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屋上少女  作者: 悠(はるか)
第六章「深まる絆、消えない絆、見えない絆」
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7.騒上

 放課後、僕は昼休みと同様に小春と一緒に会議室で黙々と作業を続けていた。

「そろそろ終わるめども立ってきたな」

「そうだねー。國定君のおかげかな?」

「お世辞叩くぐらいなら一分でも早く仕事終わらせろよ」

「ぶー、せっかく褒めたげたのに釣れないなぁ」

 電卓をぱちぱちと叩く音、紙に何かを書く音、僕かそれとも小春のかすかな吐息。

「なぁ小春、ちょっとここ……」

 急に声が出せなくなった。何事か、僕は一瞬パニックになる。小春は僕と電卓とその間に視線を置き動かない。時が止まったのか?

 僕は周りを見渡す。……特に何もないじゃないか。そう思った束の間、窓の外、とある屋上に人の影が――僕と鷲の、思い出の場所だ。

 間違いない、あの人影は鷲だ。そして、その立ってる場所は屋上のフェンスの外。

 鷲の馬鹿野郎。僕の言葉は聞き入れてもらってなかったのか。

 いや、僕の話を聞いていなければ飛び降りる場所も考えなかっただろう。なにせ、あそこは前飛び降りようとした場所の反対側――真下はコンクリートだ・。

 僕は窓を開けすぐに外へと出る。ここが一階でよかった、つくづく思う。

 鷲の着地点あたりに僕は立つ。あとは、あとは彼女がここに落ちてくれればいい、いや、落ちないことより最高なことは無い。

 少し心を落ち着かせる。そして、僕は静かにその「時」を待った。

 一瞬間の出来事であった。彼女はそこから飛び立ち、僕に目がけるように落ちてくる。僕は彼女の命を、その体だけを守るために、自分を犠牲にして受け止める。

 我武者羅だった。僕は何が起きてるのか理解するより早く自分の本能だけで動いていた。

 そして、彼女を受け止めた。衝撃は僕の足にものすごい負担をかけたが、何せ彼女だけを考えていた僕には刹那にしては何もわからなかった

 ゆっくりと鷲を地面へ下す。彼女は、目を瞑ったままだった。

「おい、鷲。起きろ」

 体を軽くゆする。

「……!?」

 彼女は目をゆっくりと開き、僕に視線を向けた瞬間、びくっと体を揺らした。

「う、う、うぅ……」

 彼女はかすかに涙を浮かべながら言葉にできない恐怖を僕に打ち明けていた。横になりながら僕にしがみついていた。

「何でぇ、何でぇ、國定君は何でそんなにやさしいのぉ……!」

 わんわん泣いてる鷲。僕は何もしてやれなかった。

 五分ぐらいだろうか、彼女の息は整い、その赤い瞳を僕に向ける。

「何で、助けちゃったのかな……」

 明らかに僕への質問ではなかった。うつろな目をした彼女はのろのろと立ち上がる。

「おい、ちょっと待てって」

 彼女はのろのろと僕を背にして歩き出した。またほかの場所で自殺を試みるか? 僕の心にはそんなことがないと、論も証拠もない安心がなぜかあった。だから、一人にしてやろうと僕は背中を追いかけることは無かった。

「いきなり煙みたいに消えてどこ行ってたの?」

「いやちょっと野暮用をな……」

 怪訝そうに僕を伺う小春に軽く返事をしまた作業へ戻る。

 あれから約二時間。作業も終わりを迎えていた。

「お疲れ様」

 小春はコーヒーを僕の前に差し出す。

「ありがと。にしても疲れたな。会長はいつもこんなことやってるのか

「私はそうじゃなくても、智也先輩は10時くらいに学校にいるなんてことしょっちゅうやってるし、どんな集まりでも一番上の人は一番働くのかもね。……なんて私が自画自賛してるみたい」

「いいだろ、小春は誰よりも頑張ってるだろ」

「ううん。そんなことないよ。私が頑張るのはほかのみんなが頑張ってるからだよ」

 胸糞が悪くなるぐらいいいやつだ。もちろん今のは褒め言葉だ。

「……だから、國定君も頑張って、ね」

 いきなり僕に話を振ってくる。何に対して頑張れと言ってるのか。大体察しはついた。

 そんな時携帯が鳴った。メールだった。誰からだろう。小春からでは確実にないだろうし、万が一にも鷲という選択肢はない。じゃあ掛川か。

「……誰だ」

 見知らぬメールアドレス。とりあえず開いてみた。そうすると文面の一番頭にこう書いてあった。

「掛川からメアド聞きました。望月です」

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