11.愛情
望月を見送った後、僕の家のどこかにいるであろう鷲を探した。
「ここ、僕の部屋なんだけど」
「……ごめんなさい」
彼女は部屋の端で体育座りをしていじけてた。部屋は暗かったが、彼女の表情も多分同じくらい暗転してるだろう。
「なんか、申し訳なくて……」
彼女が口から言葉をこぼす。僕は暗い部屋の足元を気を付けながら彼女の隣へと座る。
「本当に、國定君に迷惑かけっぱなしだから……」
「迷惑? いつ僕が迷惑を受けたっていうんだよ」
彼女はゆっくりと僕の方に顔を上げる。暗い顔の意味は僕には読み取れなった。
「そ、そのえーっと……あの、えぇ……」
ただでさえ混乱していた彼女の頭を掻き乱してしまった。
「落ち着け落ち着け、頼むからまた変なことはしないでくれ」
「へ、変なこと!? やっぱり変なことだと思ってたんじゃないですか?」
「何がだ?」
僕は悪い笑みを浮かべる。
「だから! えっと……」
彼女は明らかに口籠ってる。ちょっと意地悪だが楽しくなってきてしまった。
「僕にはそんな記憶ないし、いわんきゃわからんよ」
「うぅ……國定君の意地悪……っ!」
そして深呼吸。
「キスされたご感想はいかがですか」
一瞬僕もぽかんとする……そろそろ鷲の背後にべったりと付きまとう霊――またの名を望月――が見えそうだ。
「もう一度、したい」
「はぅ!?」
ここまで来ると単なるカップルのいちゃつきではなく相手の裏をついて相手を攻めていく、バトルだ。
「い、いいですよ。國定君がしたいなら、いつだって……どこだって」
今日の鷲は枷が外れたかの如く行動している。いつになく豪快だ。
「そっか」
僕は返答を行動で返す。彼女の肩を掴み、ゆっくりと顔を、顔へと近づける。
パッとここを切り取れば青春の一ページに見えるかもしれない。しかしながら、たぶんどちらも我慢比べをしているようだ。
「國定君」
「ん?」
「大好き……私も大好きだよ」
「そっか、ありがとな」
二人の距離は近づく一方だった。彼女が目を瞑っているのが見える。たぶん彼女の顔は秋のモミジのように赤くなってるはずだ。……そして僕も。
さっきは前振りも何もない、その場限りの行為だったが、しかし、冷静さを取り戻した今、不安が詰まる。彼女に……こんなことしていいのかな。いくら言葉で言われようが僕みたいな男には確信がいまいち持てない。さびしい男だ。
「僕にさ、こんなことして、後悔はしてないよな?」
彼女は目を開ける。瞳を向ける。にっこりと笑って、僕の口を封じた。今度はやけに甘く、初めての恋の味を体感していた。




