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屋上少女  作者: 悠(はるか)
第六章「深まる絆、消えない絆、見えない絆」
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5.課上

「國定君、ちょっと手伝ってもらっていいかな」

「ん? どうした」

 小春に話しかけられた午後12時。僕は屋上へと向かう途中のことだった。

「いやぁ、先輩から会計の見直しを頼まれちゃって……あの人だから抜けてることは無いだろうけど、一応規則だからってさ」

 彼女は分厚いファイルを手にしながらそういう。

「別に僕に頼まなくったっていいだろ」

「はぁ……そうだよねぇー。まずは私が頑張らないと」

 心の底から残念そうに言われると、非常に罪悪感が芽生える。

「どれくらいの量あるんだ?」

「え? このファイルの中身全部だよ? 智也先輩が過去三年分の会計引っ張り出してきちゃってさ……何しろ監査のマークがついてないから問題になっちゃって一から見直してるの」

「で、何やればいいんだ?」

「……え? やってくれるの?」

 急に眼の色が変わった。すごい嬉しそうにしている。

「あぁ、その量を一人に任せるのも気が引けるしな」

「あ、ありがとう! でね、やることは別に単純に電卓叩いてくれればいいから。で、あとは使ってるものに関して疑問があれば私とかに聞いてくれればいいよ」

「それだけか。ならお安い御用だ」

「さっそく出発だよ!」

 いきなり僕の手を握りちょっと足早に歩く小春。

「おい! ちょっと待てって」

 その途中、僕は鷲とすれ違った。彼女は俯いたまま僕の横を通り過ぎて行った。最悪のタイミングと言えば最悪かもしれない。それを悟ってか、小春はばつの悪そうに手を放す。

「……まだ仲直りできてないの?」

「僕が弱虫だからな……一歩が踏み出せないんだ」

 僕は弱弱しくそんな言葉を吐く。そんな僕の手を彼女はいきなり取る。

「大丈夫、國定君なら絶対……」

 彼女はそこで言葉を切った。小春は、何を言いたかったんだろう。

「ありがとよ」

 僕は少し微笑んでやった。

 いつもの会議室には誰もいなかった。

「にしてもこの量って、どれくらいで終わるかな?」

「今日中には終わるとは思うよ?」

「それも危うい気がするんだが……それよりあいつは連れてきてないのか?」

「泉ちゃん? 何、泉ちゃんと一緒に仕事がしたかったの!? それなら今すぐ呼んでくるよ!」」

「……僕帰りたい」

「あぁ、せっかく捕まえたのに帰らないでよぉー。國定君会計でしょ? 一応」

「そういえば……そうだったな」

 書記と会計を一緒に請け負ったんだっけか。会計はまだしも書記らしいことは一度もやった覚えがない。

「でも、泉ちゃんと國定君ってなんか似てるから気が合うんじゃないかな?」

「似てるからと言って気があうとは限らないしな」

 小春は電卓を取り出し僕に渡す。

「やっぱり鷲ちゃんがお似合いだね! 國定君には」

「そんなこと言われると非常に複雑だ」

 僕は電卓とともに紙を渡されると、ざっとそれに目を通す。

「うっし、始めるか」

「やる気出したところ悪いんだけど、一つ聞いてもいいかな?」

「なんだよ改まって」

 僕は顔をあげ彼女の方を見る。至って真面目そうな顔をする彼女。僕は顔がこわばる。

「鷲ちゃんのこと、どう思ってるの?」

 僕はその言葉を聞いて、何を思ったか。今までの数か月なら笑っていただろう。しかし、たった数ヶ月、そうそんな程度で僕の心境はまるっきり正反対に動いていた。

「僕を……変えてくれた大切な人だと思ってる。もちろん小春もだが、なんだろう、ちょっと違う気がするんだよな」

「私はそんなおおそれたことはしてないよ」

 彼女ははにかみながら僕に言う。

「でも、鷲ちゃんって多分あなたにだけ見せる顔があると思うんだよね。國定君がいるときといないときじゃ全然表情も動きも性格も違うように見えるもん」

「そうなのか」

「國定君も鷲ちゃんが特別なように、鷲ちゃんも國定君のことが特別なんだよ」

「相思相愛……だったらいいな」

「お互い頑張ろうね!」

 ……お互いという言葉に触れられずに時間は過ぎていた。

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