えてしまったらその記事も更新されないとかいう最大の欠点もあるんだが……。

 このサイトでは有名な企業の社長などの個人情報も結構乗ってたりする。もちろん住所や電話番号などは利用規約に違反するんだが、まぁある程度のことなら集まる。

「株式会社鷲……っと」

 左側で小春が難しい顔して、その左で泉がいつものような凛々しい顔をして、右側で琴音はこっくりこっくりと首を不規則に動かしている。珍しく琴音が学校で寝ている。

 僕は琴音の今まで受けた「傷」いや「病気」の辛さを考えると、見たこともない琴音の両親に恨みしかわかない。子供がここまで苦しんでいるというのに、見知らぬ顔で会話すらない冷え切った家……僕には到底耐えられそうもない。

「鷲 龍太郎、五十四歳AB型……」

 載っていた顔写真は、いかにも社長……パッと見ただけでそう思えるようなオーラを放っていた。どちらかというと裏稼業の親方みたいにも見えなくはない。

「鷲 久枝、五十三歳O型……」

 僕の中でちょっとした違和感が生じた……が存在がはっきりしない。僕は違和感を踏み潰し前へ進んだ。

「株式会社鷲の現社長とその妻。三代目である龍太郎氏は社長となってからはまだ日は浅いが、各界でもやり手として評判が高く、部下や他社からの信頼も厚い」

 ……仕事はできるけど家庭は疎か、そんな典型的なタイプだ。

 しかしながらここまで仕事ができるのなら、確かに仕事が忙しく、しかも社長になりたてでいろいろなことがあるだろう。家庭へと手を出す時間が減るのも頷けなくはない。じゃあなぜその妻、琴音の母親まで家庭への手出しをしていないのだろうか。

 そんな疑問を解決してくれるものは、残念ながらこのサイトには無かった。

「あれ? 雨降ってる?」

 小春の声につられて僕は窓へと振り向く。

「確かに……多分降ってるな」

 この部屋だとあまり外の音は聞こえないが、見るだけでもわかるぐらいには雨が降っている。

「どうしたの……」

 怪訝そうにこちらを見ているのは先ほどまで現実と夢とをうつらうつら旅してた琴音だった。

「おはよう琴音。ただ雨が降っているだけだ」

 彼女は眠そうに目を擦り「私寝てたのか」とつぶやいていた。天然もいいところだ。

 僕はブラウザを静かに閉じて仕事へと戻った。

「なぁ小春、そういえば綺秋祭っていつだっけ?」

「確か9月の終りじゃなかったっけ?」

「今からだいたい2,3ヵ月か」

「そういえば私たちのクラスってコスプレなんちゃらみたいな感じだったけど……あれ大丈夫なのかな?」

「あいつらが勝手に決めたんだから大丈夫だろ……多分。どうなっても僕は準備に参加する気はないけど」

「準備にってことは、本番には参加するのかな?」

 琴音は少し嘲笑うような表情を浮かべる。

「……まぁ望月との約束守らなきゃいけないし」

 目の前には絶望が広がりかけている。

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