1.友情
土曜日の朝。いつもより少し早めに起きた僕。下で起きた物音が僕の感覚を鋭敏にする。
階段を静かに降りて台所を見ると、少女が一人で立っている。
「なにやってんの」
僕は静かに彼女の後ろに立ち方から顔をのぞかせて聞く。少女は僕と反対側に思いっきりとびのいて
「く、國定君か……」
鷲はやけに驚いていた。顔は赤いし、風邪でも引いたか?
「朝から何やってんの」
「ごはん……作ってた」
「そうか、いや邪魔して悪かった」
なんか二人の会話は取り留めのないものになってしまった。
「國定君はすごいね、昨日あんなことあったのに今日になったらいつもと変わらない雰囲気でさ」
言葉の裏に何かとげが見えるような気がする。
「外見はな……内心は……」
言葉は途切れた。僕の内心……パッと言葉で表現できない。
「大きな出来事があったのに、なんか一気に日常は変わらないなぁって」
「……いや鷲は大きく変わってないか?」
よく考えてみると、なんで鷲は自然に僕の家に泊まってるんだ。
「鷲は、なんで僕の家にいるんだ?」
彼女は目をパッと逸らす。
「まだまだ聞きたいことはあるが、今一番聞きたいことはこれだ」
彼女の表情は軽く凍りついた。
「えっとそれは……」
彼女はそう発した後、固まる。
「家出……したの」
深刻そうな顔の彼女。
彼女は意を決して「親」の元を離れたのだろう。
「いつだ?」
「一か月前」
「そ、そんな前から!?」
僕も単純に驚きだった。なにせ一か月前、彼女はいつもと変わらない笑顔を見せていたからだ。違う、一か月前そんなことをしたのに僕が気付かなかったからだ。悔やむ気持ちが僕の心の中で生まれる。
「黙っててごめんなさい。でも、これ以上國定君に、小春先輩に、いろんな人に迷惑かけたくなかったから……」
「すごい決断したな。一人で生きるって」
鷲は僕を見上げる。その頭を撫でてやる。
「一か月どこにいたんだ?」
「一週間に一回は駅前のあの安いホテル。所川の。残りは野宿だったかな……?」
……ずいぶんと壮絶な一か月間でして。
「お前みたいなかわいいやつがそんなことしてたら僕が心配するから今度からはやめてくれよ」
……僕ものろけてんなぁ……。
「ここに泊めてくれるな、ね?」
「さすがにこれ聞いた後出てけなんて言えるわけねぇけど」
うれしそうな顔を掲げる。
「一つだけ約束してくれ」
疑問符を掲げる。
「辛いと思ったら何時でも僕に、僕じゃなくでも信頼できる人に話してくれ。頼むから、これ以上一人で抱え込まないでくれ……」
またうれしそうな顔を掲げる。
「約束、するよ」
鷲は僕の腕を取って小指と小指を巻きつける。笑みがこぼれた彼女の表情に僕は安心した。




